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宮本輝『流転の海』

2006-09-25 16:51:04 | ノンジャンル
 山田詠美さんが敬愛する宮本輝氏の「流転の海」を読みました。宮本氏の作品を読むのは、これが初めてです。
 大阪の商人松坂熊吾は、戦前に一代で財を築きますが、戦争でそのほとんどを失います。が、追い込まれれば追い込まれる程、気力の涌く松坂は、闇市で拾った辻堂を片腕に商売の再建に取りかかりますが、そんな折り、4番目の妻房江に初めての子供が生まれます。その男の子伸仁が20歳になるまで、つまり今50歳の松坂は70才になるまで生きることを誓い、商売への野望を捨て、息子の健康のために3~4年愛媛の実家に戻ることを決めるのでした。
 この小説はかなりの長篇で、松坂の商売の話や、松阪や房江の生い立ちの話、商売敵の話など、盛り沢山の内容でした。ただ、文章がつい説明調になり、長々しくなるのが唯一の欠点かもしれず、読んでいて、やはりちょっと古い小説だなあ、という感じを受けました。
 この作品は宮本氏を代表する作品のようですが、続編があって、それが何とこのあと4巻もあるのだそうです。確かに、物語りの序盤で話が終わっている感じで、愛媛に帰ってからの話、伸仁の成長の様子、大阪に帰ってからのライバルたちとの商売をめぐる確執など、どうなっていくのか、興味を引かれます。
 映画化もされていて、房江の役を野川由美子がやってるというので、ちょっと見たい感じもしますが、松坂を森繁がやっているのが気になります。松坂はエネルギッシュな中年男なので、中年になった田宮二郎あたりがやると、ピッタリなのではないでしょうか?
 ということで、読みがいのある長篇5册を読破してみたいと言う方、時間が余り余っていて楽しい読書でもしたいなあとお考えの方には、オススメです。

瀬尾まいこ他『Teen Age』

2006-09-24 16:10:05 | ノンジャンル
 角田光代、瀬尾まいこ、藤野千夜、椰月美智子、野中ともそ、島本理生、川上弘美がそれぞれ一編ずつ短編を提供してできた本「Teen Age」を読みました。一番面白かったのは、やはり瀬尾まいこさんの「狐フェスティバル」でした。
 ある田舎の町。その町には狐がえりという祭りがあって、子供たちがマントをひるがえして、家々の前で踊り、その踊りの優劣を競うのでした。川居のチームは幼い男女のサナオとミヤコと自分だけしかいないので、最近東京から引っ越してきた三崎という女の子に参加してくれるよう頼みますが、拒否されます。サナオとミヤコに応援され、再三三崎の家を訪れるがダメなので、アユを捕ってそれで気を引こうとしますが、逆に気持ち悪がられて追い出されてしまいます。しかし、それがきっかけで三崎は狐がえりに参加する気になり、元ダンス部の彼女はリズム感を強調した今までに無い踊りを創作し、本番でその踊りは人気を博したのでした。そして親しくなった三崎と川居は、サナオとミヤコと一緒に伝統の踊りをしなかったことのお祓いに川へ泳ぎに行くのでした。
 主人公の川居のいかにも田舎にいそうな素直な性格が好感がもて、幼い二人と転校生の間に板挟みになりながらも何とか局面を打開しようとする彼を応援しながら読んでいました。三崎も親の自然志向で突然田舎に連れてこられた都会の子の魅力が出ていたように思います。人物の設定が面白く、それもこの短編を高く評価することになったのだと思いました。
 瀬尾さん以外では、藤野千夜さんの「春休みの乱」、椰月美智子さんの「イモリのしっぽ」、島本理生さんの「Inside」が面白かったです。このような短編集は、今まで読んだことのなかった作家さんの作品に触れられるので、そこがいいと思いました。皆読みやすい作品ばかりだったので、女性の最近の作家に疎い方にはオススメです。

瀬尾まいこ『卵の緒』

2006-09-23 17:12:42 | ノンジャンル
 瀬尾まいこさんのデビュー作「卵の緒」を読みました。「卵の緒」と「7's blood」の中編2つからなっています。
 「卵の緒」のあらすじは、次のようなものです。自分が捨て子だと思っている育生は、授業でへその緒の話を聞き、母を問いつめますが、母は「卵で産んだからない」と言います。突然学校に来なくなった池内君の家を度々訪ねて遊んだり、母のボーイフレンドの朝ちゃんと夕飯を食べたり、遊びのあと猫に命を助けてもらってから猫グッズをコレクションしているじいちゃんちに行って夕飯のおかずをもらったりしているうちに、6年生になった時、母と朝ちゃんが結婚します。育生の姓が鈴江から朝井に変わり、池内君も学校に来るようになり、しばらくして妹か弟ができることになり、育生は母から自分が余命いくばくも無い大学教授と当時大学生だった母との間に生まれた子だということを母から教えられます。中学生になった育生は、人間が卵から生まれず、親子の絆は不確かなものだと知るようになります。そして妹の育子ととても仲よく暮らすのでした。
 「7's blood」は、次のような話です。七子は死んだ父の愛人のこどもで弟の七生と2人で生活しています。七生の母が傷害事件を起こして刑務所に入って、七生がやってきてすぐに、七子の母が入院してしまったからです。食事の用意や洗濯は七生がしてくれます。高3の6月になっても七子の進路は決まっていません。学校ではボーイフレンドの野沢が七生を見たいと言いますが、七子は七生のことを、どうしてもかわいいと思えません。そんな中、七生が学校での自己紹介で、母が二人いて、一人は刑務所にいると言ったことが問題になり、七子が学校に呼び出され、七生との関係は増々悪化します。そんなある日、夜中に冷蔵庫をあさる七生を七子が見つけると、七生の手にあったのは、七子の誕生日に渡しそびれて腐りかけているショートケーキでした。七子は七生の気持ちをうれしく思い、腐りかけのケーキを食べます。夏休みに入ると、七子は頻繁に母の病室を訪れます。七生はガールフレンドと宿題をやり、帰りがけにキスをしているのを七子に見られ、七子に問われると、他のガールフレンドともキスをしてると答える七生。そうこうするうち、七子の母がガンで亡くなります。七子の悲しみは日常の中で薄れて行くとともに、隣の席の島津君が好きになります。そしてある晩寝付かれない七子は七生を連れて深夜の散歩に出かけ、野犬に追いかけられたりしながら、帰ってきた時に、死んだ母が男の子をほしがっていたことに気付き、泣きます。冬、風邪で七子が寝込んでいる間に、七生の母が出所し、七生は母のもとに戻ることになります。七子は嫌がる七生の髪を切ってやり、また会えるよね、とお互いに言って別れるのでした。
 どちらも家族関係を扱った小説で、とても読みやすく、また登場人物の心情がストレートに伝わってくる小説です。特に「7's blood」の七子と七生のやりとりは、二人のキャラクターがよく出ていて楽しく読めました。善人しか出てこないのにドラマが生じる瀬尾まいこ小説の特徴は、ここでも健在です。まだ読んでいない方、オススメです。

瀬戸内寂聴・聞き手山田詠美『いま聞きたい いま話したい』

2006-09-22 15:07:48 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は、'05年に発行された、瀬戸内寂聴さんと山田詠美さんの対談集「いま聞きたい いま話したい」です。一応、瀬戸内さんの本で、聞き手が山田詠美となっていますが、内容は一方的に山田詠美がインタビューするというのではなく、対等に話を進めています。
 まず、驚いたのは瀬戸内さんの世俗的な意見でした。出家するということは男を絶つということですが、その規則(?)を学校の校則程度にしかとらえていないように思える発言が多々あり、「これでいいのかなあ?」と思いました。男女の愛、セックスについて語ることに限れば、自由なのでしょうか? そう言う点で詠美さんと瀬戸内さんはまったく意見が一致していて、面白かったです。
 それから瀬戸内さんも恋多き女性だったようで、具体的な告白はありませんでしたが、ぽろっと過去の男達の話が出てきたりして、それで出家したのかな、とも思いました。(実際には、出家した理由をはっきりとどこかで述べられていたような気もするのですが‥‥。)
 4回にわたる対談を一冊にまとめた本ですが、それぞれの回にテーマが設けられていて、あっという間に読んでしまいました。まだ読んでいない方には、オススメです。

 ということで、このところずっと山田詠美さんの作品について書いてきましたが、一応これにて完結を迎えることとなりました。まだ今後も未読の本が手に入れば、単発的に書くこともあるかもしれませんが、今後は詠美さん推薦の本や、様々な所で推薦されている本を読んでいこうと思っています。こちらのコーナーを読んでいただいている方、今後も引き続き、よろしくお願いいたします。

山田詠美&ピーコ『ファッション ファッショ』

2006-09-21 16:01:33 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は、ピーコさんとの対談で'03年に発売された「ファッション ファッショ」です。題名から分かる通り、ファッションを話題の中心に据えて行われた計4回の対談からなる本です。
 ファッションにあまり関心の無い私は、いろんなブランド名や衣服の名前を言われてもさっぱり分かりませんでしたが、楽しく語り合う二人の雰囲気は伝わって来て、結構楽しく読めました。
 また、「左に習え」的な、ただ流行を追うだけの人は駄目、と決めつけ、自分のポリシーを持ってる人のファッションが美しいのだ、という二人の考えが、逆説的に題名の「ファッショ」につながっているのかな、とも思いました。
 私は映画ファンなので、ピーコさんよりおすぎを上に置く傾向にかつてはあって、(しかし、これは淀川長治さんが亡くなるまでは、の話であって、淀川さんが亡くなってからのおすぎの節操のなさは目に余るものがあります)あまり好きでなかったのですが、少なくともこの本でのピーコさんは好感が持てました。だからといって、ファッション評論家(こんな職業、あっていいんでしょうか?)としてのピーコさんを再評価したことにはならないのですが。
 この本には姉妹本で「ファッション ファッショ(マインド編)というのも発売されているようなので、この本を気に入られた方は、こちらの方も読まれたらいかがでしょうか?