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森絵都『風に舞いあがるビニールシート』

2007-01-16 15:59:45 | ノンジャンル
 今日も朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の対談で触れられていた、森絵都さんの「風に舞い上がるビニールシート」を紹介します。6つの短編からなる本です。
 第一話「器を探して」は、洋菓子のパティシエを目指すものの、売れっ子パティシエの雑用をこなす女性が、新作のケーキにふさわしい器を求めて、岐阜の窯元を探し歩く話。第二話「犬の散歩」は、夜はスナックで働き、昼は捨て犬の里親探しのボランティアをしている32才の主婦の話。第三話「守護神」は、昼はバイトに精を出し、夜は大学で好きな文学を学ぶ30代の男性の話。第四話「鐘の音」は、仏像の修復師の話。第五話「ジェネレーションX」は、10年ぶりに高校野球のメンバーが集まり草野球をやるという取り引き先の話を聞き、来れないメンバーの代わりに参加する事にした甲子園の決勝に出たことのある40代のサラリーマンの話。第六話「風に舞いあがるビニールシート」は、国連スタッフとして世界中の難民キャンプを飛び回る男と結婚した国連職員の女性が、離婚後、元夫が強姦されそうになっていた少女を身をもって助けて殺された話を聞き、自分も現場へ行って働くことを決心する話です。
 読んでいて圧倒的にこちらに迫ってくるものがあるのは、第六話の「風に舞いあがるビニールシート」でした。ここでのビニールシートは、戦争などに翻弄される難民たちを表しています。最初は女性が超エリートで、自分の住む世界とあまりにも異なる世界の話なので、ふ~ん、という感じで読んでいたのですが、具体的な難民の話が出て来る辺りから、話に引き込まれ、最後に女性が元夫の遺志を継いで現場で働く決意をするところは感動的でさえありました。
 それに比べ、他の5編はのんびりした話で、その落差が激しかったように思います。
 国連難民高等弁務官に興味のある方、オススメです。