韓国大統領選、反転した民意…
保守が隠したカードは候補一本化?候補交替?(1)
新年最初の大統領選挙状況分析
本紙の読者の皆さま、新年明けましておめでとうございます。
年が変わり、3か月後の大統領選に大きく近づきました。今週の政治舞台裏の話では、揺れ動く状況を分析し、どのような変化要因が残っているのかを探ってみます。
最近実施された世論調査のなかでは、私は全国指標調査(NBS、National Barometer Survey)の数値を主に参考にしています。全国指標調査は、エムブレインパブリック、Kステータスリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチの4社が共同で行う世論調査です。韓国内の通信3社が提供する携帯電話の仮想番号(100%)を利用し電話面談を行います。同じ内容で毎週実施するため、流れをみるには適切だというのが私の考えです。
12月30日に発表された12月第5週の大統領候補の支持率は、イ・ジェミョン候補が39%、ユン・ソクヨル候補が28%でした。前週の35%対29%からさらに広がり、イ・ジェミョン候補が誤差の範囲外でユン・ソクヨル候補をリードしました。
今回の調査結果を11月第2週と比較してみます。あえて11月第2週と比較する理由は、当時はユン・ソクヨル候補が39%、イ・ジェミョン候補が32%だったからです。2カ月も経たずにして大統領候補の支持率が正反対にひっくり返ったのです。一体、何が起きたのでしょうか(中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイトを参考)。
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首都圏・大田・忠清・世宗、逆転した民意
まず、11月第2週の調査結果を見てみます。イ・ジェミョン候補対ユン・ソクヨル候補の年齢別支持率は、19~29歳は24%対22%、30代は35%対28%、40代は44%対31%、50代は42%対40%でした。50代以下のすべての年齢層でイ・ジェミョン候補がリードしていました。
しかし、60代は25%対56%、70歳以上は21%対59%とユン・ソクヨル候補が大きくリードしていました。整理してみると、60代以上の高年齢層の圧倒的支持により、ユン・ソクヨル候補が勝っていました。
12月第5週も年齢層別の支持率の優劣は同じです。イ・ジェミョン候補対ユン・ソクヨル候補の支持率は18~29歳で26%対10%、30代で42%対18%、40代で58%対16%、50代で43%対33%でした。50代以下のすべての年齢層でイ・ジェミョン候補がリードしました。反対に、60代は30%対50%、70歳以上は31%対47%でユン・ソクヨル候補がリードしました。
整理してみると、全年齢層でイ・ジェミョン候補の支持率は少し上昇し、ユン・ソクヨル候補の支持率は少し下落しました。その結果、二人の支持率の合計が逆転したのです。
アン・チョルス候補は5%から6%と特に変化はありませんでした。シム・サンジョン候補は5%と横ばいでした。
興味深いのは、20~30代の有権者のうち、「支持候補なし」「分からない」や答えない「態度留保」の層が引き続き多いという事実です。11月第2週の「態度留保」は、18~29歳で31%、30代で26%でした。12月第5週には18~29歳は38%とむしろ増え、30代は20%に減りました。世論調査に応じながらも支持する大統領候補を明らかにしない人が多いことから、20~30代の有権者の投票者の意思は今もなお漂流中だということがわかります。
今度は地域別の世論を調べてみます。光州(クァンジュ)・全羅道、大邱(テグ)・慶尚北道、釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶尚南道での支持率は、11月第2週や12月第5週で大きな違いはありません。首都圏と大田(テジョン)・世宗(セジョン)・忠清道の民意はひっくり返りました。
イ・ジェミョン候補対ユン・ソクヨル候補は、ソウルでは11月の27%対39%から12月は36%対26%に変わりました。仁川・京畿道では、11月の33%対37%から12月は42%対27%に変わりました。大田・世宗・忠清道では、11月の26%対44%から12月は42%対29%に完全に逆転しました。
ソウルの民意の変化は、イ・ジェミョン候補が文在寅(ムン・ジェイン)政権の最大の失政である不動産という悪材料から抜けだすだろうという可能性を示すものです。歴代の大統領選で勝負を分けた忠清地域の民意の変化も尋常ではありません。ユン・ソクヨル候補の父親のユン・ギジュン延世大学名誉教授は、坡平尹(パピョン・ユン)氏の集姓村である忠清南道公州論山(コンジュ・ノンサン)の出身です。ユン・ソクヨル候補の浮上にともない「忠清待望論」をあおる人がいました。忠清道の民意が変わったことを見ると、忠清待望論は初めから実体のない蜃気楼だったようです。
理念性向別の民意も目を引きます。自らを進歩や保守だと答えた人の大統領候補の支持率は、特に変化はありませんでした。11月も12月も、進歩はイ・ジェミョン候補を、保守はユン・ソクヨル候補を強く支持しました。
ところが、自らを中道だと答えた人のイ・ジェミョン候補対ユン・ソクヨル候補の支持率は、11月の29%対39%から12月には38%対23%と逆転しました。中道層の民意がユン・ソクヨル候補からイ・ジェミョン候補に動き、イ・ジェミョン候補がリードし始めたとみなせるようです。(2に続く)
韓国大統領選、反転した民意…
保守が隠したカードは候補一本化?候補交替?(2)
首都圏、忠清、中道層の民意の変化
ユン・ソクヨル候補、アン・チョルス候補との候補一本化の余地あり
さらに支持率が下がる場合、候補交代論が出てくる可能性も
(1のつづき)
候補交替は可能?ここはダイナミックコリア
このような世論調査の結果について、イ・ジェミョン候補と与党「共に民主党」は、ひとまず差し迫った危機からは脱したとみなしている雰囲気です。年明け前に同程度にまで追いつけたことで、大統領選で競い合うことができるようになったという見通しだからです。安心する雰囲気とまではいきません。イ・ジェミョン候補がうまくやったのではなく、ユン・ソクヨル候補と野党「国民の力」の失態で得た反射利益だということです。イ・ジェミョン候補の支持率は30%台のボックス圏から動かない状況で、さらに上昇する余力がなく不安だというのが共に民主党の自己分析です。
国民の力の方はまったく異なる解釈をしています。まず、全国指標調査の数値自体を信じていません。電話面接方式であるため、野党がかなり低く出るという理由からです。国民の力の関係者は「自動応答方式で独自の世論調査をしてみると、ユン・ソクヨル候補がリードしていると出ている」と明らかにしました。さらに、「ユン・ソクヨル候補の支持層が無応答層になったり、アン・チョルス候補に少し移ったりはしたが、うまく説得すればいくらでも戻せる」と自信を示しました。
このような分析をもとに、3月9日の選挙に決定的な影響を及ぼす可能性のある主な変化要因はどのようなものかを取り上げてみます。
一つ目に、20~30代の有権者の選択です。
先に述べた通り、20~30代の投票者の心理は流動的です。彼らがどちらか一方に傾けば、今回の大統領選の勝負を決定づける可能性もあります。イ・ジェミョン候補は、最近の選挙運動の焦点を20~30代に合わせています。ユン・ソクヨル候補と国民の力も20~30代の重要性を知らないわけではありません。しかし、20~30代を引き寄せられるノウハウは、イ・ジュンソク代表とホン・ジュンピョ議員が持っています。ユン・ソクヨル候補がイ・ジュンソク代表やホン・ジュンピョ議員と和解できなければ、大統領選の勝利は難しいだろうという診断の根拠は、まさにそこにあります。
二つ目に、ユン・ソクヨル候補とアン・チョルス候補の一本化です。
ユン・ソクヨル候補がアン・チョルス候補と連帯すれば、大統領選の勝利の可能性はかなり高くなります。昨年4月7日のソウル市長補欠選挙では、オ・セフン候補がそのようにして勝利しました。少し昔のことですが、1997年の金大中(キム・デジュン)元大統領とキム・ジョンピル元首相のDJP連帯の事例があります。新政治国民会議と自由民主連合の合意文にはこのような内容が含まれていました。
「単一化された候補が大統領選で当選した場合、共同政府の首相は自由民主連合が担当することとする。共同政府で大統領は、現行憲法の内閣制的な要素を守り、首相に実質的な閣僚の任命提案権を与え、首相の解任建議権を尊重する」
「閣僚の任命は両党が同等な割合として、両党以外の勢力の招聘は両党の合意がなければならなず、必要な場合は両党が同じ割合でそれに対する持分を割くこととする」
ユン・ソクヨル候補とアン・チョルス候補がこのような合意をできない理由はありません。二人の連帯は、ユン・ソクヨル候補から離脱した支持層を再び集める効果もあるはずです。
1997年の大統領選挙を前にして、新韓国党のイ・フェチャン総裁と民主党のチョ・スン総裁が手を結んだ「イ・チョ連帯」の事例が参考になります。当時、二つの政党が合併しハンナラ党が誕生しました。息子の兵役不正疑惑により支持率が下落したイ・フェチャン候補は、イ・チョ連帯を機に上昇の勢いに乗り、実際の選挙ではわずか1.53ポイントの差で敗北しました。選挙がほんの一週間先だったとすれば、イ・フェチャン候補が当選したかもしれなかったわけです。保守派の有権者には、イ・フェチャン候補を再び支持する名分がそれほど切実だったのです。
三つ目に、候補交代論です。
今は可能性がほとんどないように思えますが、もしユン・ソクヨル候補の支持率が今よりさらに下がり、誰が見ても大統領選の敗北が確実になるとすれば、どうなるのでしょうか。国民の力の党員たち、いや保守勢力全体が立ち上がり、ユン・ソクヨル候補を交代させようとするでしょう。そんなはずはないですって?ここはダイナミックコリアです。常に想像以上の事件が起こる所です。
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最後まで終わりは見えない
振りかえってみると、1997年のイ・インジェ候補、2002年のチョン・モンジュン候補、2012年のアン・チョルス候補の突風の出発地点が、まさに候補交代論でした。イ・インジェ候補はイ・フェチャン候補の代案として、チョン・モンジュン候補は盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補の代案として、アン・チョルス候補は文在寅候補の代案として浮上したのです。
現行の公職選挙法は、「選挙戦で候補者として選出されていない者は、当該選挙の同じ選挙区に候補者として登録できない。ただし、候補者に選出された者が辞退、死亡、被選挙権の喪失または党籍の離脱・変更などにより、その資格を喪失した場合は当てはまらない」と規定しています。
ユン・ソクヨル候補が辞退したり党から追いだされるとすれば、ホン・ジュンピョ氏やユ・スンミン氏、ウォン・ヒリョン氏など他の人に出馬の道が開かれることになるのです。今こそ政治の季節です。