ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

スポゥドの挑戦

2010年09月19日 | 音楽とわたし
引っ越しの手伝いの後、友人と会う約束のあるTと、友人のライブに行く予定のある我々は、それが偶然にも同じ通り上だったので一緒にマンハッタンに戻りました。

スポゥドは、このブログにもちょくちょく登場する、旦那の大学時代からの友人で、わたしの50才の誕生日に、大雨洪水警報が出ていたにも関わらずお祝いに来てくれて、彼の作り立てホヤホヤの、すてきなラブソングを歌ってくれたのでした。

「窓の外では雨がざあざあ降っている。そして僕の心の中には、君への愛があふれている」

この曲を彼のCDやライブで聞くたびに、あの日の、部屋の窓をつたう雨と、50才になった日を特別な日にしてくれた旦那の優しさと、酷い雨にも関わらず祝いにやって来てくれた友人や家族への感謝の気持ちがパアッと甦ってきます。
そして、地下が浸水し、何日もお湯も電気も使えなかった辛さと、翌日にTの大学の学部で乱射事件があり、どうしようもない怒りと哀しみと混乱に狼狽えたことも。

スポゥドは、普段は穏やかで物静かに話す男なのに、一旦舞台に立つと、すごいカリスマを感じさせるプロのシンガーソングライターです。
どうして彼がポピュラーにならないのか、それが本当に理解できません。
けれども今、彼にとって、とても大きなチャンスが到来しました。ミュージカルを6日間、マンハッタンの劇場で上演することになったのです!
それで今は、てんやわんやの大騒ぎで、準備や練習に必死なのですが、とにかくお金が足りません。それで、今夜は募金の協力のお願いも兼ねたライブになりました。



今夜の演奏は、いつにも増して研ぎ澄まされていました。メンバーとの息もぴったり。



「ピアノ弾きのまうみの前で弾きたくないんだけど」と、うちに来て披露してくれた、その時はまだ未完成だった歌もしっかりと出来上がっていました。



彼らの本番は、わたしのカーネギーの2日後。わたしも頑張るからね、あなたの苦労はわたしのなんかとは桁が違うけど、スポゥド、応援してるからね!


コンサートに来てくれたあさこのお勧めで、3人でブラジル料理店に行きました。



めっちゃくちゃ美味しくて、思わず3人とも食べ過ぎ!最近の週末はこんなのが続いています。危ないなあ……。
 
帰りの道から見えた、名前がはっきりしないけれど、ライトがきれいだった橋です。



さて、明日からは仕事以外はふらふらと出歩くのはやめて、気合いを入れて、コンサートの練習と、生徒達の発表会の曲決めをします。



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立つ鳥あとを濁さず

2010年09月19日 | 家族とわたし
♪ツタのぉ~からまぁ~るチャペェ~ルで、祈りぃ~を捧ぁ~げた日ぃ~♪



などと、気分良く歌っている場合ではないのです!ツタはレンガを浸食するので、また這い上がってこないよう、旦那が必死に引っこ抜いております。



とてもいいお天気です。暑くもなく寒くもない。昨日は全く手伝えなかった旦那とわたし。今日はTと3人で荷物運びをしました。
 


ニュージャージーからクィーンズに行くには、まずマンハッタンに入り、街を西から東に横断して、また橋を渡るかトンネルを走ります。
道が混んでいなければ、うちから45分で行けますが、こんなお天気の良いマンハッタンは曲者。
今日は特に、オバマ大統領がマンハッタン入りしていて、おまけにメキシコの方々のパレードなんかもあって、すごい混み様でした。トホホ。

これが息子Tの、人生初めての自分だけのアパートメント。
周りにはいろんなお店が混み合うにぎやかで活気のある通りがあり、アパートメントが続く静かな通りも、なかなか安全でいい感じです。



中はこんな感じ。窓が大きくて明るい部屋です。わたしの好きなガラスのタイルで仕切られたベッドルームが気に入りました。



窓の向こうはアパートメントの中庭です。部屋は半地下にあるので、地面がちょっと高い所にあります。



バスルームなんて、うちより何倍もきれいだし……。



自分の甲斐性で暮らしを立てていく息子T。武者震いしているのかな?




ところで、Tの引っ越しに際して、またひとつ学びました。
それは、このことわざ。『立つ鳥あとを濁さず』

Tは大学の寮生活が始まってから急に、部屋の掃除に無頓着になり、そりゃもう悲惨な状態でも平気で暮らしておりました。
彼がどこかに引っ越したり移動したりするたびに、わけのわからない残り物やゴミがわんさか!
それを仕方なくわたしが掃除していたのですが、今回はそんなことにならないよう、事前からうるさく言っていたのでした。
「あんたがここに帰ってきた時と同じ状態の部屋にしてから引っ越してや!」と。
そしてその時、自信満々で、50代の威厳を漂わせながら、「ほれ、『立つ鳥あとを汚さず』ってことわざにもあるやろ!」と付け加えたのでした。

「汚さずって……濁さずやし……」
「へ?」
「人に説教してるのに間違うてるし……」
「へ?」

いや、そんなことはない、汚さずやし。いや、絶対に濁さずやし。と言い合いしながら、パソコンで検索すると……、

「濁さずやったし……」

お、おっほん!濁さずでも汚さずでもどっちゃでもよろしい。とにかく意味は一緒やし!

引っ越しの完了は、インターネットが使えるようになる来週の土曜日までおあずけです。
まあ別に焦る必要があるわけでもなし、ぼちぼちやっていったらええやん。と、母のわたしはそれとなく、延期を楽しんでおります。





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うたよ、響きわたれ!

2010年09月19日 | 音楽とわたし
「あのさ、こういう感じよ、ここにバケツがあって、そこにはお水がいっぱい入ってるわけ。それをこんなふうに持ち上げて、バッチャ~ンと遠いところにぶっちゃけるんだけど、その時の体とお水が描く放物線の、先の先を目指すっていうか、留まらないでポーンと飛んでいくんだよね」

「まうみ、例えばこんなふうに山があるわけ(と言いながら、楽譜で山の形を作るあさこ)。んで、まうみの弾く、すご~く幅のある跳躍音の一番高い音は、実はこの山の頂上にはなくて、ああ着いたぁ~なんて気持ち良くドスンと着地したらだめなの。それはあくまでも通過点に過ぎないんだから」

もっと先に、もっと遠くに。

アクセントは強く叩かなくても、流れの中で大切に大切に心を込めて弾いてあげればいい。響きはきっとそれで通じる。

抽象的なことだけではなく、それを実際の音に仕上げていくために、ひとつひとつの音の瞬間を分解して、この音からこの音までこんなふうに弾いてみて、といろいろと試させてくれるあさこ。
すごいスピードで要求されるのだけど、それに乗って、わたしも自我を忘れてイメージの世界に飛び込んでいくと、いい意味で枠が外されていく。

きれいな音を出すにはどうしたらいいか。
お客さまに感動していただくにはどんなふうに弾いたらいいか。

そんなことをごちゃごちゃ考えて練習していたわたしに、ゴツンとゲンコツを食らわせてくれたH師匠とあさこ。
あの日を境に、わたしは自分の心の中をもっと見つめるようになり、楽譜上の音符ではなく、その音符を音にする一瞬の間に、さて自分はどんなふうに歌いたいのかを考えながら、録音の中の自分と問答しながら練習をするようになった。
そしてなによりも、自分の音を本当の意味で『聞く』ようになった。
今までのわたしは、歌ってると思い込んでいるだけで、それは自己満足の世界の中の歌で、自我の外に向けて歌を歌っていなかった。
響きについてもとてもいい加減で、だいたいのイメージしか持ち合わせていなくて、それが実際に、イメージ通りに、響きとして実現できているのかどうか、その確認すらしていなかった。

痛いゲンコツを食らったおかげで『被爆ピアノコンサート』では生まれて初めて、「まうみのピアノの音は少し特別」という感想を、多くの方々に持っていただくことができた。
当のあさこも、「あんなふうにピアノが弾けるのに、どうして伴奏はあんなだろうね、と思ったよ」と、酷かったわたしの演奏を直に聞いた者としての、正直な感想を言ってくれた。

昨日また、音の行方について、すごく学べたような気がする。
すばらしいパートナーに巡り会えて、本当に幸せ!

満開の桜の妖艶な景色の中で、儚い恋を、少し拗ねたようなこともつぶやきながら思い出している女。
自由への束縛と憧れと哀しみをこめて、歌わずにはいられないジプシーかたぎを浪々と歌う男。
母になることの哀しみを、心のひだのすべてを震わせて歌う女。

「いや~歌いやすくなったわまうみ!いいねいいね~!でもさ、同じフレーズがあっても、わたしの真似とかし過ぎなくていいんだよ。お、あんたはそう歌うのか、じゃ、わたしはこういくぜ~、みたいに、好きなように歌っていいんだよ。そうやってお互いに刺激し合いながら演奏しないと面白くないじゃん」

気がつくと、小さなことにくよくよしなくなっていた。
強弱やらタイミングやら、たまに全然従ってなかったり合わなかったりするんだけれど、それがまるで気にならなくて、次に行きたくて仕方がない。
もっともっと、先に先に、遠くに。
そしてあっと言う間に歌が終わっていて、なんともいえない爽快感が体中を駆け巡っている。

さぁ~、今週の金曜日、最終合同リハーサルに向けて、仕上がり度100%を目指して頑張るぞぉ~おぉ~
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