バイデン米大統領の「二分法外交」、世界はさらに分裂した-
民主主義・人権に過度な使命意識
権威主義を対決の相手として把握
「プーチン、殺人者か」 との質問に「そうだ」
今月9日に開かれた民主主義サミットで
「悪」にされた中国との関係がさらに悪化
北京五輪の外交的ボイコットをめぐり
参加するかどうかによって米同盟国が二分
「年末が近づいているが、(バイデン)政権の考える外交政策上の最も大きな成果は何であり、最も大きな失敗であるアフガニスタンを通じて何を学んだか」
「あまりにも大きな質問だ。それについて考えてみる。大統領と話し合ってみる」
今月14日、ホワイトハウスの定例記者会見で「想定外の質問」が相次ぐと、弁の立つジェン・サキ報道官も即答できず思わず口ごもった。前任のドナルド・トランプ政権時代の混乱を克服し、「米国は戻ってきた」と宣言したバイデン政権が、この1年間に外交分野で収めた成果とは何か、という問いに言葉が詰まったのだ。
世界は長い間上院外交委員長と副大統領を務めた「外交専門家」であるジョー・バイデン大統領が、合理的なリーダーシップを発揮してトランプ時代の混乱を終わらせ、秩序を回復することを期待した。しかし、この1年間に見せた外交は、8月末のアフガニスタンからの軍撤退に象徴される「混乱の連続」だった。バイデン大統領が民主主義と人権に対して示す「過度な使命意識」が、かえって米国の足を引っ張っているという指摘が出ている。
バイデン大統領は就任直後の2月19日、ミュンヘン安保会議に参加し、現在人類は民主主義(democracy)と権威主義(autocracy)の「変曲点」(inflection point)上にいるとし、「ローマ(イタリア)からリガ(ラトビア)までの欧州連合(EU)のパートナーと共に働く」と表明した。しかし、米中の戦略的対立を「善悪の区分」が前提となっている民主主義と権威主義の対決としてとらえると、外交的妥協の余地はなくなってしまう。
バイデン大統領のこのような特性がよく表れている場面が、今年3月17日に「ABC」放送で行われた「衝撃的な質疑応答」だった。中国との競争に集中するには円満な関係を維持すべきロシアのウラジーミル・プーチン大統領について「政敵を殺す殺人者」かと尋ねた質問に対し、「そうだ」と答えたのだ。今月9~10日には、78億人が暮らす世界を参加国(44億人)と不参加国(34億人)に分けた民主主義サミットを開き、「変曲点」についての自身の信念を改めて強調した。「悪」にされた中国が激しく抗議し、米中関係はさらに悪化したが、米国が得た外交的成果は何なのか明らかでない。
民主主義サミットが「理念」の枠組みで世界を二つに分けたとすれば、北京冬季五輪に対する「外交的ボイコット」の方針は、米国と同じ船に乗った同盟国たちを二分している。
バイデン政権は6日、中国新疆地域の人権弾圧を理由に、北京五輪・パラリンピックには選手団を送るが政府代表団は送らないと発表した。その後、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、日本などが外交的ボイコットに加わると明らかにした。米国と密接な関係を結ぶ英米圏の秘密情報共有同盟「ファイブアイズ」の構成国と日本だけが応えたのだ。こうした状況をめぐり、米議会専門メディア「ザ・ヒル」は26日、外交的ボイコットが「制限された成功となるシグナルが見える」と指摘した。特に、今年9月のオーカス(AUKUS)発足でオーストラリアへの原子力潜水艦輸出の機会を逃したフランスは、「人権に対する懸念を浮上させるためにスポーツの競争を利用することに反対する」とボイコットへの不参加を宣言し、韓国も13日「外交的ボイコットは検討していない」(文在寅大統領)という意思を表明した。
ホワイトハウスは同盟国の食い違った選択に対し「決定は各自の特権」という反応を見せたが、韓国の立場としては、隣国日本が積極的に参加意思を表明した後なので、少なからぬ外交的負担を感じざるをえない。ジェフ・マークリー上院議員(民主党)は15日、議会での発言でフランスに向けて「長い間人権を擁護してきたのだから、ボイコットに参加せよ」と述べ、リチャード・ブルーメンソル上院議員(民主党)も「ザ・ヒル」に「中国が五輪を巨大な宣伝戦の勝利として活用するのを妨ぐことに、同盟国が我々より消極的なようで非常に心配だ」との見解を示した。米国の同盟国の団結不足は結局中国の利益になるという、非常に米国中心的な分析もある。ミシガン大学国際研究所のメリー・ギャラガー所長は「(外交的ボイコットは)どこに意見の相違があり、誰が米国側に立とうとしていないのかを、中国に見せつけている」と述べた。