まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

復讐の処女

2007-06-10 | 日本映画
 Summer is coming!トロピカル☆ヴァケーションに向け、そろそろフィジカル面で注意と努力の必要を感じています。
 最近ハマっているのが、真夜中の半身浴。
 熱い風呂に、ヘソの下だけ浸からせて、本を読みながらペットボトルの水orはと麦茶をグビグビ約30分。ダラダラ噴出する汗とともに、仕事の疲労と体内の毒が排出されていく感じで、気持ち良い。読書タイムとしても、貴重なひとときになっています。
 10日間、毎日欠かさず半身浴した結果、3キロ痩せました。それよりも、肌がしっとりしだして、美肌にも効果テキメン!やった~♪と歓喜しつつ、痩せたからって肌がきれいになったからって、これといって何のご利益もないのが、ふと虚しくも...いいもん!こーなったらトコトン、自己満足を極めるのみ!

「霧の旗」
 何度も映画・ドラマ化された、松本清張の有名な作品のひとつ。これはその最古?寅さんでおなじみの山田洋二監督が撮った、唯一のサスペンス?
 強盗殺人の罪で捕まった兄を救おうと、高名な弁護士・大塚を訪ねる桐子。だが、大塚は彼女の依頼を断る。兄は死刑判決を受け、殺人犯の汚名を着たまま獄死。銀座のバーで働き始めた桐子は、やがて思いもかけぬ形で大塚への復讐の機会を得る...
 弁護料の払えない貧しい者は、まともな裁判も受けられないのか、という不平等な格差社会のシビアな現実の告発、がメインテーマに一応なってるんだろうけど、この作品の怖さ面白さは、やはり何といってもヒロイン・柳田桐子の特異なキャラでしょう。
 いきなり九州から東京に出てきて、アポなしで大塚の事務所に来るなり、弁護してください!先生じゃないとダメなんです!と、まずスゴい思い込みの激しさで大塚を困惑させる。大塚が極力、優しく穏やかに理をもって諭そうとすると、お金がないから引き受けてくれないんですか!と逆ギレ。兄を救おうと必死なんだろうけど、泣いたりヒステリー起こしたりするんじゃなくて、まったくの無表情で冷静沈着、でもキツい目つき&口調で恨みがましく大塚を責めるところが、不気味で怖い。
 社会的弱者の不利な立場が痛ましく、桐子の憤りは理解できるけど、その怨念をぶつけられる大塚も、哀れ。大塚が、いかにも拝金主義な悪徳弁護士ならともかく、無茶で勝手な要求をする桐子を、冷たく門前払いすることもなく、弁護できない理由を穏やかに説明してくれるなど、とても感じの良い立派な人なので、桐子に見込まれたために散々な目に遭うのが、本当に不運としかいいようがない。そりゃ、弁護を引き受けてあげればよかったんだろうけど、できない理由も尤もだし、桐子の復讐は、正真正銘の逆恨み。いくら大塚が高名だからといって、彼に固執するところも異常。ステイタスはなくても、若くてやる気のある弁護士に頼めばいいのに。それじゃダメ!と、思い込んだらそれしか頭にないって感じの暗い一途さも、桐子のヤバさです。
 そして、あまりにも無表情で冷淡なので、何を考えているか全然読めないところも、桐子の怖さ。おとなしく無害な、翳りのある清楚な若い娘として、周囲は誰も彼女に警戒も不審も抱かない。復讐に燃える!恨みます~♪なんて気振りなど、微塵もない。ちょっとだけ、「キング罪の王」のガエルみたいな感じ?静かに、淡々と、ニヒルな様子で、まさに捨て身の恐るべき復讐を遂げる桐子には、計算高い悪女のような鮮やかさも爽快さもなく、ちょっと性格異常者めいたグロテスクさがあり、男にとっては最も注意せねばならないタイプの女といえるかもしれません。
 桐子を演じているのは何と、寅さんの妹さくらさんこと、倍賞千恵子。若い~!ちょっとだけ、磯野キリコ似?明るく庶民的なイメージの彼女ですが、暗くキツい桐子も、案外ハマってて怖かった。笑顔も涙も、まったくといっていいほど見せなかったのが、ほんと怖かったです。
 大塚弁護士役は、名優の滝沢修。時代劇のカリスマ悪役以外の彼を、初めて観ました。誰からも尊敬される偉人が、みじめに破滅させられる過程を、貫禄&こまやかな感情表現で演じていて、見事でした。
 脇役も、おや!と驚喜な面々。
 まず、川津祐介。いかがわしい男の役ばっかですが、でも男前可愛いですよね、何か彼って。でも、出番少ないし殺されるし
 そして、市原悦子。うわあ~若い~!けど、今とそんなに変わってないかも?特に声は、今のまんま。倍賞千恵子もだけど、特徴あるきれいな声って、素敵だなあ。
 あと、露口茂!桐子の兄役。若い頃のヤマさんは、結構イケメン
 山口百恵&三浦友和バージョンも、観たくなってきた。
 何年か前の土ワイ特別記念作品での、安田成美の桐子も悪くなかった。ドロ~っとした怨念を感じさせる、暗くて重くで清楚な女優って、最近いないですよねえ。桐子は、女優としてやりがいのあるヒロインだと思うけど。
 モノクロで撮られた当時の東京の様子も、興味深かったです。撮影用に作ったのではない、リアル公衆電話とか。
 それにしても。死刑廃止論の人権弁護士は、金に関係なく大掛かりなチームを組んで、山口母子殺人みたいな世間の耳目をそばだたせた事件の被告を、なりふり構わず救おうと躍起になるのに、冤罪の可能性のある無名な死刑囚は、ほとんど無視。裁判制度うんぬんよりも、利益不利益で人間が選択される理不尽さ残酷さに、暗澹となってしまいます。
 
 
 
 

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