ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

理不尽に奪われたすべての魂よ

2010年09月11日 | 世界とわたし
今日は演奏の予定は無い。
あの日から9年目を迎える9.11のメモリアルセレモニーの一環としての灯籠流しとのコラボコンサートなので、常連の方達とプロの歌手の皆さんでプログラムが組まれているからだ。
でも、そんなことはかまわない。
わたしは今日、あの日、わたしの目の前で、銀色の粉になって、幾十もの鮮やかなオレンジ色の炎の輪の中に、キラキラと輝きながら亡くなった人達の魂のため、思いを込めて祈りに行くのだから。

この日だけは、この青空がとても胸にしみる。あの日、8時頃に見上げた空と同じ青だから。


報道関係者の方々の、撮影時の音量調整のテストのため、演奏をした。


ふと目を上げると、あの日、家に戻る唯一の選択技だったフェリーに乗るため、多くの、ただただ途方に暮れていた人達と一緒に並んだ道から、すっかり崩れ落ちたふたつの背い高ノッポの双子ビルの、最後の叫び声がモクモクと雲のように見えた、まさにその場所だった。


中垣住職が慰霊のために運ばれた御焼香と鐘。


朗読のリハーサルが淡々と行われている。


広島の子供達からのメッセージと折り鶴を紹介する、調律師の矢川さん。


灯籠が到着。


「Why could you do this?」

あの日、どの人も、空を見上げては呪文のようにつぶやいていたこの言葉の中の「you」……いったい誰に向かって言っていたんだろう。


日がずいぶん落ちてきた。


中垣住職の鎮魂の鐘により、セレモニーが始まった。


さまざまな宗教、肌の色、文化が集まり、互いを尊重し認め合おう。そんなメッセージがひしひしと伝わってくる。


すっかり日が暮れて、


いよいよコンサートの始まり。


今日の朗読は英語の詞から始まった。


Amazing Grace(アメイジング・グレイス)を熱唱する原田さん。


ツインタワーがあった所から、恒例の、青い光の塔が天を指す。


灯籠流しが始まった。ニューヨークカヌー協会の方々のご協力により、少しずつ少しずつ、ハドソン河に流されていく灯籠。


あの日、あの時、一瞬にでも、きれいだなあ、なんて思ったりしてごめんなさい。わたしはきっと、一生忘れません。


そして、広島や長崎のように、二度と同じような過ちを犯さない、犯させないために、たとえとても小さなことでも、平和の実現のために行動を起こしたい。
ディレクターの竹本さんが、ご自分の体験談の中でこんなことを話してくれた。
「とても苦しかった時に、ある人がこんなことを僕に言ってくれました。過去は変えられないけれど、未来は変えられる。その言葉を聞いて僕は変わることができたんです」

本当だ。過去はもう、どんなことをしても変えられないけれど、これからの未来は変えられる。わたし達次第で。
それこそが、9年前のこの日だけではく、世界中の、この世から理不尽に消されてしまった命への、強い祈りへと通じやしないだろうか。



コメント (10)
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