まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

BLブートキャンプ!

2023-11-08 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 おほかたの秋をば憂しと知りにしをふり捨てがたき鈴虫の声

 深まりゆく秋、皆さまいかがお過ごしでしょうか。日中と夜との寒暖差のせいか、ちょっと風邪気味な私です。早く寝ればいいのに、チビチビと酒を飲みながら、大好きなBL映画で秋の夜更かしを楽しんでます。BL映画もいろんな国のものがありますね。各国のお国柄も楽しめるBL国際映画祭を開催しちゃいますよ(^^♪
 
 秋の夜長のBL国際映画祭① 南アフリカ  
 「Moffie」
 1981年、人種隔離政策下の南アフリカ。軍隊に徴兵された同性愛者の青年ニックは、目立たぬようにしながら過酷な訓練に耐え続けるが…
 普段あまり観る機会がない南アフリカの映画。ビル・ナイがオスカーにノミネートされた「生きる LIVING」のオリヴァー・ハーマナス監督作。
 軍隊って、BLでは人気のジャンルですよね。屈強なイケメンたちの、カッコいい軍服姿と美しい肉体。この作品もビジュアル的には、ミリタリーマニアな腐女子にとっては美味しい映画だと思います。ただ、かんじんのBLが、腐女子のニーズにあまり応えてないかも。男同士の恋愛や性愛シーンが、ほとんどないんですよ。同性愛そのものよりも、隠れゲイの目を通して描く当時の南アフリカ、その地獄のような軍隊生活と、セクシャリティや政治思想を表に出せない国で生きる恐怖や息苦しさをメインテーマにした映画かも。南ア出身でオープンゲイであるハーマナス監督が、主人公のニックと重なります。

 とにかく軍隊の訓練が過酷、ていうか異常!1981年って、そんな大昔じゃないですよね。ちょっと前まであんなことがフツーに行われていたなんて、ただもう絶句です。訓練なんかじゃない、ただの虐待でしたし。人権なんてないも同然。サディスティックな上官に、肉体的にも精神的にもコレデモカ!と虐げられ痛めつけられる若い兵士たち。私なら30分ももたずに死亡します。心身共に壊された兵士が、みんなの前で自殺するシーンは衝撃的でした。何事もなかったかのように訓練を続けるのも狂ってる。アパルトヘイトなんて信じられないことが長い間、堂々と行われていた南アフリカの、日本人には到底理解できない人権無視と人命軽視には、ただもう戦慄。

 白人たちの有色人種差別も非道すぎ。列車の窓からホームに立ってる黒人に罵声を浴びせ、汚物を投げつけるなんてことが嬉々として公然と。似たようなことは、今のアメリカでも起きてますよね。人種差別同様、性的マイノリティへの暴力的な嫌悪や排斥も異常。同性愛者だとバレたら人生終了、みたいな世情も。白人の異性愛者が、そんなにエラいの?自分たちの低能丸出しな蛮行を見ても何とも思わないのでしょうか。何とも思わないから怖いし、悲劇は終わらないんでしょうね。とにかく暴力的で理不尽な南アフリカ、徴兵や国境争いのない日本に生まれてよかった!と、心底思わせてくれるヤバい蛮国のひとつです。

 ニック役のカイ・ルーク・ブラマーが、なかなかカッコカワイかったです。ちょっとベネディクト・カンバーバッチに似てる?バッチさんを小柄にして可愛くした感じ?脱ぎっぷりもよく、細マッチョな肉体美でした。ニックと仲良くなるディラン役のライアン・デ・ヴィリアースも、なかなかイケメンでした。訓練が終わった野外の夜、濡れて冷えたニックをディランが温めるシーンが、ドキドキ胸キュンでした。二人とも裸、でも見つめ合ったり頬に触れる以外は何もしない、二人の秘めて抑えた想いがもどかしくて切ない。初めてのキスシーンも、軽くそっとだけどカップル成立!でキュンとなりました。後にゲイバレしたディランが、WARD 22と呼ばれる矯正施設送りになるのですが。この施設、ナチスドイツも真っ青な人体実験をしてたらしいですね。ラスト、除隊し再会した二人が海でハッピーエンド…と思いきや。そう簡単に恋人になれない、希望よりも絶望を感じさせる現実が、シビアな余韻を残します。

 ちなみにタイトルのMoffieとは、オカマ野郎とかいった意味の、ゲイに対する蔑称だそうです。ニックは英語を喋るのですが、他の兵士や上官はアフリカーンス語という英語と現地語が混ざった言語?で話していたのが興味深かったです。それはそうと。南アフリカ軍の軍服って、ちょっと可愛いかも。帽子とか女子が被ってもおしゃれかも。

 ↑ オリヴァー・ハーマナス監督の新作“The History of Sound”は、ポール・メスカルと「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョッシュ・オコナー共演のBL映画!これは楽しみすぎるぞ!
コメント
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