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角田光代『Presents』

2007-01-15 15:49:48 | ノンジャンル
 今日も朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の対談で触れられていた角田光代さんの「Presents」の紹介です。
 題名そのまま、人生の様々な局面でもらうプレゼントについて、その逸話を語った短編集なのですが、プレゼントされるものは、「名前」「ランドセル」「初キス」「鍋セット」「うに煎餅」「合い鍵」「ヴェール」「記憶」「絵」「料理」「ぬいぐるみ」「涙」です。それぞれがほのぼのとした味わいを持ついい話なのですが、私が特に気に入った話は、昔からの素朴な彼を、最近知り合った洗練された彼と比べて馬鹿にしていた主人公が、ホワイトデーに高価なジュエリーを最近知り合った彼にもらい、有頂天になって家に帰ってみると、郵便ポストに「チョコのお礼。飴より煎餅好きだよな」の手紙とともにコンビニの袋に包まれたうに煎餅が昔の彼からのプレゼントとして入っていて、主人公がそんな彼の素朴さにどうしても惹かれてしまうという話の「うに煎餅」、夫の浮気が原因で夫婦仲がうまくいかなくなり、夫が昔の幸せだった頃の記憶を取り戻そうと、新婚当時訪れた温泉へ二人で旅行する、という「記憶」、笑いの絶えない家族を夢見ながら、現実ではやんちゃな息子が玄関の靴をめちゃくちゃにすることなどを怒ってばかりいて自己矛盾を感じている若い母親が、息子の先生に呼び出され、家族という題で絵を描かせたところ、彼女の息子だけ人物を描かずに乱雑に並ぶ靴を描いたことを問題視された事に対し、猛然と息子の絵を弁護し、泣き出してしまう、という「絵」などでした。
 この本にはいくつか工夫がしてあって、先ず、各短編に一つずつ松尾たいこさんが描いた綺麗でシンプルな絵がついていて、また装釘も贈り物の包装紙のような模様で、この本自体がプレゼントになるようになっています。文体も簡潔で、無駄がなく、とても読みやすくて、また読んでいて暖かい気持ちにさせてくれる本でした。
 角田光代さん。また1人、好きな作家が増えたようです。