ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

旦那、突如ピアノにめざめる!?

2009年12月15日 | 音楽とわたし
旦那は、難しい患者さんの治療に当たる時、部屋の中によくショパンのマズルカを流すそうです。
難しいというのはいろいろで、それは身体の症状としてだったり、心の問題としてだったり、時には、その人のおしゃべりがどうしても止まらなくて、治療を始めることができなかったり、まあそんな感じです。

これまでいろんなジャンルのいろんな曲想の音楽を試したそうですが、彼なりに法則が見つかったようで、その使い分けは大抵の場合成功しています。

今夜、夕飯を食べていると、旦那が急に、「ボク、マズルカ弾けるかな?」と言い出しました。
「まあ、根気があったら」とかなり冷めたトーンで答えるわたし。
なぜかというと、これまでも何回か、「あ、その曲弾きたい」と言い出して、ちょっとトライしたことがありましたが、なんとか読めるト音記号は良しとして、読めないヘ音記号のパートがちょっと難しかったりするとギャ~!無理っ!……2小節以上進んだことがありません。
「やる気だけではあかんねん、ピアノは」と、傷口にさらに塩を塗り付ける冷酷無比な妻。
こんなことは口が裂けても生徒達には言いませんけどね。やっぱり教師やってる時の自分と妻の時の自分って違うんやぁ……と我ながらに感動しました。

ところが今回はどうも、ちょっと本気っぽいです。わたしのイケズにも全然動じません。
「ギターもずっとワンパターンになってきたし、だいたいこんな毎日毎日ピアノの音が耳から入ってるボクが、なんにも弾けへんってのは悲し過ぎ!」
そうか、そこまで言うのなら……と、わたくし、ちょっと真面目に考えてみました。
「ほな、ショパンはショパンでも、プレリュードはどや?」
「なにそれ?」
「まあそら、プレリュードいうてもピンからキリまであるけど、ほれ、こないだの発表会でトムが弾いたやつ、あれやったら不可能ってこともない、かも……」

そこで、早速楽譜を開いてお手本演奏。おっほん!
曲は、『プレリュード6番』、Lent assaiです。
シャープがふたつもついているけれど、別にそれは彼にとっては問題にならないようです。ふぅ~ん……変なの?
左手の音の読み方のヒントを数個与えて、わたしは食器を洗いにキッチンに。
旦那の孤独な挑戦が始まりました。
ふんふん、今夜はガオォ~もギャ~も聞こえてきません。1小節が終わり、なんと2小節目に突入です!
おっ、ついに飽きたな?ロ短調のスケールを使って、彼の十八番のブルース風自作曲を演奏し始めました。
いつもはこれが始まったらおしまい。が、しかしっ?!今夜は違いました。再びショパンに戻りました。すごい!奇跡だ!
「すごいすごい!やるときゃやる!かっちょええ!」と褒めちぎる妻。
「ふふん、なかなかおだてるのうまいやん」と、鼻の穴がヒクヒクの旦那。

結局、最初の1段全部を弾ききった彼に、残りをもういっぺん全部弾いてと頼まれたので、サービスして2回、通しで弾きました。

もしかしたらもしかするかも……。
コメント (12)
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米国突撃となりの晩ご飯事情

2009年12月15日 | 米国○○事情
今日最後の出張レッスンの家に入ると、そこはわたしが教えるレミが一人娘の家族なのに、なぜかちっちゃな男の子の声がしました。
週末でもないし、まだクリスマスには間があるし、などと思いながらレッスンをしていると、レミのお母さんと一緒にご飯を食べ始めた気配がします。

「ねえレミ、お友達?それにしたらちょっと年が若いみたいやけど」
「あ、あの子達、隣に住んでる子だよ」
「あの子達?え?ふたりもいる?」

ふたりとも、レミのお母さんのアレクサと数遊びをしたりゲームをしたり、そりゃもう楽しそうです。
そうこうしているうちにレミのお父さんが会社から戻ってきて、続きで彼のレッスンが始まりました。

「ねえトム、ベビーシッターでもしてるの?」
「ああ、あの子達、実はさ……」

今日は朝から、お隣の家ではなにか大掃除のようなことが行われていて、兄弟は放っとかれたのでしょう、
突然玄関のベルが鳴ったのでアレクサが出て行くと、なんとドアの前には小さな男の子が、靴も履かずに裸足のまま立っていたのだそうです。

「ボク、もうこれ以上お兄ちゃんと一緒にいたくない!おばちゃん、ボクをおばちゃんのお家に入れて!」

アレクサはとりあえず隣に電話をかけ、「彼の靴だけ持ってきてくれたらいいから」、とお願いしたそうです。
そしたらまあ、その当のお兄ちゃんが靴を持ってきて、さっきあんなに悲愴な顔で訴えた弟くん、「あ、お兄ちゃんだ!」って……いやはや……。
ま、どうやら隣はとっても大変そうだし、ここでご飯を食べさせようかということになったようです。
これぞ変形突撃となりの晩ご飯!

でも、なんだかひと昔前の、日本の長屋のおじちゃんおばちゃんに甘えるチビッ子のような風景を見ているようで、心の中がポッと温まりました。

さて、このお家のむかえに、とてもシンプルなのですが、色とりどりの電球を大胆に放射状に飾ったお家があります。
なんとも思い切った飾り方をしているので、帰り際にちょっと聞いてみたら、なんと、毎年そこに住む少年がひとりでせっせと飾り付けをするそうな。
彼は今年12才。もう何年も前から、本当にひとりで、大人の手を一切借りずに頑張っているそうです。
けっこう高い所にも引っ掛けてあるので、作業はきっと大変だろうと思います。
毎年、彼なりにパターンを変えるので、近所の人達は今年はどんなだろうと、いつも楽しみにしているのだそうです。

なんかいい通りだなあ……。

P.S.
写真を携帯で撮ってみましたが、取り込み方がわからないのでまた後日。

もひとつP.S.
Rukkoちゃんへの返事を書いていた時、ああ、うちもそういや毎晩突撃されてた!と思い出しました。
息子達が高校生だった頃、彼らの友達がとっかえひっかえ、冗談抜きで毎晩、誰かがうちの家族に混じって座って食べていました。
おかずなんてもう、まったくの普段の、どちらかと言わずとも質素な、ニッポンのお惣菜でしたけど、
時には珍し気に、時には気持ち悪げに、時には嬉しそうに、パクパクと、そりゃもう豪快に食べてくれました。
こちらの高校生の男の子ってのは、ほんとに大食い!時々、わたし達が食べる量を押さえて、彼らにわけんこしておりました。
なのでうちは、家族4人+数人分、という量を毎晩作っていたような気がします。

でも……よくよく考えると、その頃は本当にお金に困っていました。
旦那は学生に戻ったし、わたしの稼ぎだけでは到底やっていけなかったので、政府から低所得者家庭の指定を受けていて、息子達も昼食券、などという、その年頃の子にとってはかなり屈辱的なチケットを渡して学食で食べていた時代でした。
なのに、どうやって賄っていたんでしょうねえ。不思議です……。
それに、覚えているのは、みんなでガハハガハハと笑いながら食べている風景です。ほんとに不思議です……。
あの子達、それぞれにいろんな風に、けれども元気に暮らしているようです。
いつか自分達の子供ができて、その子達が高校生になった頃、あの時の『突撃となりの晩ご飯』のこと、思い出してくれたら嬉しいなあ。
コメント (4)
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