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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』その5

2018-11-25 04:24:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 食事。ルベル「同業のマダッド氏に兄上と父親の調査を頼んだ。父親アブ・タレクは死亡証明書が存在しない。この国では行方不明者が多く、彼のような人間は国を出た可能性が高い。死亡または国外のいずれかが判明する」シモン「不明でいい」ルベル「兄上ですが、ナウル・マルワン夫人はデルオムの村の出身。男児を出産し、助産婦エルハムがその子をクファリアットの孤児院へ。1970年5月のことだ。(中略)1970年5月デルオムの助産婦エルハムが“里子に出す”と男児を預けた。その月、男児は1人だけ。男児は“ニハド”という名で登録された。日付が一致する。兄上の名はニハドだ。クファリアット孤児院では“ニハド・ド・メ”、これが登録上の名前だ。意味は“5月のニハド”。孤児院に来た月で呼ぶ。だが内戦になり、もらい手は現れなかった。1974年孤児院は破壊された。孤児院の破壊者を捜し、子供たちの行方を聞くしかない。あの一帯の過酷な歴史を考えると、望みは少ない」シモン「きっと死んでる」「死んではいない。痕跡を見失った」「破壊者も兄も死んでいる。手紙を開けよう」「遺言は神聖だ。破ることは許されん」「レイプと同じだ。うちの“血筋”だ。(間をおいて)すまない」「残された方法は一つ。だが、かなり過激な方法だ。孤児院を破壊した男は生きている。子供たちの行方を知っているはずだ。40年近く前だ。長い年月の間、各派の無情な論理によって報復の連鎖がふくらみ続けたのだ。足し算のように。戦闘を指揮する男は記憶力が抜群だ。必ず覚えているとも。ワラット・シャムセディンという名前だ」「どこで見つける?」「彼が君を見つける。そのための作戦が……君はお茶が好きか?」ジャンヌ「あなたの番よ」。
 ルベル「デレッサの難民キャンプに行くのだ。誰であろうと誘われたらお茶を飲み、その人に言え。君は“歌う女”の息子でニハドを捜してると。案内なしではまずい。同行する者を見つけよう」。
 車、キャンプに到着。「デレッサにようこそ」、難民キャンプの中を歩き回るシモンとルベルと2人の案内人。「どこへ行けば?」「さあ」。人だかり。〈見間違うなよ。工学で勉強したが、仕事がないのでタクシーの運転手をしている〉〈何しに来た?〉〈ここへ案内してくれと言う外国人を連れてきた〉〈来てくれ〉〈せっかくだが時間がない〉〈どうか寄ってほしい〉「お茶に招待したいと」「ぜひ」「なぜデレッサに来たのかと」「ニハド・ド・メを捜しに」「知らないそうだ。あなたのことを教えてくれと」「母は南部のデルオム出身。“歌う女”と呼ばれた」。
 シモン「お茶は飲んだ。何を待つ?」。
 都会の全景。
 病院の廊下を歩くルベルとシモン。ノック。「あなたがサルワン・マルワン?」「そうです。あなたには協力しますよ。1時間で戻れる」シモン「姉に電話は?」ルベル「ダメだ。1時間で済む。約束だ」サルワン「着替えさせてくれ」。シモン、ドア閉める。「ジャンヌに電話する気だ」「構わんよ。心配はいらない。行っても平気だ。南部では物事が急速に展開する」「分かった」。(また明日へ続きます……)
 また昨日の続きです。
 食事。ルベル「同業のマダッド氏に兄上と父親の調査を頼んだ。父親アブ・タレクは死亡証明書が存在しない。この国では行方不明者が多く、彼のような人間は国を出た可能性が高い。死亡または国外のいずれかが判明する」シモン「不明でいい」ルベル「兄上ですが、ナウル・マルワン夫人はデルオムの村の出身。男児を出産し、助産婦エルハムがその子をクファリアットの孤児院へ。1970年5月のことだ。(中略)1970年5月デルオムの助産婦エルハムが“里子に出す”と男児を預けた。その月、男児は1人だけ。男児は“ニハド”という名で登録された。日付が一致する。兄上の名はニハドだ。クファリアット孤児院では“ニハド・ド・メ”、これが登録上の名前だ。意味は“5月のニハド”。孤児院に来た月で呼ぶ。だが内戦になり、もらい手は現れなかった。1974年孤児院は破壊された。孤児院の破壊者を捜し、子供たちの行方を聞くしかない。あの一帯の過酷な歴史を考えると、望みは少ない」シモン「きっと死んでる」「死んではいない。痕跡を見失った」「破壊者も兄も死んでいる。手紙を開けよう」「遺言は神聖だ。破ることは許されん」「レイプと同じだ。うちの“血筋”だ。(間をおいて)すまない」「残された方法は一つ。だが、かなり過激な方法だ。孤児院を破壊した男は生きている。子供たちの行方を知っているはずだ。40年近く前だ。長い年月の間、各派の無情な論理によって報復の連鎖がふくらみ続けたのだ。足し算のように。戦闘を指揮する男は記憶力が抜群だ。必ず覚えているとも。ワラット・シャムセディンという名前だ」「どこで見つける?」「彼が君を見つける。そのための作戦が……君はお茶が好きか?」ジャンヌ「あなたの番よ」。
 ルベル「デレッサの難民キャンプに行くのだ。誰であろうと誘われたらお茶を飲み、その人に言え。君は“歌う女”の息子でニハドを捜してると。案内なしではまずい。同行する者を見つけよう」。
 車、キャンプに到着。「デレッサにようこそ」、難民キャンプの中を歩き回るシモンとルベルと2人の案内人。「どこへ行けば?」「さあ」。人だかり。〈見間違うなよ。工学で勉強したが、仕事がないのでタクシーの運転手をしている〉〈何しに来た?〉〈ここへ案内してくれと言う外国人を連れてきた〉〈来てくれ〉〈せっかくだが時間がない〉〈どうか寄ってほしい〉「お茶に招待したいと」「ぜひ」「なぜデレッサに来たのかと」「ニハド・ド・メを捜しに」「知らないそうだ。あなたのことを教えてくれと」「母は南部のデルオム出身。“歌う女”と呼ばれた」。
 シモン「お茶は飲んだ。何を待つ?」。
 都会の全景。
 病院の廊下を歩くルベルとシモン。ノック。「あなたがサルワン・マルワン?」「そうです。あなたには協力しますよ。1時間で戻れる」シモン「姉に電話は?」ルベル「ダメだ。1時間で済む。約束だ」サルワン「着替えさせてくれ」。シモン、ドア閉める。「ジャンヌに電話する気だ」「構わんよ。心配はいらない。行っても平気だ。南部では物事が急速に展開する」「分かった」。(また明日へ続きます……)


ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』その4

2018-11-24 10:04:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 「シモン、頼むから黙って聞いててよ。ママは監獄にいた。ママはレイプされ、兄さんを監獄で産んだ。あなたも来て」。
 “歌う女”、独房の中を行ったり来たり。鉄条網にひっかかった衣服。
 頭に袋を被せられ、タレクの独房へ連れていかれる女囚。その女の悲鳴。絶望的な女囚。鼻歌を歌う“歌う女”。だんだん大きな声で歌う。水を抜いたプール。水たまり。高層アパート。窓外を見るシモン。
 ルベル「アミオットが扱った1866~1892年の書類だ。その息子が扱った1925年までの書類、私の祖父シャルル、私の父アンリ、そして私。私でルベル家は絶える。(中略)“死
”は終わらない。常に痕跡を残す。兄を捜すには母親の人生を遡れ」シモン「姉を連れ戻しに行くだけだ」ルベル「手は打った。急いで準備することがある。荷造りしろ。出発は……パスポートが」「あなたも? 関係ないのに」ルベル「最後まで見届ける。大人になれ。私が必要だろ?」シモン「姉を見つけた帰る」ルベル「約束する。公証人にとって約束は神聖なものだ」。(中略)
 病院の廊下でナワルの遺言を書くルベル。
 書類を封筒に入れるルベル。
 “サルワン・ジャナーン”の字幕。頭に袋をされるナワル。タレクの独房へ。手錠をされて椅子に座るナワル。値踏みをするタレク。
 床に横たわって泣くナワル。タレク「さあ、歌うがいい」。手錠をされた手で必死にズボンを上げようとするナワル。
 妊娠。
 腹殴るナワル。
 出産。看護婦「あなたは偉いわ。(中略)」。
 懐中電灯。「あなたはいつも通り川に捨てた。私が拾って育てる。“歌う女”の子よ」。
 トンネルを出る車。車内にはルベルとシモンともう一人の男。男「この国はいつも他国の戦場だ。もしノアの時代から公証人がいたら、土地の所有者がすぐ判明する。ここはあなた、そこはあなた、そうすればみんなが満足できる」ルベル「公証人の歴史は1000年だ。天地創造の昔から存在すべきだった」シモン「協力に深く感謝します」男「いいえ、光栄です。お尋ねの件を調べました。シモン、君の横にある鞄をルベル氏に渡してほしい」ルベル「今は時差で疲れているので後で見よう」男「父親は確かに存在していましたが出生の特定に難航しています。死亡証明書が存在しない。兄は」シモン「いったい何の話です?」ルベル「調査を頼んだ。時間を節約するために」シモン「姉を捜しに来たんだ」ルベル「お姉さんはすぐに見つかった」。
 ハグするジャンヌとシモン。「よく来てくれたわ」「いいんだよ」「これが監獄で出産を手伝った看護婦よ。今日会いにいく」「ジャンヌ、もう十分だ。黙って一緒に帰ろう」「あなたの役目なのよ! 私のために兄を見つけて! 彼女は入院している」。
 病院。(中略)「マイカさん、〈~〉〈~〉公証人のルベル氏、ジャンヌとシモンさんです」「よろしく。あなたが事情を知る人物を捜しています。ナワル・マルワンをご存知?」マイカ「〈サルワン・ジャナーン……〉〈サルワン〉〈ジャナーン〉」ジャンヌ「クファリアットで看護婦をされてましたよね?」通訳「お母さまを知っていると」ジャンヌ「分娩を手伝いました?」通訳「立ち会ったと。赤ん坊たちを保護し、“歌う女”が釈放されるまで面倒をみたと」マイカ「〈サルワン・ジャナーン〉」通訳「双子の赤ちゃんだったそうです」。(中略)
 “ニハド”の字幕。破壊されつくした町を腰をかがめながら荷物を持って走る男の子4人。スナイパー。1人死ぬ。死んだのはジャンヌらの兄。
 都会の遠景をパン。
 男「“歌う女”をご存知とはすごいことですよ。彼女は私の事務所で秘書として18年働いた。妻と私には家族同然だった。だが彼女について知らないことばかりだ。確かめに行きますか?」ジャンヌ「はい」。(また明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S. 今から約30年前、東京都江東区で最寄りの駅が東陽町だった「早友」東陽町教室の教室長、および木場駅が最寄りの駅だった「清新塾」のやはり教室長だった伊藤達夫先生、また、当時かわいかった生徒の皆さん、これを見たら是非下記までお知らせください。黒山先生、福長先生と私が、首を長くして待っています。(また伊藤先生の情報をお持ちの方も是非お知らせください。連絡先は「m-goto@ceres.dti.ne.jp」です。よろしくお願いいたします。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』その3

2018-11-23 07:02:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 黒こげになったバス。呆然とするナワル。(中略)
 “南部”の字幕。無人の家々。ジャンヌ、携帯で「シモン、私よ。ママの故郷の村に来たわ。聞いて」。
 ジャンヌは写真を住民に見せるが、言葉が通じない。子供が案内する。ドアをノックする男の子。〈もう来ないでって言ったでしょ〉。「どうも。スーハ?」〈アハメッドはお姉ちゃんが好き〉〈やめなさい。二度と言わないで〉と姉妹ケンカ。「何かご用?」「フランス語か英語を話せる方はいます?」「サミアは?」。
 〈こんにちは〉「ジャンヌよ」。一所懸命に話しかけてくれる女性たち。だがジャンヌはその言葉を理解できない。困って笑う。茶。〈ありがとう〉。「私はサミアよ」「私はジャンヌ・マルワン。通訳ありがとう」「マルワン? この辺に多い名前よ」「カナダから来たの。スーハを捜してる」「スーハ? あの人よ。私の曾祖母なの」「雑貨店の人にお名前を聞きました。父を捜しています。名前はワハブ。母はナワル・マルワン。この村の出身」。皆、怒りだす。「マルワン家には不名誉なことが起きた。そして内戦に。ワハブを捜してるの? 知らないそうよ。あなたがナワル・マルワンの娘なら歓迎できない。帰ってほしいって。〈父親捜しも結構だけど、母親がどんな女か知りもしないで〉」。
 燃え上がるバスの前にしゃがみこむナワル。
 “デレッサ”の字幕。都会。爆撃後の廃墟。兵士。瓦礫。ナワル「虐殺の後、デレッサのキャンプに着いた。すべて焼かれていた。血の海の中、息子を捜した。あの光景は二度と忘れはしない」「我々の敵を憎むからって、お前が我々の味方とは限らない。どうしてお前を信用できる? 息子の父はデレッサの難民。息子は戦火に飲まれた。もう失うものはない。社会民族党への怒りだけ」「新聞に書いていたことと違うな」「叔父は言葉と書物が平和を築くと信じてた。私もそうだった。でも現実を思い知った」「お前の望みは?」「敵にも同じように思い知らせること」。(中略)
 家庭教師。「そうよ。よく出来たわ。これを忘れずに」父「フランス語は?」息子「とても上手したよ」「それを言うなら『上手になった』か『上達したよ』よ」「数か国語を話させたい。仲介者なしで理解できるように」。
 採点するナワルに電話。「ルーシンよ」「今晩は。お母さまの具合は?」「とても元気。明日の10時に」「明日の10時に」。電話を切るナワル。
 バッグに拳銃を入れるナワル。
 翌日、家庭教師に出かけるナワル。(中略)
 家庭教師中に靴を脱ぎ、階段を降りると、外テーブルにいた父とその相手に発砲。
 捕らえられて、車のトランクに入れられるナワル。
 ナワル、坊主頭にされる。握りしめるこぶし。傷だらけの足。部屋の隅で体育座り。
 砂漠を車で進む。“クファリアット”の字幕。「この監獄はアムネスティに何度も非難されました。ここは女子監房です。中は広めです。15年間収容されていた者も」「設立はいつ?」「虐殺の後。内戦勃発の直後です。政治犯600人が収容されました。どうぞ、中へ。記念写真を」。ジャンヌ、写真を見せて「彼女をご存知?」「いや」「ここで撮った写真よ」「分かりません。あまりに古すぎて。当時働いていた人は?」。
 道案内する男。
 車、到着。〈こんにちは〉。「ファヒーム・ハルサさんは?」「俺だ。俺は学校の用務員だ」「でも以前は?」「以前も用務員だ」「この女性をご存知? クファリアットにいたの」「俺は学校の用務員だ。何も知らん」「知ってる人を捜してます。話を聞きたくて。私の母です」「“歌う女”だ。収容番号72番だ。キリスト教右派の指導者を射殺した。その代償は高かった。15年だ。いつも歌っていた」「本当にこの人?」「13年間彼女を監視した。13年間誰かを監視したことがあるのか? 連中はあらゆる体罰を加えた。だが彼女は屈することなく耐え抜き、連中を睨みつけていた。大変な強さだ。決して折れなかった。連中は怒り狂った。アブ・タレクが送り込まれた」「誰です?」「言っておくが、時として知らない方がいいこともある」「何事も受け入れます」「彼は筋金入りの強姦魔だった。彼女をレイプしまくった。釈放までに身も心も打ち砕き、歌わなくさせるために。やがて彼女は身ごもった。そうとも、決して忘れない。72番はアブ・タレクに孕まされた。監獄で産むまで連中は待ち、その後彼女を釈放した」「生まれた子は? 見ましたか?」「当時診に来てくれた医者がいる。彼は精神障害になった。テルアビブでレストランを経営しているとも聞いたが、それはウソだ。気が狂ったか、死んだかだ。看護婦もいた。彼女を知ってるよ。ダレシュに住んでる」。名前を書くハルサ。(また明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S. 今から約30年前、東京都江東区で最寄りの駅が東陽町だった「早友」東陽町教室の教室長、および木場駅が最寄りの駅だった「清新塾」のやはり教室長だった伊藤達夫先生、また、当時かわいかった生徒の皆さん、これを見たら是非下記までお知らせください。黒山先生、福長先生と私が、首を長くして待っています。(また伊藤先生の情報をお持ちの方も是非お知らせください。連絡先は「m-goto@ceres.dti.ne.jp」です。よろしくお願いいたします。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』その2

2018-11-22 05:06:00 | ノンジャンル
 今日はaikoさんの43回目の誕生日です。先日のライヴの途中で声が出なくなりライヴを中断せざるをえなかったようですが、aikoさん自身最大・最長の27ヶ所45公演におよぶツアーを敢行中だったとのこと。無理をしないで、ゆっくり休んでほしいと思います。とにかくHappy Birthday!

 さて、昨日の続きです。
 夜。懐中電灯。シーツ。出産。「いつか必ず探しに来る。約束する。私の坊や」。ナワルは赤ん坊を抱いて泣く。
 帰っていく産婆。
 祖母「ナワル、出発の時間よ」ナワル「恐ろしいことが起きる気がする」。
 “ダレシュ”の字幕。装甲車。兵士たち。自動車と人であふれている街路。
 学校で学ぶナワル。
 「旧友のニヴ・コーエンから連絡があったが、力にはなれん。なぜならあの当時私はパリ第11大学で数学史を教えてた。どういう講義かというと、レオンハルト・オイラーが盲目ながら最初に数学的に解決を見いだしたことについて、有名な“ケ―ニヒスベルクの7つの橋の問題”だ。無神論を唱えるディドロにオイラーはこう言った。「閣下、“eiπ+1=0”、ゆえに神は存在する」。
「ニヴったらもう」。大学の受付で写真を見せ、「この女性をご存知の方は? 35年前ここの生徒でした。当時を知る人を紹介してください。遠くから来ました。女性の名はナワル・マルワン」。受付は取り次いでくれ、ナジャを紹介してくれる。
 ナジャ「見覚えがある。学生新聞の編集部にいたかもしれん。国を出た者は身元も変えてしまう。だが待てよ。この写真が撮られたのはクファリアットだ。見たまえ。これはクファリアットの印。南部にある監獄だよ。聞いたことは?」「ありません」「この国の人ではないという証拠だな。南部を知らんとは」。
 学生デモの写真の数々。鎮圧部隊の写真。「国際社会が今すぐ介入しないから、大量の難民が国境沿いのキャンプに押し寄せる。来たわよ」。
 「難民を脅かす社会民族党に私たち学生は反対します。彼らはキリスト教徒なのに、難民を弾圧しています。そのため難民も武装、国内のムスリムは彼らを支持しています」「でもあなたたちはキリスト教徒でしょ?」「宗教とは関係なく平和を求めます」。地響きを立てて進む装甲車。「ナワル! 大学が閉鎖された! 社会民族党が閉鎖したんだ。ナワル! ここにいろ」ナワル「シャルベル叔父さん、大学が封鎖!」「武力闘争になる。危険だ。私と一緒にいろ」。
 ラジオから流れるニュースの声。遠くから聞こえる銃声。「大学が攻撃されてる」「食事よ」。
 お祈りをし、食事を始めるナワルら。叔父「南部のキリスト教徒の村が襲われた。神よ、守り給え。大学も閉鎖されたし、じきここでも大きな混乱が起きる。騒ぎが収まるまでしばらく森へ避難しよう」末娘「どのくらい?」「明日出発しよう。親類たちも行っている」「でも学校は?」「近いうちに閉鎖される。いつ戻れるか……」ナワル「新聞は?」「心配するな。我々がいなくても当分無事だ」「守る人がいないと思想は絶える」「そうだな。ラフカ。その通りだよ」。
 「南部には孤児院が2つ、私は後から行く」叔母「南部へ行く気? 聞いたでしょ?じきに国中で混乱が起きる」「大学は崩壊よ。毎日あの子を思う。私の息子よ。捜しに行く」。叔母と抱擁するナワル。
 ナワル「水をもらいに行ってくる」「急いで戻れよ」「はい、叔父さま」。階段を降りて行き家出をするナワル。
 荒地を進むバスを写す俯瞰の画面。
 ナワル、バスから降りる。兵士に「夫と会うため」兵士「よろしい」。国境の橋を渡るナワルとすれ違う人々。兵士ともめる人々。荷台に人を乗せて出発するトラック。ヒッチハイクするナワル。(中略)
 破壊された村。「男の子はいないの?」老人「男子は3年前からクファリアットへ」「クファリアットは昨日攻撃されたわ」。
 荒野を歩くナワル。焼け落ちた家々。停車している車。煙。壁には銃弾の痕。「孤児院を探しています。どこですか?」「そこだよ」「子供たちは無事? どこにいます?」「わしは知らんよ。ムスリムの村人たちはデレッサのキャンプへ逃げた。キリスト教徒の報復を恐れてる」「子供たちを連れていったかも」「シャムセディンが難民の報復にキリスト教徒を皆殺しに」。泣き出すナワル。
 山道を歩くナワル。バスがやって来る。十字架のネックレスを隠し、髪をスカーフで包む。ナワル「デレッサに?」。しぶしぶ乗車を認める運転手。幼い娘と母。眠るナワル。目を覚ますと、運転手が外に出て、彼を囲む兵士に向って必死に何かを訴えている。運転手を射殺する兵士。バスにも銃弾による攻撃。数人は生き残る。兵士らははしごでバスの天井に上り、ガソリンをまく。ナワル、十字架のネックレスを示し、「私はキリスト教徒よ!」母は娘をナワルに託す。バスを乱射し、火をつける兵士たち。母の元へ走っていく幼い娘も射殺。激しく燃えるバス。(また明日へ続きます……)

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『灼熱の魂』その1

2018-11-21 05:33:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督・脚本の2010年作品『灼熱の魂』を見ました。
 荒地。兵士によってバリカンで頭を刈られる少年たち。顔にケガをした子や銃創のある子もいる。
 “双子”の字幕。ファイルの棚をチェックする公証人は「ナワル・マルワン」のファイルを取り出す。青年に「よく来てくれた。どうぞお座りください」。封筒の封を切る公証人。「“公証人ジャン・ルベルがナワル・マルワン夫人の遺言を執行する。子供2名の立ち合いで開封する。シモン・マルワンとジャンヌ・マルワンだ。” 彼女は私の従業員以上の存在だった。亡き妻と私には家族と同じだった。“資産は二人で分けること。葬儀は祈りはなし、裸でうつぶせに埋葬すること。墓石と墓石名はなし。名前は絶対に刻まないように。ジャンヌとシモンへ。子供時代はまるで喉に刺さるナイフのようで、容易には抜けなかった。ジャンヌ、ルベル氏があなたに封筒を渡す。あなたの父親宛ての封筒です。彼を見つけ封筒を渡しなさい。シモンにも封筒を渡します。これはあなたの兄宛てです。彼を見つけ封筒を渡しなさい。二人が自分の責任を果たしたら、3人へ向けての手紙を開封してもらいます。そのとき沈黙が破られ、約束が守られます。その時初めて私の墓に墓石が置かれ、名前が刻まれます”。変わった遺言ですね」ジャンヌ「父についてはご存知ね。兄がいないことも」「恐るべき内容です」シモン「母は変わり者だった」ルベル「遺言で作り話をする人はいない」。
「これもある。マルワン夫人のパスポートだ。よく考えてくれ。また後日」シモン「母はあなたの秘書で、まともに働いた。でも母としてはまともじゃなかった。普通に埋葬したい。せめて最期ぐらい」。シモン、去る。ルベル「よく考えてシモンが落ち着いたら話そう」。
 シモン「突然大家族になった。きっと犬もいるだろう。イカレてる。ジャンと普通の埋葬の手筈を整える。姉さんのことも心配だ。どこへ?」「好きにしなさい」「母さんが死んだ時、プールでそばにいなかったから自分を責めているのか? 僕は平気だ」「遺言を聞いたでしょ?」「母さんは死んだ。これで落ち着いた。やっと平和が! 心が軽くなった」「そのようね」。
 大学の数学の授業。助手として紹介されるジャンヌ。
 教授「直感でどう感じてる? 君の直感は正しい。それに数学者としての優れた素質がある。だがこの問題は助けが必要だ。向こうの親戚は?」首を振るジャンヌ。「連絡は?」首を振るジャンヌ。「要点は2つ。A:父は生きている B:君には兄がいる 避けられないものだ。抵抗してはならない。事実を知るべきだ。でないと心に平和は訪れない。心が平和でないと純粋数学はできない。踏み出さなくては」「父は内戦で死んだ。ダレシュで」「それは“未知定数”だ。未知定数から始めるな」「母はデルオムという村の出身。ダレシュ大学でフランス語を学んだ」「それで希望ができたな。サイード・アダール。サイード・アダールを訪ねろ。ダレシュで教えている信頼できる旧友だ」。
 部屋の引き出しを片っ端から調べ、若い頃の母の写真を見つけるジャンヌ。
 シモンが帰宅すると、机の上にその写真が置いてある。
 冬のプール。シモン。
 泳いでいる女性。頭を水面から出すと、夏のプールになっている。チェアに座ったまま意識を失っている母に「ママ、大丈夫?」・
 病院。シモンがやってくる。「ママに何かあったの? ジャンヌは?」
 母の既往症を訊く医者と答えるジャンヌとシモン。
 “ナワル”の字幕。岩場を逃げるナワルとワハブ。待ち伏せていた男「妹から離れろ」別の男「どこへ行く気だ? 難民の息子め」ナワル「二コラ、お願いだから止めて!」男、ワハブを射殺。ワハブの遺体を膝まずいて見るナワル。ナワルの兄「俺が撃つ。俺の義務だ。よくも一族の名を汚したな」。ナワルの頭に照準を合わせる。老女「おやめ! さっさと家に戻って!」。
 男たちを家から閉め出し、ナワルの祖母「何てことをしたの? 一族の名を汚した。年老いた母にあんたを殺せと言うの?」ナワル、泣きながら「お腹に子が。おばあちゃん」「ナワル、お前のせいでこの世から光が消えた! 恥知らず! いっそ殺してしまいたい。どうすりゃいいのさ?」祖母の膝に頭を乗せて泣くナワル。
 呆然と座っているナワルの祖母。(中略)
 横たわるナワル。祖母、食事を運び、「丈夫な子を産みたいなら食べて。この村にはいられない。手はずはすべて整えるから、子を産んだら村を出て、街へお行き。シャルベル叔父さんのところへ。街で大学に通うのよ。読み書きや知識を学び、こんな生活から脱しなさい。約束するなら手を貸す」「約束する。おばあちゃん」。
 爆撃を受ける村。大きなお腹をさするナワル。(明日へ続きます……)


 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S. 今から約30年前、東京都江東区で最寄りの駅が東陽町だった「早友」東陽町教室の教室長、および木場駅が最寄りの駅だった「清新塾」のやはり教室長だった伊藤達夫先生、また、当時かわいかった生徒の皆さん、これを見たら是非下記までお知らせください。黒山先生、福長先生と私が、首を長くして待っています。(また伊藤先生の情報をお持ちの方も是非お知らせください。連絡先は「m-goto@ceres.dti.ne.jp」です。よろしくお願いいたします。