河野多惠子さんが自分の創作活動に大きな影響を受けたという、エミリー・ブロンテの1847年作品『嵐が丘 第一部』を読みました。
1801年、ぼく、ロックウッドはスラッシュクロス屋敷を借りることになった。人間嫌いにとっては、この地はまさに天国のようだ。その点に関してはヒースクリフ氏と気が合いそうである。ヒースクリフ氏の屋敷の名前は「嵐が丘」である。
ある雪の日、使用人が火を消してしまったので、ぼくは嵐が丘まで歩いていった。繊細で美しい女性がいたが、話しかけても口をきかない。彼女の目に認められるのは軽蔑と絶望のまじった感情だけだった。みすぼらしい格好をした若者もいたが、彼はぼくを睨みつけた。ヒースクリフ氏によると、この女性は氏の息子と結婚し、若者はヘアトンという名だと言う。嵐が収まらないので、ぼくは無理矢理嵐が丘に泊めさせられることになり、棚の中のベッドを下女に提供された。以前キャサリン・アーンショーという女性が使っていたものらしい。部屋にある本の余白にはびっしりと日常生活への不満が綴ってあり、ぼくは窓の外に女性の幻影を見て叫び声を上げた。駆けつけたヒースクリフは僕がここにいることに憤り、キャサリンの名を呼び泣くのだった。
ぼくはここで18年家政婦をしているディーンさんに、嵐が丘にいる女性は亡くなったここの旦那様のお嬢さまで、結婚前はキャサリン・リントンという名前だったこと、キャサリンにはヒンドリーという兄がいて、2人の父がある日子供を拾ってきて、その子にヒースクリフと名付けたこと、手に負えないお転婆なキャシーとヒースクリフはとても仲良くなったが、ヒンドリーはヒースクリフを憎んでいたこと、ヒンドリーは大学に行かされ、旦那様は亡くなり、葬式に帰ってきたヒンドリーは既に結婚していたこと、そしてヒンドリーはヒースクリフを家族から召使いに格下げし、重労働をさせ始めたこと、しかしヒンドリーの目を盗んでヒースクリフとキャサリンは1日中遊び、2人ともどんどん粗暴になっていったこと、近所のスラッシュクロス屋敷にはリントン夫妻のもとにエドガーとイザベラという兄妹がいたこと、そのうちヒンドリーにヘアトンが産まれたが、妻はその後すぐに亡くなったこと、やがてヒンドリーは身を持ちくずし、召使いはジョウゼフとわたしだけになったこと、キャサリンはリントン家で5週間過ごし、誠実にふるまうふりをして、リントン家全員の心を掴むことに成功したこと、その頃までにヒースクリフは重労働のせいで知的好奇心は消え失せ、人を寄せつけない陰気な人間になり、キャサリンとも口論が絶えなくなったこと、しかしキャサリンは失踪したヒースクリフの姿を追い求めるようになり、精神錯乱の症状が見られるようになり、回復した後も以前より生意気で怒りやすく、傲慢になったこと、キャサリンはエドガーと結婚し、わたしはキャサリンに付いて嵐が丘からスラッシュクロス屋敷に移ったこと、エドガーはキャサリンの機嫌にばかり気を取られ、短期間蜜月を迎えたが、理知的で威厳さえ備えるようになったヒースクリフが戻ると、キャサリンはヒースクリフの味方をしてエドガーを敵対視するようになったこと、久しぶりに会ったヘアトン坊やはヒースクリフから父に悪態をつくように教わっていたこと、ヒンドリーはヒースクリフと争いを起こし、彼を嵐が丘から追放しようとしたが、キャサリンが邪魔してできなかったこと、そのうちエドガーはキャサリンに自分を取るかヒースクリフを取るか、はっきり決めてくれと言い出し、その後の2人は絶交状態になったこと、やがてキャサリンは一生続くかもしれない精神錯乱の状態に陥り、ヒースクリフはイザベラを陥れ駆落ちをし、エドガーはイザベラと縁を切ったこと、家出から6週間ほど経ってからイザベラからエドガーに手紙が届いたこと、イザベラからはわたしにも手紙が届き、その中で、兄にもう一度会いたいこと、ヒースクリフは悪魔なのではないかということ、嵐が丘に住むことになったこと、ヒースクリフの部屋には誰も入れないこと、キャサリンが病気なのはエドガーのせいなのだから、その分妹のお前を苦しめてやるとヒースクリフが言うことが書かれていた。
わたしは旦那さまの許しを得て、嵐が丘を訪れると、ヒースクリフは、イザベラは勝手におれのことをロマンチックな物語の主人公みたいに想像して付いて来たのだと言った後、キャサリンに会わせろと言い、会わせないのならお前を明日の朝まで帰さないと言った。(「第二部」につづく‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
1801年、ぼく、ロックウッドはスラッシュクロス屋敷を借りることになった。人間嫌いにとっては、この地はまさに天国のようだ。その点に関してはヒースクリフ氏と気が合いそうである。ヒースクリフ氏の屋敷の名前は「嵐が丘」である。
ある雪の日、使用人が火を消してしまったので、ぼくは嵐が丘まで歩いていった。繊細で美しい女性がいたが、話しかけても口をきかない。彼女の目に認められるのは軽蔑と絶望のまじった感情だけだった。みすぼらしい格好をした若者もいたが、彼はぼくを睨みつけた。ヒースクリフ氏によると、この女性は氏の息子と結婚し、若者はヘアトンという名だと言う。嵐が収まらないので、ぼくは無理矢理嵐が丘に泊めさせられることになり、棚の中のベッドを下女に提供された。以前キャサリン・アーンショーという女性が使っていたものらしい。部屋にある本の余白にはびっしりと日常生活への不満が綴ってあり、ぼくは窓の外に女性の幻影を見て叫び声を上げた。駆けつけたヒースクリフは僕がここにいることに憤り、キャサリンの名を呼び泣くのだった。
ぼくはここで18年家政婦をしているディーンさんに、嵐が丘にいる女性は亡くなったここの旦那様のお嬢さまで、結婚前はキャサリン・リントンという名前だったこと、キャサリンにはヒンドリーという兄がいて、2人の父がある日子供を拾ってきて、その子にヒースクリフと名付けたこと、手に負えないお転婆なキャシーとヒースクリフはとても仲良くなったが、ヒンドリーはヒースクリフを憎んでいたこと、ヒンドリーは大学に行かされ、旦那様は亡くなり、葬式に帰ってきたヒンドリーは既に結婚していたこと、そしてヒンドリーはヒースクリフを家族から召使いに格下げし、重労働をさせ始めたこと、しかしヒンドリーの目を盗んでヒースクリフとキャサリンは1日中遊び、2人ともどんどん粗暴になっていったこと、近所のスラッシュクロス屋敷にはリントン夫妻のもとにエドガーとイザベラという兄妹がいたこと、そのうちヒンドリーにヘアトンが産まれたが、妻はその後すぐに亡くなったこと、やがてヒンドリーは身を持ちくずし、召使いはジョウゼフとわたしだけになったこと、キャサリンはリントン家で5週間過ごし、誠実にふるまうふりをして、リントン家全員の心を掴むことに成功したこと、その頃までにヒースクリフは重労働のせいで知的好奇心は消え失せ、人を寄せつけない陰気な人間になり、キャサリンとも口論が絶えなくなったこと、しかしキャサリンは失踪したヒースクリフの姿を追い求めるようになり、精神錯乱の症状が見られるようになり、回復した後も以前より生意気で怒りやすく、傲慢になったこと、キャサリンはエドガーと結婚し、わたしはキャサリンに付いて嵐が丘からスラッシュクロス屋敷に移ったこと、エドガーはキャサリンの機嫌にばかり気を取られ、短期間蜜月を迎えたが、理知的で威厳さえ備えるようになったヒースクリフが戻ると、キャサリンはヒースクリフの味方をしてエドガーを敵対視するようになったこと、久しぶりに会ったヘアトン坊やはヒースクリフから父に悪態をつくように教わっていたこと、ヒンドリーはヒースクリフと争いを起こし、彼を嵐が丘から追放しようとしたが、キャサリンが邪魔してできなかったこと、そのうちエドガーはキャサリンに自分を取るかヒースクリフを取るか、はっきり決めてくれと言い出し、その後の2人は絶交状態になったこと、やがてキャサリンは一生続くかもしれない精神錯乱の状態に陥り、ヒースクリフはイザベラを陥れ駆落ちをし、エドガーはイザベラと縁を切ったこと、家出から6週間ほど経ってからイザベラからエドガーに手紙が届いたこと、イザベラからはわたしにも手紙が届き、その中で、兄にもう一度会いたいこと、ヒースクリフは悪魔なのではないかということ、嵐が丘に住むことになったこと、ヒースクリフの部屋には誰も入れないこと、キャサリンが病気なのはエドガーのせいなのだから、その分妹のお前を苦しめてやるとヒースクリフが言うことが書かれていた。
わたしは旦那さまの許しを得て、嵐が丘を訪れると、ヒースクリフは、イザベラは勝手におれのことをロマンチックな物語の主人公みたいに想像して付いて来たのだと言った後、キャサリンに会わせろと言い、会わせないのならお前を明日の朝まで帰さないと言った。(「第二部」につづく‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)