朝鮮半島和平プロセス、水泡に帰すか…
文大統領にも「反転カード」なし
北朝鮮が20日に核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を再開する可能性を示唆したことについて、大統領府はひとまず状況を「綿密に検討している」との慎重な反応を示している。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権の成果として掲げてきた「朝鮮半島平和プロセス」が水泡に帰すのではないかと懸念する雰囲気も感じられる。
大統領府の高位関係者はこの日、朝鮮労働党政治局の会議の結果について公表しつつ、核実験とICBM発射の再開を検討するとの表明については具体的な言及なしに「最近の北朝鮮の一連の動向を綿密に注意深く検討している」と述べた。この関係者は続いて「今後の状況展開の可能性に備え、関連国と緊密に協議していく」と付け加えた。新年に入って相次いでいる北朝鮮の弾道ミサイル発射の際の反応と大きな違いはみられなかった。
大統領府はひとまず、北朝鮮が米国のジョー・バイデン大統領就任1周年に合わせて、「労働新聞」に核実験やICBM発射実験のモラトリアム(一時中断)の中止の可能性を公表したことについて、米国へのメッセージと解釈している。大統領府は、北朝鮮が「言葉」を「行動」へと移さないよう状況管理に注力するとみられる。ある北朝鮮の専門家は「政府は原則論的なメッセージを発しつつ、状況管理を続けていくとみられる」と述べた。大統領府は、今年の北朝鮮による相次ぐミサイル発射に対しては「挑発」などの敵対的な表現ではなく「強い遺憾」などの表現を使用し、対応の水準を抑制する姿勢を示してきた。
しかし大統領府内では、文在寅政権が力を注いできた「朝鮮半島平和プロセス」全体が揺らぎうると憂慮する声も少なくない。大統領府は2019年2月のハノイでの第2回朝米首脳会談の決裂後、南北米関係に進展がない中にあっても、朝鮮半島の状況が北朝鮮の核実験やICBM発射もなく安定的に維持、管理されているということを、それなりの成果として強調してきた。
文在寅大統領も、状況管理の他には現在の状況を変化させるだけのカードを持っていない。エジプトを訪問中の文大統領は、この日公開されたエジプトの公営新聞「アル・アフラム」の書面インタビューで「現在の状況を見ると、平和構築は容易ではないようと思える」とし「平和へと向かう道はまだ制度化されていないから」だと述べた。北朝鮮の政治局会議の結果が公表される前に行われたインタビューだが、最近の北朝鮮の動きなどを含む朝鮮半島情勢を考えると、終戦宣言など文大統領が任期末まで力を注いできた平和定着の努力が実を結んでいないという現実への複雑な心境を表したものとみられる。