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中国労働法と日本労働法との違い、ちょっと調べてみました。

2015-12-26 | 東アジアの文化と歴史を学ぶ会
中国労働法と日本労働法との違い

 
 
 中国では、1995年1月1日から中華人民共和国労働法が施行されており、基本的には 日本の労働法(正確には、日本には労働法という名称の法律はないので、労働基準法、 労働関係調整法、労働組合法などのことです)とあまり変わらないようですが、下記のよ うな相違点もあります。また、日本では法制度の内容は全国どこでもほぼ同一ですが、 中国では省が国のようなもので、法制度が地域ごとに異なるのも中国の特徴です。
 
1.労働時間の基準
 日本の労働基準法とほぼ同じ内容で、労働時間は1日8時間以内、週平均44時間以内 (現実には多くの地域で条例などにより週40時間以内)、休日は週1日以上、1年以上勤 務した労働者には年次休暇を与える(現実にはまだ実施されていない地域が多い)となっています。
第36条 国家は労働者の1日の労働時間が8時間を越えず、週平均労働時間が44時間を越えない労働時間制度を実施する。
第38条 使用者は労働者に毎週少なくとも1日の休日を保障しなければならない。
第45条 国家は年次休暇制度を実施する。連続して1年以上勤務した労働者は年次有給休暇をとることができる。具体的な規則は国務院が制定する。
2.試用期間の具体的規定
 日本の労働基準法では、試用期間を直接的には規定していませんが、中国の労働法では、直接規定しています。
第21条 労働契約には試用期間を定めることができる。試用期間は最長6ヶ月を超えてはならない。
 実際には、地区ごとに条例などで細かく規定されているようです。
 例)上海市労働契約条例 第13条
   労働契約では、試用期間を約定することができる。
   労働契約が6ヶ月に満たない場合は試用期間を設けてはならない。
   労働契約が6ヶ月以上で1年に満たない場合、試用期間は最長1ヶ月を超えてはな らない。
   労働契約が満1年以上で3年に満たない場合、試用期間は最長3ヶ月を超えては ならない。
   労働契約が満3年以上の場合、試用期間は最長6ヶ月を超えてはならない。
3.労働契約の期間
 日本では期間を定めない労働契約(正社員)が原則ですが、中国では期間の定めがある労働契約が原則です。同じ使用者のもとで10年間勤務した場合には期間の定めのない契約への転化を求めることができるとなっています。
第20条 労働契約の期間は、期間の定めのあるもの、期間の定めのないもの、一定業務完成期間のものに分けられるものとする。労働者が同一の使用者のもとで勤続満10年以上に達し、かつ当事者双方が契約の延長に同意した場合に、労働者が期間の定めのない労働契約を締結することを提示した場合には、期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。
4.時間外労働時間数の規定
 日本の労働基準法では、時間は定められていません(通達による限度時間はあります)が、中国の労働法は具体的に時間を定めています。
第41条 使用者は、生産経営の必要により、労働組合及び労働者と協議した上で、労働時間を延長することができる。この場合、通常1日1時間を越えてはならない。特殊な理由により労働時間を延長する必要がある場合には、労働者の健康を保障する条件の下で、1日3時間を越えない範囲で延長することができる。但し、1ヶ月当たり36時間を越えてはならない。
5.時間外労働、休日労働の割増賃金額
 日本の法律では、時間外割増25%以上、休日割増35%以上となっていますが、中国の時間外手当等は、日本に比べて非常に高くなっています。(3)の法定休暇日とは、元旦、春節、メーデー、国慶節など法律で定めた休暇・祭日のことです。
第44条 下記のいずれかに該当する場合には、使用者は下記の支払基準に従い、労働者の通常の時間給を上回る報酬を支給しなければならない。
   (1)労働者に勤務時間を延長させる場合、賃金の150%を下らない報酬を支給する。
   (2)休日に勤務させ、代休を与えることができなかった場合、賃金報酬の200%を 下らない報酬を支給する。
   (3)法定休暇日に労働者を勤務させた場合、賃金の300%を下回らない報酬を支給する。
6.秘密保持契約の規定
 日本の労働基準法には秘密保持契約についての規定はありませんが、中国では転職に違和感がないので、労働法に、使用者は労働者に対して秘密保持契約を定めることができるという規定があります。中国では、法律にこうした規定がある以上、きちんと契約に盛り込まないと、労働者の秘密保持義務を追及できなくなります。
 中国の労働者の意識は日本人よりも欧米人に近いようで、個人主義的で企業への忠誠心は低く、権利意識が強いという意識の違いがあるようですので、秘密保持契約もしっかりと結ばないといけませんし、労働契約には試用期間、職責・職務などを明瞭に記載し
なければなりません。
第22条 労働契約の当事者は、労働契約の中に、使用者の業務上の秘密の保護に関する事項を約定することができる。
7.社会保険制度 
 すべての企業と労働者は社会保険に加入し、労働契約には必ず法定の社会保険及び福利厚生事項を明記しなければなりません。法定の社会保険には、養老保険、医療保険、労災保険、失業保険(農民戸籍者は免除)、出産保険、(地区により住宅積立金)があり、保険料は日本よりずっと高く会社負担分は給料の約50%にもなります。
第73条 労働者は、下記のいずれかに該当するときは法に従い社会保険の給付を受ける。
   (1)定年退職
   (2)疾病、負傷
   (3)業務上の負傷、障害又は職業性疾病
   (4)失業
   (5)出産
8.出産休暇
 日本の労働基準法では、出産休暇は産前42日・産後56日となっていますが、中国の労働法では、出産休暇は90日以上となっています。難産の場合は15日、高齢出産の場合は44日加算するなど各地で補充規定が設けられています。その他、晩婚政策、一人っ子政策を補助するための細かい制度などもあるようです。
第62条 女性労働者は、出産に当たり少なくとも90日の休暇をとることができる。
 

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