私の作品の一つ皇帝ダリアの君にに出てくる、入江の先にある高台の家は友人のお母様のご実家です。先日、原稿を謹呈して、希望編の方を朗読会でご披露することをご報告いたしました。
その後
お手紙がきて、小説の感想と、ご自身の故郷での思い出が書かれてありました。そして、お若い頃の作品を中心に便箋に91ほどの句が、一つ一つ、美しい筆文字で書かれてありました。
17字で綴る洗練された言葉。白い紙に黒い墨文字。そして、文字を描くときに走らせる筆の軌跡、筆の動きがそのまま残っているのです。
私はあまりの素晴らしさに鳥肌がたちました。日本語の持つ力のすごさを感じています。私の描く文章などは、足元にも及びません。
そして手紙のさいごに書かれてあったのは
同室の息子とふたり冬に入る
という句でした。実は、友人夫婦は、友人の奥様のお母様とも一緒に家に呼んでみんなで暮らして入るのです。伊東にある高齢のお母様二人を介護ベッド付きのホテルにお連れして、奥様は奥様のお母様と、友人は友人のお母様と一緒の部屋で一泊したそうです。その時の様子を句にされたのです。友人夫婦の家族のあたたかさが感じられます。
紙の時代が終わるなどという人がいますが、
我々が日本人として生きていくのなら、これからも紙と筆の時代は続くと思いませんか。