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ク旅団長は「ノ元司令官が私にこのようなことをさせて、身動きが取れないようにしたのではないか疑わしい」とし、「私を切迫な状況に追い込もうとしたようだ」という趣旨で検察に陳述したという。

2025-02-20 | 韓国戒厳令関係
 

「戒厳の黒幕」元情報司令官、進級をちらつかせ戒厳軍を掌握

登録:2025-02-20 06:34 修正:2025-02-20 09:34
 
ノ元司令官、キム前国防部長官との親交を誇示し将官らに接近
 
 
ノ・サンウォン元情報司令官が24日朝、ソウル恩平区のソウル西部警察署からソウル中央地検に送致されている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 12・3非常戒厳を企画した一人とされるノ・サンウォン元情報司令官が、将官や佐官級の将校たちにキム・ヨンヒョン前国防部長官との親交を誇示し、進級時に影響力を行使できると言って接近したことが分かった。予備役の民間人であるにもかかわらず、ノ元司令官が戒厳当時、現役の情報司令部要員を陣頭指揮できたのもそのためだったことが明らかになった。

 18日のハンギョレ取材の結果、ノ元司令官は非常戒厳宣布の数カ月前から、進級を媒介に現役の情報司令部の要員などに接近していたことが確認された。ムン・サンホ前情報司令官は昨年の検察での取調べで「2024年11月末に将官人事があったが、キム・ボンギュ大佐は今年(2024年)が将官になる適期であり、チョン・ソンウク大佐は2年後が将官への進級対象だった。ノ元司令官が私を通さずに2人に進級をエサに(戒厳関連任務を)指示した」と供述したという。情報司所属のキム・ボンギュ大佐ととチョン・ソンウク大佐は戒厳2日前、京畿道安山(アンサン)のロッテリアで、ノ元司令官と選管委の掌握などを事前に謀議したという疑いが持たれている。ムン前司令官はまた、ノ元司令官が自身にも「次は合同参謀本部の情報本部に行くべきではないか、と言ってきた」というなど、進級に影響力を行使できるという趣旨の発言もしたという。ただし、ムン前司令官は「あえてそのようなポストに行きたいと思わなかったため、耳を貸さなかった」とし、これといった対応をしなかったという趣旨で陳述したという。

 チョン大佐は自身がノ元司令官の「進級のエサ」に釣られたことを認めた。チョン大佐は「ノ元司令官が数回にわたり進級の話を持ち出し『私が口添えしてあげる』と言いながら、自分に仕事をさせた」とし、「進級したいという欲が出て、指示に従わざるを得なかった」と陳述したという。チョン大佐は昨年6月、情報司機密流出事件で職務排除命令を受けるなど、今後の進級が難しい可能性がある状況だった。キム大佐もノ元司令官から「私が旅団長になり、チョン・ソンウク情報司令部大佐が(後任の)旅団長になってほしい、(進級のため)努力してみる」と言われたとし、「当時は単なる励ましの言葉だと思った」という趣旨で供述したという。ノ元司令官はキム前長官が国防部長官に任命された後から「龍山(ヨンサン=大統領室)に行ってきた」と言うなど、キム前長官との親交を強調してきたという。

 ノ元司令官は戒厳が維持された場合、「第2捜査団」の団長に内定したク・サムフェ陸軍2機甲旅団長にも進級を媒介に接近した。ノ元司令官は昨年3~4月、ク旅団長が3次進級審査に落ちると、9年ぶりに連絡してきて「お前がなぜ進級できないのか調べてみる」としたうえで、「進級できない理由はパワハラ」だとし、積極的に疎明すると提案した。昨年9月、キム前長官が就任してからは、連絡の回数はさらに増えた。ノ元司令官は「私が積極的に釈明し、長官に推薦する」と提案したが、昨年10月には「大統領室の公職綱紀(秘書官側)でお前の資料を握って(進級を)止めている。5枚(500万ウォン)だけ用意して送れ」と要求した。ク旅団長は悩んだ末にノ元前司令官の要求に応じたが、結局進級には失敗した。ク旅団長は「ノ元司令官が私にこのようなことをさせて、身動きが取れないようにしたのではないか疑わしい」とし、「私を切迫な状況に追い込もうとしたようだ」という趣旨で検察に陳述したという。

カン・ジェグ、チョン・ヘミン、ペ・ジヒョン、クァク・チンサン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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「物価高騰が続き、国民が苦境に追い込まれているもとで、軍事費の突出ぶりを異常だと思わないか」とただしました。石破氏は冒頭の答弁とともに「軍拡などという意識を持ったことは一度もない」

2025-02-20 | 自民党の常識は、国民の非常識

2025年2月20日(木)

しんぶん赤旗 主張

軍事費の首相答弁

大軍拡を異常と思わない異常

 

 「私どもはこれを軍拡だと全く思っていない」。17日の衆院予算委員会で石破茂首相の驚くべき答弁が飛び出しました。日本共産党の志位和夫議長の質問に対してです。

 志位氏は、国会で審議中の2025年度予算案について、軍事費(デジタル庁計上分除く)が前年度当初予算比で9・5%増となっているのに対し、社会保障費は1・5%増、文教・科学振興費1・4%増、中小企業対策費0・1%増などと、暮らしの予算はどれも前年物価上昇率の2・7%に追いつかない実質マイナスであることを指摘しました。その上で「物価高騰が続き、国民が苦境に追い込まれているもとで、軍事費の突出ぶりを異常だと思わないか」とただしました。

 これに対し石破氏は冒頭の答弁とともに「軍拡などという意識を持ったことは一度もない」などと述べたのです。

■GDP比2%超も

 25年度予算案の軍事費は8兆7005億円に上ります。22年末に閣議決定された「安保3文書」で23~27年度の5年間で43兆円の軍事費をつぎ込むとした大軍拡計画に基づくものです。これにより22年度当初予算で5兆4005億円だった軍事費はわずか3年間で3兆3000億円も増え、年平均で1兆1000億円もの増額になっています。

 第2次安倍晋三政権が発足した12年度の軍事費は当初予算で4兆7138億円でした。その後、22年度までの10年間の増加額は6867億円、年平均で687億円です。23年度以降の増加がいかに異常かは一目瞭然です。志位氏が「この異常な予算を異常と言えないあなたが異常だ」と批判したのは当然です。

 志位氏は、日米首脳会談(7日)の共同声明で石破氏が「2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していく」と約束したことを「極めて重大だ」と述べました。これは、安保3文書の一つ、「防衛力整備計画」が、27年度以降、防衛力を「安定的に維持」するとしているのを「抜本的に強化」するへと変えるものです。「国会にも諮ることなく、閣議決定すら行わずにアメリカに約束する。許しがたいこと」(志位氏)です。

 3文書は、27年度までの5年間で軍事費を国内総生産(GDP)比1%から2%に倍加するとしています。志位氏が「27年度以降、2%を超えることは絶対ないと言明できるか」と追及したのに対し、石破氏が「必要であれば2%を超えることはある」と述べたことは看過できません。

■暮らしと平和破壊

 石破氏は「いかにわが国の独立と平和、国民の生命・財産を守るかということの結果として(軍事費の)数字が出てくる」とか、「(自衛隊の装備は)他国を侵略するようなものにはなっていない」と言い訳しました。

 しかし、軍事費の膨張で暮らしの予算が圧迫され、25年度予算案では、がんや難病患者らの命を脅かす高額療養費の負担引き上げなどが狙われています。大軍拡計画で大量に導入されようとしている兵器は、他国の領土を攻撃できる長射程ミサイルです。

 暮らしも平和も壊す予算案は抜本組み替えが必要です。

 

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日本国内のヘイト・差別問題を追跡してきたジャーナリストの安田浩一さんはハンギョレに、「日本の差別主義者の第一の標的は、かつては在日韓国人だったが、中国人、クルド人へと移ってきている」と指摘した。

2025-02-19 | あらゆる差別を許さない
 

「彼らのカメラが恐怖」…日本の差別主義者に狙われるクルド人

登録:2025-02-19 00:53 修正:2025-02-19 07:4
 
 
昨年9月、埼玉県の蕨駅そばで、一部の日本人極右人種差別主義者たちが、同地域に居住する在日クルド人たちを標的としたヘイトデモをおこなっている=安田浩一さん提供//ハンギョレ新聞社

 「彼らに写真を撮られる時、まるで銃を向けられているように恐怖を感じます」

 今月4日、日本の首都圏に位置する埼玉県の蕨のあるレストランでハンギョレの取材に応じたクルド人の市民はこう語った。会話中も周囲を見回して警戒が緩められない様子から、彼が感じている恐怖が伝わってきた。蕨は東京の中心部から直線距離で20キロほどの地域だ。この地では最近、ごく少数の日本人差別主義者がクルド人を集中的に狙って、深刻な「ヘイト行為」をおこなっている。

 この地域で働いたり暮らしたりしているクルド人の様子を無断で動画や写真に撮り、「不法滞在者」、「犯罪者」というレッテルを貼ってインターネットにあげるのだ。「犯罪組織とかかわっている」とか「この地域では殺人事件が相次いでいる」という事実無根の主張だけでなく、「クルド人が日本を占領しようとしている」というとんでもないうわさまで広めている。生徒や子どもも彼らの「標的」だ。商店に買い物に行く子どもの写真を撮って、「店で物を盗んでいる」という「フェイクニュース」をSNSで拡散したりもする。地域の役所に無差別に電話をかけ、「クルド人を追い出せ」、「なぜクルド人に税金を使うのか」などと言って業務を困難にし、「これらはすべてクルド人のせい」だとの認識が抱かれるよう誘導したりもする。

 この日訪ねた蕨は、平凡なクルド人と日本人が仲良く暮らす静かで平和な空間だった。しかし同地は、差別主義者が集会を行うたびに「ヘイトスピーチ」が飛び交う無法地帯となる。彼らは月に1、2回、日の丸と旭日旗を掲げて「自爆テロ団体を支援するクルド協会は日本から出て行け」、「日本人殺害を予告したクルド人を逮捕せよ」などと記された横断幕を手に騒動を繰り返している。抗議するクルド人たちと激しい言い争いが生じることもある。ヘイトデモを主導する人々は、かつて在日コリアンや中国人に対してヘイトスピーチをおこなっていた人々だという。刑事処罰されるような違法行為は表沙汰にならないため、警察はほぼ彼らを止めない。それでも有志の日本人が自発的に立ち上がり、外国人ヘイトデモを身をもって防ぐ「カウンター(対抗活動)」でクルド人を支援している。

 ヘイト集会を主導しているのは10人前後に過ぎないが、彼らの主張はオンラインで再生産され、根拠のない外国人ヘイトを拡散させている。特にユーチューブとSNSは、差別主義者たちが在日クルド人に関するフェイクニュースを広める温床になっている。「自分の国に帰れ」といったヘイト表現だけでなく、「クルド人を狩ろう」のような残忍な発言もためらわない。悪質なユーチューバーがクルド人の経営する飲食店に押しかけ、無分別に動画を撮ったり、蕨の街中で根拠もなくクルド人を非難しながら「生中継」したりすることもある。

 クルド人は「国を持たない最大の単一民族」として有名だ。現在はイラン、イラク、シリアなどの中東地域に3300万人あまりが互いに異なる国籍を持って散り散りに暮らしていると推定される。トルコには1700万人ほどが住んでおり、中東各国はクルド人の分離独立の動きを極度に警戒している。

 クルド人が日本の埼玉県に本格的に移住しはじめたのは1990年代初めごろ。クルド人を異邦人扱いして差別が激しかったトルコからは、特に多くの人が渡ってきた。日本の短期滞在ビザ免除制度を利用して蕨に定着し、その後、「難民認定」を要求しながら暮らしてきた人が多い。言語が似ているイラン人がすでに定着している地域だったため、手助けを受けることができたことが、多くのクルド人が蕨に定着した要因のひとつだ。東京近郊であるため仕事があり、しかも物価が安いことが理由でもある。彼らの多くは、日本人が避けたがる建物の解体や廃棄物処理などの、きつい仕事に従事している。彼らは「東京近郊の建物解体の70%ほどは外国人労働者が担っていると思う」と語る。

 しかし差別主義者たちは、クルド人の運転する廃棄物を積んだトラックを「クルド自動車」、「違法車両」などと蔑視するという。韓国人、中国人に対しておこなっていた露骨な差別をクルド人に対して繰り返しているのだ。蕨市の総人口は7万5千人ほどで、うちクルド人は2千人あまりと推定される。極右差別主義者は力なき少数民族を攻撃している。

 クルド人がこの地域に集団居住しだしてから30年以上がたっているが、差別主義者の「標的」にされはじめてからはまだ2年もたっていない。匿名の別のクルド人市民は「突然差別が起きたことに、特別な理由はない」と言って、もどかしい胸の内を打ち明けた。

 推定される契機は2023年6月の、連立与党を組む自民党と公明党が主導して可決させた「改正出入国管理法」だ。改正法は、難民認定審査中の外国人に対しても3回目の申請からは強制送還を可能にするという内容が骨子となっている。野党第一党の立憲民主党が「法案が可決されれば(難民申請者が)本国で投獄、拷問、虐殺される」、「命を奪う法案に反対する」として国会でもみ合いにまでなったが、可決され、同法は昨年6月に施行された。

 改正法は内容そのものが問題だっただけでなく、別の深刻な問題を生んだ。日本社会で特に注目されることなく暮らしていたクルド人が改正出入国管理法の処理過程でマスコミに取り上げられたことで、差別主義者たちの「餌食」となってしまったのだ。2023年7月に起きた蕨でのクルド人同士のけんかが、火に油を注いだ。産経新聞がこの事案を扱った際に「トルコ国籍のクルド人の多くは祖国での差別や迫害などを理由に日本で難民申請しているが、認定された人はほとんどおらず、不法滞在の状態が続いている人も少なくない」と大々的に報道したのだ。

 クルド人を支援する日本人の団体も攻撃の対象となっている。市民団体「在日クルド人と共に」には、電子メールで毎日のように「クルド人のせいで治安が悪化している」などとしてクルド人排斥を意味する脅迫や暴言が送られてくる。警察への通報もあまり役立っていない。ほとんどのメールは発信地が分からないようにしてあり、郵便で届いた手紙も偽の住所と名前が記されているのだ。出所が一部確認されたとしても、「特定の人物」ではなくクルド人という「民族」を丸ごと非難するものであるため、刑事処罰までには至っていない。

 ごく少数の人種差別主義者が繰り広げる差別行為は、クルド人の日常へと広がっている。匿名のあるクルド人は「甥が学校で同じクラスの子たちに『クルド人は帰れ』と言われた。多くのクルド人が『今日はインターネットに自分の写真が載せられるのではないか』と心配している」と吐露した。

 さいたま地裁は昨年11月、在日クルド人団体が申し立てていた「事務所近隣でのヘイトデモ禁止」の仮処分を認容したが、状況はあまり変わっていない。在日クルド人からなる「日本クルド文化協会」は、協会事務所そばで行われた人種差別主義者のデモに関連して、ヘイトスピーチに当たる行為をおこなった男性に対し、活動の禁止と550万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こしたことを今月12日に明らかにした。同協会のチカン・ワッカス代表は「日本国内の少数民族と外国人が安心して暮らせる社会を目指したい」と語った。

 日本政府に対し差別禁止法の制定を求める声や、地方自治体に対し条例の制定を求める声もあがっている。東京都はヘイトスピーチを禁止する条例を2019年に施行している。ただし処罰条項がないため、実効性に乏しいという批判を浴びている。在日同胞に対するヘイトスピーチが深刻だった川崎市は、2020年にヘイトスピーチに対して最高50万円の罰金を科せる条例を施行し、一定の効果をあげている。

 日本国内のヘイト・差別問題を追跡してきたジャーナリストの安田浩一さんはハンギョレに、「日本の差別主義者の第一の標的は、かつては在日韓国人だったが、中国人、クルド人へと移ってきている」と指摘した。安田さんは「被害をこうむる民族は変わりうるが、フェイクニュースで結局は誰かがヘイトの被害をこうむるという構造そのものは変わらない。ヘイト行為を根本的に防ぐ制度的装置が早急に求められている」と語った。

 
 
昨年9月、埼玉県の蕨駅そばで、一部の日本人極右人種差別主義者たちが、同地域に居住する在日クルド人たちを標的としたヘイトデモをおこなっている=安田浩一さん提供//ハンギョレ新聞社
 
蕨(埼玉)/ホン・ソクジェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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結婚する2人とも人格的利益、アイデンティティーが守られる「個人の尊厳と本質的平等」(憲法24条2項)に立脚した制度である選択的夫婦別姓制度の早期導入を迫りました。

2025-02-19 | なるほど、その通り

2025年2月19日(水)

選択的夫婦別姓実現早く

個人の尊厳と本質的平等へ 本村氏が主張

衆院予算委

写真

(写真)質問する本村伸子議員=18日、衆院予算委

 日本共産党の本村伸子議員は18日の衆院予算委員会で、結婚する2人とも人格的利益、アイデンティティーが守られる「個人の尊厳と本質的平等」(憲法24条2項)に立脚した制度である選択的夫婦別姓制度の早期導入を迫りました。

 本村氏は「新しい姓で呼ばれ、自分でないような気がして精神的不調をきたした」など、新日本婦人の会のアンケート調査(1月公表)に寄せられた声を紹介。「名字が変わることによる苦しみ、違和感、喪失感の根源に何があるか」「氏名が、人が個人として尊重される基礎であり、人格権、人権の問題だからでないか」とただしました。

 鈴木馨祐法相は、2015年の最高裁判所の判決をひき「婚姻の際に氏の変更を強制されない自由が人格権の一内容とはいえない」と強弁しました。

 本村氏は同判決について、元最高裁判事の泉徳治氏が「個が見えない」「個人の尊厳がまず最初に来るべき」だと批判したことをあげ、女性差別撤廃条約を無視し、憲法から個人の権利を導き出そうとしていない判決と指摘しました。

 さらに、現行制度で姓を変えるのは95%が女性で、「生まれ持った氏名にかんする人格的利益を失い、不平等状態に置かれるのは圧倒的に妻側だ」と指摘。男女不平等の固定と再生産につながるとただしました。三原じゅん子こども政策担当相は「幅広い国民の理解を得る必要がある」と従来の主張を繰り返しました。 本村氏は、法相の諮問機関の法制審議会が選択的夫婦別姓の民法改正要綱を答申して29年たつとして、その間に「人格的利益が失われている人が次々と生まれているのに、放置し続けている」と批判。選択的夫婦別姓の速やかな実施を重ねて要求しました。

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 ウクライナ戦争の終結に向けた交渉が朝鮮半島と世界をどのように変えるかについて、重要と思われる5つの質問をまとめてみた。

2025-02-17 | なるほど、その通り
 

ウクライナ戦争終結に向けた交渉が

世界と朝鮮半島に投げかける5つの質問

登録:2025-02-17 06:38 修正:2025-02-17 07:35
 
 
第1次トランプ政権時代の2018年7月16日、ドナルド・トランプ大統領とウラジーミル・プーチン大統領がフィンランドのヘルシンキで会談した時の様子=ヘルシンキ/AFP・聯合ニュース

 ウクライナ戦争の終結に向けた終戦交渉が、戦争勃発から3年で幕を開けた。米国のドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が12日(現地時間)、電話で交渉の開始に合意した。トランプ政権の高官で構成された代表団が数日以内にサウジアラビアでロシアとウクライナ関係者たちと交渉を始める予定だ。米国メディアが15日付で報道した。

 24日はロシアがウクライナに侵攻してからちょうど3年になる日だ。この戦争がどのように終わるかによって、国際秩序が完全に変わる可能性がある。トランプ大統領とプーチン大統領は、欧州とウクライナの立場を排除し、「大国同士の直談判」で戦争を終わらせるという方針を明らかにしており、中国もこれに参加するという意思を示している。大国が力で国際秩序を主導する「新帝国主義」時代に入ったという分析もある。

 ウクライナ戦争の終結に向けた交渉が朝鮮半島と世界をどのように変えるかについて、重要と思われる5つの質問をまとめてみた。

■トランプとプーチンの終戦タイムテーブルは

 交渉が始まる前に、米国はすでにロシアに圧力を加えるカードを放棄した。ロシアが掲げた終戦条件は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めないこと▽ロシアの東部ウクライナ占領地を認めること▽ウクライナ内の「ロシア人の保護」▽ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の退陣などだ。

 トランプ大統領とピート・ヘグセス米国防長官は、ウクライナのNATO加盟を認めず、ロシアの占領地も認めるという立場をすでに表明した。ウクライナがNATOへの加盟を図ったことで戦争が起きたというロシアの立場も支持した。米国がロシアに一方的に有利な交渉の場をあらかじめ作ったわけだ。「大国同士の取引」で解決を図るトランプ大統領の外交原則と、苦労してロシアから譲歩を引き出すよりは、簡単にウクライナを力で屈服させることで、できるだけ早く戦争を終わらせるという方針が反映されたものとみられる。

 ロシアの外交筋たちは「戦争が長期化するほど、ウクライナは不利になるだけ」だとして、表向きには余裕綽々な態度を示している。ロシアは特に、ゼレンスキー大統領とは交渉せず、ウクライナが新たに大統領選挙を行った後、新大統領と終戦交渉に署名することを米国に求めている。建前としては、昨年5月に任期が終わった後、戦時との理由で引き続き政権を握っているゼレンスキー大統領には、交渉の資格がないという点を掲げているが、本音は、戦争の敗北による混乱のさなか、ウクライナで親ロシア勢力が結集し、ロシアにより友好的な政府ができることも期待しているものとみられる。

 韓国国防研究院韓半島安保研究室のドゥ・ジンホ研究委員は「米国もロシアが求める『ゼレンスキー退陣』に賛成しているものとみられる」とし、「ロシアは自分たちの要求条件を最大限貫くため、余裕のある態度を示しているかもしれないが、来年米国の中間選挙で反トランプ勢力が結集し、ロシアにとって良いチャンスが消えるかもしれないという点を考え、できるだけ年内には終戦交渉を終わらせようとするだろう」と見通した。

■北朝鮮派兵とロシアの密着の行方は

 北朝鮮は昨年10月以降、約1万1千人の兵力をロシア西部のウクライナ占領地であるクルスク戦線に送り、このうち約4千人の死傷者が出たものと推定される。ロシアの消息筋も、クルスク戦線に北朝鮮軍を投入したことは否定しておらず、北朝鮮軍が戦線でロシアに大きな助けにはならなかったとみている。

 クルスクは終戦で非常に重要な地域であり、北朝鮮軍の撤退問題が終戦協定の主な議題になる可能性が高い。米国が最近、ロシアのクルスクを含むすべての最前線から50キロメートル離れた地域まで、北朝鮮軍兵力を完全に撤退させることをロシアに求めたという主張もある。最近、戦線で北朝鮮軍が見当たらないという情報が流れているのは、ロシアが米国に友好的なシグナルを送り、交渉環境を作るために北朝鮮軍を最前線から撤退させるカードを活用している可能性がある。

 しかし、専門家らは昨年6月に締結された「包括的戦略パートナーシップ条約」に基づく朝ロの緊密な関係は、ウクライナ戦争が終わった後も長期的に続くとみている。

 ドゥ・ジンホ研究委員は「ロシアのユーラシア戦略で北朝鮮はすでに重要なカード」だとし、「ロシアは『核を保有する北朝鮮』に影響力を行使して米国のインド太平洋戦略に対応し、今後展開される朝米交渉などでロシアが仲裁者の役割を果たしたり、朝米中ロ4者会談や朝米ロ会談などを進める可能性もある」とみている。朝鮮半島の状況を管理するためには、韓国もロシアとの関係を改善しなければならない理由だ。

■韓ロ関係、回復するか…朝鮮半島への影響力の維持目指すロシアの構想

 ロシアの外交当局者らは韓国に向けて「朝ロ条約と北朝鮮の派兵は韓国の安全保障を脅かすものではない」と強調してきた。「韓国が50万発の砲弾を迂回支援したものの、ウクライナに殺傷力のある兵器の供与は行わなかったため、関係を維持できる」というシグナルも送っている。

 ロシアはウクライナ戦争の終戦過程で韓国とも関係を改善し、朝鮮半島の南北双方で影響力を維持しようとするものとみられる。北朝鮮とロシアの関係をテコに、韓国にはロシアが南北関係の仲裁者になり得ることを強調する戦略を取るものと予想される。

 制裁のためにロシアから撤退せざるを得なかった韓国企業の復帰などを通じて、韓国との経済関係を復元する問題も残っている。特に現代自動車が、戦争が始まってから制裁問題で部品を調達することができず、サンクトペテルブルクの工場を「2年以内に再び買い取ることが可能」という条件で安値で売却し撤退したことなどをどのように解決するかも、課題に浮上する見通しだ。

 
 
ミュンヘン安全保障会議が開かれたドイツのミュンヘンで14日、米国のJ・D・バンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官ら米政府関係者と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が会談している=ミュンヘン/AP・聯合ニュース

■トランプ大統領が中国を引き込もうとするわけは

 トランプ大統領が就任直後からウクライナ戦争の終結に中国の習近平国家主席の役割が重要だと強調していることも、注目に値する。米中の間にこれをめぐる水面下の対話があるものとみられる。中国がウクライナ戦争の終結に向けた米ロ首脳会談の開催と、休戦が実現した後、ウクライナに平和維持軍を派兵することをトランプ政権に提案したというウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道もあった。トランプ大統領の従来の構想を後押しすることで、米国の貿易戦争の攻勢を和らげようとする中国の戦略とみられる。

 一方、トランプ大統領はプーチン大統領に対する習近平主席の影響力を活用し、終戦交渉を加速化させ、究極的には中ロと核・ミサイル軍縮交渉に乗り出すというかなり大きな構想を持っている。

 トランプ大統領は13日にも記者団に「状況が落ち着いたら最初に取り組みたいのは、中ロと核兵器を減らして兵器にお金を使わなくても済むようにする会談」だとして、「軍事費を半分に削減することを呼びかけたい」と述べた。トランプ大統領は第1次トランプ政権時代の2019年、中距離核戦力全廃条約(INF)を破棄したが、当時、米国とロシアだけが条約の対象であり、中国は統制を受けずに核ミサイル能力を高度化していることを問題視した。

 ドゥ・ジンホ研究委員は「トランプ大統領がウクライナ戦争の終戦で『習近平の仲裁』を取り上げるのは、中国との核・ミサイル競争を念頭に置き、米中ロという大国の『グランド・ディール』で安全保障問題に決着をつけ、新たな体制を構築するため」だと分析した。このような状況で、ロシアは中国があまりにも深く関わることは歓迎しないが、中ロの戦略的協力が損なわれないよう、曖昧な立場を取るものとみられる。

■5月9日、国際秩序の分水嶺になるか

 5月9日はロシアの「(第二次世界大戦)戦勝記念日」で、モスクワで大規模な軍事パレードが行われる。ロシアはこの行事に中国の習近平国家主席が出席すると早くから発表した。ところが、12日の電話会談で、プーチン大統領はトランプ大統領をモスクワに招待した。特にクレムリン(ロシア大統領府)側は、トランプ大統領の招待日程が5月9日の戦勝記念日の軍事パレードに合わせられた可能性を示唆した。従来の外交常識ではあまり考えられないが、第2次トランプ政権以後、著しくなった大国中心の国際秩序の追求の流れから、ロシアの戦勝記念日にトランプ大統領と習近平主席がモスクワで会う可能性も排除できなくなった。トランプ大統領はプーチン大統領との電話会談後、自身が設立したソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「私たちは米ロの偉大な歴史、私たち(米ロ)が第二次世界大戦で共に戦って成果を上げた事実を振り返った」と強調し、含みを持たせた。

 一方、ロシアは北朝鮮軍が今回の軍事パレードに参加すると発表しており、すでに金正恩(キム・ジョンウン)委員長をモスクワに招待した。5月9日、モスクワの赤の広場にはどのような指導者が集まり、どのような新しい国際秩序を象徴することになるだろうか。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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 政府は、すでに研究開発費として最大9200億円を投入。24年度補正予算で1兆円を追加し、25年度予算案でもラピダスへの出資額として1000億円を計上しています。

2025-02-17 | 日本共産党へご協力を!

2025年2月17日(月)

半導体企業に税金投入2兆円

自民に献金4.1億円

出資企業、3年間で

政治と産業のあり方ゆがめる

 石破自公政権は、半導体の安定供給が「経済安全保障の観点からも喫緊の課題」だとして、半導体企業「ラピダス」への巨額な支援をしています。本紙の調べで、その「ラピダス」出資企業が2021~23年の3年間で4・1億円もの献金を自民党側にしていたことがわかりました。(藤沢忠明)


写真

(写真)半導体企業「ラピダス」が入居するビル=東京・麹町

 ラピダスは、人工知能(AI)などに使われる半導体を開発する会社で、2022年8月に、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の大手8社が共同出資して設立しました。27年度に北海道千歳市で量産開始を目指しています。

 政府は、すでに研究開発費として最大9200億円を投入。24年度補正予算で1兆円を追加し、25年度予算案でもラピダスへの出資額として1000億円を計上しています。

 政府の巨額支援に対し、8社の出資額は、三菱UFJ銀行3億円、他の7社は各10億円のわずか計73億円。政府の丸抱えぶりが際立っています。

図

 政治資金収支報告書によると、ラピダスへの出資企業は、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に21~23年の3年間で、トヨタ自動車1億5000万円、ソニーグループ5500万円など計4億1040万円にのぼる献金をしています。(表参照)

 大企業への2兆円を超す資金援助は、本来、民間企業が投資すべきものを国が肩代わりするという、まさに財界・大企業への奉仕そのものです。

 しかも、政府は7日、ラピダスへの支援拡大を可能とする法「改正」案を閣議決定しました。

 一方、中小企業対策予算は25年度予算案で、わずか1695億円。石破茂首相は、「企業・団体献金で政策がゆがめられたという記憶はない」などと繰り返し、企業・団体献金を合理化していますが、ラピダス支援は、企業・団体献金が、いかに政治と産業のあり方をゆがめているかを示しています。

ラピダス出資企業の献金(2021~23年)

トヨタ自動車  1億5000万円

NTT       6200万円※

ソニーグループ   5500万円

NEC       5100万円

デンソー      3240万円

三菱UFJ銀行   6000万円

計       4億1040万円

《注》国民政治協会の政治資金収支報告書で作成。※NTTはグループ3社の合計

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日本政府は既に支払いを進めているのに「モノ」が届かない―。価格も納期も米側が一方的に決定し、欠陥品も少なくない武器輸出制度「有償軍事援助(FMS)」の矛盾を示しています。

2025-02-16 | アメリカの反応

2025年2月16日(日)

F35戦闘機 米に巨額支払いも納入されず

政府説明より遅延

不良次々発覚 米製兵器“爆買い”のツケ

 防衛省は2024年度に予定していた米国製のステルス戦闘機F35A3機、F35B6機について、ソフトウエア開発の遅れで引き渡しが25年度にずれ込むことを明らかにしました。しかし、ハードウエア(機体)にも不具合が生じ、さらに遅れて26年度以降になる可能性があることが、米国防総省運用試験・評価局が1月、米議会に提出した報告書で明らかになりました。


地図

 F35は史上最も高額な戦闘機で、防衛省の25年度予算案でAの1機あたり単価が173億円、Bは222億円に達し、米軍より高い価格設定です。日本政府は既に支払いを進めているのに「モノ」が届かない―。価格も納期も米側が一方的に決定し、欠陥品も少なくない武器輸出制度「有償軍事援助(FMS)」の矛盾を示しています。

 報告書によれば、メーカーのロッキード・マーチンは23年7月に最新機体(TR3構成機)の引き渡しを開始しようと計画していましたが、機体に問題が生じ、ソフトウエアも十分に機能しないため、米軍は受け入れを拒否。妥協策として、先行モデル(TR2)に搭載されている戦闘能力をそぎ落とし、「訓練用」として引き渡すことになりました。報告書は、戦闘能力を有し、実戦配備されているTR3構成機は「1機もない」と断定しています。

 報告書は、米国防総省の開発部門はTR3構成機を実戦配備するための適切な計画を持っておらず、「集中的な運用試験は26会計年度(25年10月~26年9月)の中旬~下旬まで行われない」と結論づけています。

 防衛省は将来的にF35A・Bを合わせて147機を導入する方針。F35の採用を決めた当初(11年)は42機を導入する予定でしたが、20年に安倍晋三首相(当時)がトランプ米大統領の“米国製兵器爆買い”要求に応じて、105機の追加購入を決定しました。現時点で日本はF35の最大の輸入国です。

 F35をめぐっては、これまでも数々の欠陥が指摘され、「史上最も駐機時間が長い戦闘機」と言われています。

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12・3非常戒厳令が成功していたら、どんなことが起きただろうか。あの日国民と国会の力で非常戒厳を解除できなかったら、何が起きただろうか。

2025-02-15 | 韓国戒厳令関係
 

尹錫悦が恩赦を受けて闊歩できないように

【チョ・グク獄中記稿】

登録:2025-02-15 07:15 修正:2025-02-15 15:16
チョ・グク|前祖国革新党代表
 
 
                                              チョ・グク前代表提供//ハンギョレ新聞社

<編集者注:チョ・グク前祖国革新党代表が、憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾審判過程で尹大統領が見せた言動と、「12・3非常戒厳」が成功した場合に私たちが直面したであろう悲劇、尹大統領罷免後の国民と民主陣営の対応などについて、自身の考えを明らかにする寄稿文をハンギョレに送ってきた。チョ前代表は現在、ソウル南部刑務所に収監されている。>

 2024年12月3日、「反国家勢力」に言及し国会と選挙管理委員会に軍隊を投入した尹錫悦は、憲法裁判所の法廷で「警告するための戒厳」という不思議な詭弁を繰り広げ、責任を下級者に転嫁する卑怯者の素顔をあらわにした。12・3非常戒厳後、多くの国務委員は、尹錫悦と距離を置き、尹錫悦を「組織の大統領」として誇りに思っていた検察は尹錫悦を起訴しており、尹錫悦大統領作りの先頭に立った保守系マスコミも尹錫悦を批判している。しかし、彼らは「祖国革新党」や「共に民主党」など野党の立場に同意しているわけでもなく、政権交代を望んでいるわけでもない。尹錫悦の違憲・違法があまりにも明らかで、尹錫悦の言動があまりにも卑しいため、背を向けているだけだ。

 これに対し、尹錫悦が特定して逮捕を指示した前「国会要員」の一人として、質問を投げかけたい。すなわち、12・3非常戒厳令が成功していたら、どんなことが起きただろうか。あの日国民と国会の力で非常戒厳を解除できなかったら、何が起きただろうか。

 まず、私を含む国会議員はもちろん、ジャーナリスト、宗教者などは「回収」され、「反国家活動」をしたという自白を強要されただろう。ノ・テアク選挙管理委員長と職員たちは、ノ・サンウォン元情報司令官が特別に用意した野球バットで「不正選挙」を自白するまで殴られただろう。この過程で強要された自白が出てくれば、保守系メディアは連日大きく取り上げただろう。ハンギョレや「MBC」など政府に批判的とされるマスコミは、大々的な捜査の対象になっただろう。法人カードや会計帳簿などを隈なく調査し、経営陣を交替し、刑事処罰をしただろう。「世論調査コッ」のキム・オジュン代表はどこかに連れていかれ、有無を言わさず殴られていただろう。

 このような非道なことが行われているとき、首相をはじめとする国務委員は、今のように非常戒厳の要件が満たされていないと言うだろうか。それはないと断言できる。のちに立場を変えたが、イ・サンミン前行政安全部長官が国会で行った発言、「非常戒厳は司法審査の対象ではなく統治行為だ」という言葉を口をそろえて主張したことだろう。また、各部処(省庁)の長官たちは戒厳布告文の趣旨に合わせ、先を争って野党を非難し、戒厳の必要性を強調する記者会見を開いたことだろう。

 検察は今のように「非常戒厳特別捜査本部」を作り、尹錫悦をはじめとする内乱一党を捜査・起訴しただろうか。全くそうではなかろう。以前、金泳三(キム・ヨンサム)政権発足後に粛軍クーデター(1979年12月12日)および5・17クーデター(1980年5月17日の非常戒厳令拡大措置)の一味に対する処罰を求めて世論が沸き立ったとき、検察が発表した立場、すなわち「成功したクーデターは処罰できない」という言葉を主張し、尹錫悦に頭を下げただろう。一方、「反国家勢力特別捜査本部」を作り、野党を抑え込むための捜査を全方位的に展開しただろう。

 
 
2024年12月3日夜に尹錫悦大統領が非常戒厳を宣布したなか、4日夜、ソウル国会議事堂で戒厳軍が国会本庁に進入している/聯合ニュース

 さらに、ノ・サンウォン元情報司令官の手帳に書かれたNLL(北方限界線)で北朝鮮の攻撃を誘導することが実際に起き、局地戦が起きただろう。極右ユーチューバーや極右キリスト教勢力は、一日中反北朝鮮・反野党扇動を繰り広げ、「白骨団」など極右暴力集団が街をかき回したことだろう。

 このような状況で、尹錫悦は「不正選挙」を理由に国会を解散させ、「非常立法機構」を作って様々な悪法を可決させただろう。尹錫悦は大統領選挙の討論会で、手のひらに「王」の字を書いて出たことがあるくらいだから、自分の願いを叶えたことだろう。裁判所は起訴された犯罪に限り有罪無罪を判断するのみという原則論を掲げ、このすべての現実に沈黙を守るだろう。ただし、「反国家勢力特別捜査本部」が捜査・起訴した事件に対しては重刑を宣告しただろう。

 偉大な国民の決断と行動で、このような恐ろしい事態が現実になることはなかった。尹錫悦の罷免と処罰は近いうちに実現するだろう。しかし、尹錫悦一味が処罰されても、全く変わらず全く反省しない勢力が依然として残っている。尹錫悦検察総長を「英雄」として仕え、大統領にした勢力は、政権延長を目指して一致団結している。12・3内乱を批判する代わりに、「議会独裁」をした野党のせいでやむを得なかったという両非論(両方に非がある)を展開している。野党が尹錫悦政権の足を引っ張って破局を招いたと非難している。大統領選のライバルだった野党第一党の代表に対する執拗な標的捜査にも飽き足らず、「イ・ジェミョン(共に民主党代表)の悪魔化」を進めている。そして、尹錫悦に代わる新しい人物を中心に団結し、再び政権を握ることを目指している。

 主権者である国民と野党は、気を引き締めなければならない。尹錫悦が罷免されても、尹錫悦を大統領にして政権を握った勢力はそのまま残っている。彼らが政権を握れば、尹錫悦は恩赦で釈放され、前大統領の肩書きをつけて闊歩するだろう。韓国国民は1987年に軍部独裁を倒し、2017年には国政壟断勢力を引きずり下ろし、朴槿恵(パク・クネ)を罷免させた。2024-25年も、尹錫悦一味を撃退することはできるだろう。いま重要なのはその次のことだ。現在行われている政党支持率の世論調査は、事実上、大統領選候補の世論調査だ。実際、大統領選が決まれば結集現象は加速化し、終局は51対49の戦いになるだろう。1987年、金泳三候補と金大中(キム・デジュン)候補の一本化に失敗したせいで、粛軍クーデターと5・17非常戒厳拡大の主役だった盧泰愚(ノ・テウ)が大統領になった。2012年には相乗効果のない文在寅(ムン・ジェイン)候補とアン・チョルス候補の一本化により、朴槿恵が大統領となった。2022年にはイ・ジェミョン候補とシム・サンジョン候補の一本化に失敗し、尹錫悦が大統領になった。

 まず、12・3内乱に反対し、民主憲政の回復を求める勢力が団結しなければならない。12・3内乱を擁護したり幇助した勢力を孤立させなければならない。祖国革新党、共に民主党など革新系政党の他にも、保守系の改革新党まで共に行動することを望む。勝利するためには「連合」する道しかない。欧州で極右政権を阻止するために、左派と中道保守派が連立する例を思い出すべきだ。次に、大統領選挙後の新たな大韓民国のビジョンと政策に対する話し合いと共通の公約を抽出しなければならない。各政党ごとに違いはあるだろうが、例えば「第7共和国のための7大共同課題」に対する合意が必要だ。ここには言うまでもなく、12・3以降、広場でろうそくとペンライトを掲げた主権者である国民の要求と夢が反映されなければならない。このような連合政治は「新たな多数」を形成し、この「新たな多数」が大韓民国の次の時代を開き、また担っていくだろう。

チョ・グク|前祖国革新党代表(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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「革新か保守かにかかわらず、またウクライナやロシアのどっちが悪いかにかかわらず、これ以上多くの人々が死んで怪我をしてはならない。戦争を終わらせなければならない」と話した。

2025-02-15 | ウクライナ支援いつまで続くのか?
 

「死ぬまで追ってくる自爆ドローン、

今でも恐怖」ウクライナ戦で負傷した韓国人参戦者

登録:2025-02-15 06:58 修正:2025-02-15 09:10

 

ウクライナの負傷兵になった韓国人参戦者、イ・ビョンフンさん 
ザポリージャで自爆ドローンの攻撃を受け負傷
 
ウクライナの外国人義勇兵部隊「国土防衛隊国際旅団」所属で参戦し負傷した韓国人のイ・ビョンフンさん(58)が7日、ウクライナの首都キーウでインタビューに応じている=キーウ/チャン・イェジ記者//ハンギョレ新聞社

 2022年2月24日にロシアのウクライナ全面侵攻で始まったウクライナ戦争がまもなく3年を迎える。ハンギョレはウクライナ戦争3年を迎え、ウクライナの首都キーウと西部リビウ、そしてポーランドなどを訪れ、戦争の惨状と見通しを取材した。

 ウクライナ戦争勃発後、ウクライナ軍に西欧圏出身を中心に多くの人々が義勇軍として参戦し、一部の韓国人もウクライナ義勇軍として参戦した。ハンギョレは、ウクライナの外国人義勇兵部隊「国土防衛隊国際旅団」所属として参戦し、負傷した韓国人と韓国系米国人に会った。今月7日から8日にかけて、ウクライナの首都キーウにあるレストランや、西部都市リビウにあるリハビリセンター「スーパーヒューマンセンター」で、韓国人参戦軍人のイ・ビョンフンさん(58)と韓国系米国人のジェイソン・ジさん(21)に会い、戦争の実態について聞いた。彼らは昨年7月、それぞれ異なる地域で作戦遂行中に負傷し、イさんは左腕を、ジェイソンさんは左膝の上まで切断した末に命を取り留めた。

 2023年7月、ポーランド国境で国際旅団への入隊を申請したイ・ビョンフンさんは、約1カ月間の訓練を経て、作戦に投入された。イさんのような外国人14人とともに陸軍204旅団に正式に配属され、戦闘が最も激しかった東部ドネツク州のバハムートとコンスタンティニウカなどで戦闘に参加した。彼は「部隊員たちは最大5〜6日間、最前線の塹壕に投入され、ロシア軍と近接戦闘を繰り広げた。主にロシア軍の攻撃を防御する任務であり、機関銃や手榴弾、榴弾発射機などを持ってロシア軍と交戦した」と語った。

 
 
ウクライナ戦争に参戦して負傷したイ・ビョンフンさんが戦場で撮影した写真=イ・ビョンフンさん提供//ハンギョレ新聞社

 イさんはミサイルと大砲攻撃にも遭ったが、最も恐ろしかったのは「ドローン」(無人機)だった。昨年7月7日、ザポリージャ戦線に投入されたイさんは自爆ドローンの攻撃を受け、左腕を失った。左耳の鼓膜も破裂し、補聴器をつけなければならない。イさんは「死ぬまで追いかけてくるドローンがいまだに怖くて恐ろしい。ロケットや機関銃などで戦闘を行っても、ひとまず塹壕の中に入れば安全だったが、ザポリージャでは塹壕の屋根がほとんどなくなるまで休む間もなくドローン攻撃を受けた」とし、「(相次ぐドローン攻撃で)塹壕は隠れる場所にならず敵の攻撃にさらされるため、犠牲者が多く発生した。ロシアとウクライナの両方とも、兵士を犠牲にして戦線を守る状況だ。最先端の高価な武器で戦術と戦闘教理が発展するのではなく、むしろ安いドローンの効用が立証され、過去の戦術に戻る印象まで受けた」と語った。

 イさんは「ターニケット」(止血帯)で止血をしながら一人で後退し、明け方に無線交信で負傷を知らせて、コロンビア出身の義勇軍2人の助けで応急処置を受けたという。その後、他のウクライナ軍2人がイさんを車に乗せて安全な場所まで移動させ、車で病院に運ばれた。イさんは「車に乗る瞬間まで大砲とドローン攻撃を受けた。後で医療記録を見ると、負傷から14時間後に病院に到着したことが分かった」と振り返った。当時、イさんを含め作戦に投入された8人のうち戦死者は2人で、イさんなど4人が重傷を負ったという。

 
 
ウクライナ戦争に参戦したイ・ビョンフンさんが履いていた軍靴。左側の軍靴には血が付いている=イ・ビョンフンさん提供//ハンギョレ新聞社

 2024年初め、英国を経てポーランドからウクライナへと国境を越えたというジェイソンさんも国際旅団に編入された。ウクライナ東部のドネツク州で塹壕防御任務を担当した。2024年7月27日に負傷した日も、任務のために兵士5人と狭い道を移動する途中、地雷を踏んで左足を失った。ジェイソンさんより先に骨盤に銃傷を負ったスペイン出身の兵士もいたため、安全な塹壕まで移動するのにさらに時間がかかった。ジェイソンさんは「急いでターニケットを作動させたが、止血も完璧ではなく、少しずつ血を流しながら800メートルほど片足歩きで進んだ」とし、「本当に運が悪かった。最初は地雷を踏んだことに気づかず、(間違って)自分に銃を撃ったと思った」と語った。

 ジェイソンさんはその後、ドニプロとキーウのリハビリ病院に入院したが、劣悪な施設などで日常を送るのに苦労し、11月になってから負傷兵のための専門リハビリセンターである「スーパーヒューマンセンター」で義足の支援を受け、歩く訓練などを受けることになった。

 イさんも負傷から後4カ月間、キーウやリビウ、ムカチェボなどの病院を転々としたが、昨年12月、スーパーヒューマンセンターで義手を受け、専門的なリハビリ治療に入った。

 コロナ禍当時、東南アジアでマスク事業を営んでいたイさんは、2023年夏のフランス旅行中にウクライナ戦争についてより多くを知ることになり、戦争の状況を知らせるために一日に多くの国を飛び回るウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の姿から、「切実さ」を感じたと話した。イさんは「朝鮮戦争の時も国際連合(UN)軍が我々を助けてくれたではないか。チェコにあるウクライナ大使館前に展示された戦争写真を見て衝撃を受けた」と言い、それが入隊のきっかけになったと語った。

 米国西部の小都市の大学生だったジェイソンさんは、コンピューター工学などの専門の勉強を終えれば安定的な仕事が見込めたが、戦場を選んだ。ジェイソンさんは「ここで良い暮らしができるのに、なぜウクライナに行くのかと多くの人から聞かれたが、そのような条件が人々を助けない理由にはならなかった」とし、「ロシアはすでに世界で最も大きな国であり、多くの資源を持っているのに、他国を占領するために戦争をすること自体が正しくないと思った」と語った。

 
 
8日、ウクライナ西部リビウにあるリハビリ専門医療機関「スーパーヒューマンセンター」で、ウクライナの外国人義勇兵部隊「国土防衛隊国際旅団」を通じて参戦したジェイソン・ジさん(21)=チャン・イェジ 記者//ハンギョレ新聞社

 しかし、イさんとジェイソンさんが経験した戦場は想像以上に恐ろしく、彼らの人生を根こそぎ変えてしまった。イさんは「そこら中にロシア軍の遺体が転がっていた」と語りながら、目をぎゅっとつぶった。イさんは「私を救助しろという指揮官の命令と後方支援に来てくれた戦友たちのおかげで生き延びることができた。生きて帰れば負傷兵だが、ロシア軍に捕まると捕虜になり、攻撃を受けて死んでも遺体を収拾できなければ失踪として処理される」とも語った。現場では足りない兵力問題も如実に感じたという。イ氏は「あるウクライナの戦友は60歳を過ぎたのに除隊が認められず、家族に会いたいと打ち明けた。『休暇に出て復帰するのは大馬鹿者』という冗談があるほど、ウクライナとロシアの両方とも脱走兵問題が深刻だと聞いた」と伝えた。

 ジェイソンさんは負傷する4日前、一番親しかった英国人の同僚を失った。18歳の少年だったジェームズ・ウィルトンさんは初めて任務を与えられたが、ジェイソンさんとともに任務遂行中にドローン攻撃を受けて死亡したという。ジェイソンさんは「ドローン2台が私たちを偵察するのを見て走り始めたが、ジェームズはその場で凍りついてしまい、ドローンが落とした爆弾に当たった。任務を始めてから約20分後に起きたことだった」と語りながらうな垂れた。ジェイソンさんはジェームズさんの遺体をみずから運び、彼の葬儀には車椅子に乗って出席した。

 
 
ジェイソン・ジさんが戦場で同僚たちと撮った写真=ジェイソン・ジさん提供//ハンギョレ新聞社

 開戦初期、ウクライナ政府は50カ国から約2万人ほどが国際旅団への参戦を申し込んだと発表した。しかし、2023年1月、米ワシントンポスト紙は夏になる前に半分以上の兵士が故国に帰ったと報道し、当時基準で1000〜3000人の外国人義勇軍が戦闘中だと推算した。イさんも「前方に行った外国人義勇軍は恐怖で多くが帰国した。国際旅団ではウクライナ人の祖父母を持つ在韓米軍出身の同僚にも会ったが、金を稼ぐ目的や好奇心のために来る人たちもいた。第204旅団に同行した14人の外国人も全員帰国し、今はここに残っているのは私だけだ」と語った。

 
 
ウクライナ戦争に参戦したイ・ビョンフンさんがウクライナ政府から授けられた勲章を見せている=イ・ビョンフンさん提供//ハンギョレ新聞社

 イさんとジェイソンはリハビリ治療とともに除隊に向けて準備をしている。イさんは「戦争や死が怖いとは思ったことはなかったが、(負傷で)九死に一生を得てから、命の大切さを改めて感じた」とし、「ウクライナのためにできることを探したい」と語った。ジェイソンさんはまだ戦友を失った悲しみから抜け出せずにいた。彼は「(負傷直後には)家に帰りたい気持ちがだんだん大きくなったが、友人を失ったことに対する怒りを抑えきれなかった。ロシア軍に復讐したいと思った」と語った。

 負傷後、イさんが最も気になったのは、ロシアに派兵された北朝鮮軍だった。イさんは「約1年間前方で戦ったため、北朝鮮軍がどのような状況に置かれているのかをよくわかる。敵が誰なのかも知らずに戦場に来た若い青年たちを見て、とても残念に思った」とし、「むごたらしく捨てられた遺体をたくさん見てきたため、死んでいった北朝鮮軍もそうだったと思うと、本当に胸が痛んだ。彼らの両親の心情はいかばかりか」と語った。20代の時、海兵隊に所属し金浦(キンポ)で服務したというイさんは、北朝鮮の開豊郡(ケプングン)とわずか1.4キロメートルの距離の愛妓峰(エギボン)付近で観測下士として服務し、常に北朝鮮を眺めていたという。

 
 
イ・ビョンフンさんが20代に海兵隊に服務していた頃に撮った写真を見せている。イさんは北朝鮮の開豊郡とわずか1.4キロメートルの距離の愛妓峰付近で観測を行い、常に北朝鮮を眺めていた=イ・ビョンフンさんに提供//ハンギョレ新聞社

 イさんは帰国した場合、旅行禁止国のウクライナに滞在したため、パスポート法違反で処罰される可能性が高いが、「処罰も私が受け入れなければならないこと」だと淡々と語った。参戦と負傷のことも、1年半が経った最近になって実の弟と友人一人だけに打ち明けたという。イさんは除隊後もウクライナに残り、戦場の状況をユーチューブなどを通じて知らせることも考えている。イさんは「ある海外メディアとのインタビューで、北朝鮮軍に会ったら銃を撃つことができるかと訊かれたことがある。私はできないと思うと答えた」とし、「革新か保守かにかかわらず、またウクライナやロシアのどっちが悪いかにかかわらず、これ以上多くの人々が死んで怪我をしてはならない。戦争を終わらせなければならない」と話した。

キーウ・リビウ/チャン・イェジ特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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12・3内乱事態を謀議・実行した疑いで拘束起訴されたノ・サンウォン元情報司令官が、自身の手帳に「500人余りを収集する」と書きこみ、具体的な逮捕計画を立てていたことが確認された。

2025-02-14 | 韓国戒厳令関係
 

【独自】殺害暗示「戒厳の黒幕の手帳」に

文前大統領など500人…「確認射殺」

登録:2025-02-14 06:24 修正:2025-02-14 08:29
 
「回収」対象に政治家や法曹・放送・スポーツ界の人物並ぶ 
「捕縄で縛り収集所に送る…すべての左派勢力を崩壊させる」
 
 
昨年12月24日午前、12・3内乱事態に関与した疑惑で拘束されたノ・サンウォン元国軍情報司令官がソウル恩平区のソウル西部警察署で検察に送致されている/聯合ニュース

 12・3内乱事態を謀議・実行した疑いで拘束起訴されたノ・サンウォン元情報司令官が、自身の手帳に「500人余りを収集する」と書きこみ、具体的な逮捕計画を立てていたことが確認された。ノ元司令官の「回収」対象には、野党関係者だけでなく「左派裁判官」、「左派芸能人」などが含まれ、拘置所など「収集所」に送る案も含まれていた。また、「次期大統領選挙に備え、すべての左派勢力を崩壊させる」という内容もあり、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の長期継続を図ったものとみられる。

 13日にハンギョレが確保した70ページの「ノ・サンウォン手帳」には、「汝矣島(ヨイド)30~50人回収」、「報道関係者100~200人」、「民労総(全国民主労働組合総連盟)」、「全教組(全国教職員労働組合)」、「民弁(民主社会のための弁護士会)」、「御用判事」などが「1次収集」対象の500人余りに含まれていた。「逮捕組(逮捕される人たち)」の編成は5人から7人を一組にしてし、バスや乗用車で移動させる計画を立てたものとみられる。手帳には「ヨ:行事人員の指定、回収名簿の作成」、「パク・アンス鶏龍台(ケリョンデ):回収場所、戦闘組織の支援」など、内乱に加担した軍将官と推定される名前と役割も書かれている。実際、ヨ・インヒョン前国軍防諜司令官は、非常戒厳当時の逮捕者名簿をホン・ジャンウォン前国家情報院第1次長とチョ・ジホ前警察庁長に伝えた事実が確認された。回収措置は第1次・第2次は機務司(現国軍防諜司令部)、第3〜10次は警察を活用すると書かれていた。

 手帳に書かれていた回収対象の多くが「政治家逮捕組」の名簿と重複する。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表、チョン・チョンネ議員、クォン・ス二ル前最高裁判事、チョ・グク前祖国革新党代表、ラジオ司会者のキム・オジュン氏などだ。文在寅(ムン・ジェイン)前大統領、イ・ジュンソク改革新党議員、作家のユ・シミン氏の名前もあった。この他に民主党所属のソ・ヨンギョ議員、コ・ミンジョン議員、ユン・ゴニョン議員、チュ・ミエ議員、パク・ポムゲ議員、ノ・ヨンミン元大統領室秘書室長、そして2023年9月にイ・ジェミョン代表の拘束令状を棄却したユ・チャンフン判事なども含まれていた。「大佐→海兵捜査団長」とは、(海兵隊員)C上等兵殉職事件を捜査したパク・チョンフン前海兵隊捜査団長(大佐)を指すものと推定される。タレントのキム・ジェドン氏と有名サッカー選手出身のチャ・ボムグン氏の名前も挙がっており、彼らも「回収対象」だったとみられる。

 
 
ノ・サンウォン元情報司令官(中央のマスクをつけた人物)が昨年12月24日朝、ソウル恩平区のソウル西部警察署からソウル中央地検に送致されている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 「A」級に分類される対象には「グループごとに束ねず、混ぜて収集所に送る」、「捕縄を活用」する計画が立てられていた。特に、左派裁判官、左派検事、左派放送局の主要幹部などに対しては、「キム・ドゥファン(キム・ドゥハンの間違いとみられる)時代のように、暴力団を使って左派を粉砕させる案」を講じた。これだけでなく、「兵舎内の寝室に爆発物を使用」、「確認射殺が必要」、「刑務所1カ所を丸ごと(収容される人たちのための)食べ物、給水、化学薬品」とし、殺害計画とみられる内容もあった。手帳には逮捕対象を収容する場所も具体的に書かれている。別名「収集所」と表現された収容場所としては、「午陰里(オウムリ)、県里(ヒョンリ)、麟蹄(インジェ)、江原道華川(ファチョン)、楊口(ヤング)、鬱陵島(ウルルンド)、馬羅島(マラド)、前方民統線」などが挙げられた。検察と警察はこれらを、軍部隊と軍施設が多数ある南北境界地域を意味するとみている。

 北朝鮮と接触して北朝鮮を利用するという方法も書かれている。手帳には「非公式の方法」とし、「何を提供するのか(北朝鮮)接触時の保安対策」としたうえで、「外部委託業者による魚雷攻撃」、「NLL(北方限界線)付近で北朝鮮の攻撃を誘導したり、北朝鮮で拿捕直前に撃沈させる案など」とし、北朝鮮を引き入れようとしたとみられる内容もあった。

 非常戒厳の後続措置と推定される部分もあった。手帳には「憲法、法改正」とし、「3選(3期連続)政権構想案」、「後継者は?」と書かれていた。憲法を改正し、尹大統領の3期目までの政権維持を推し進めようとした疑いがある。

 ノ元司令官の手帳に書かれていた内容は、昨年4月の総選挙前から計画されていたものとみられる。手帳には時期を総選挙前後に分けて「総選挙後に立法をして執行するのは容易ではない。実行後、芽を除去して根源をなくす」と書かれていた。非常戒厳令も約1カ月間続けようとしたものとみられる。尹大統領は「2時間で終わる戒厳が一体どこにあるのか」と述べ、「啓蒙令」だったと主張しているが、これを実行する実務者の準備はそうではなかったというのが手帳に書かれた情況だ。ノ元司令官は警察の取調べで「キム・ヨンヒョン前(国防部)長官の発言を書き留めた」と陳述したという。内乱の重要任務従事者であるキム前長官もまた「ノ・サンウォンの指示は私の指示」だと言って部下たちに指示した情況があるため、手帳内容が実際に非常戒厳の計画段階につながったのかについて、さらなる捜査が必要とみられる。

ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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 高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化が急激に進んでいます。50年を経過した下水道管の割合は42年に40%になり、橋の75%、トンネルの53%が40年までに建設後50年以上になります。

2025-02-13 | しんぶん赤旗を読んでください。

しんぶん赤旗 主張

道路の陥没事故

大型開発優先の抜本的転換を

 埼玉県八潮市の県道陥没事故は、インフラの老朽化がもたらす危険や住民への影響の大きさを見せつけています。運用から42年になる下水道管の腐食によるとみられ、穴に転落したトラックの運転手はいまだ行方不明です。

 下水道に起因する道路陥没は2022年度に約2600件起きています。下水道管の標準耐用年数は50年とされ、腐食のおそれが大きい箇所は政令で5年に1回以上の点検が求められています。この下水道管は21年度の点検では「直ちに工事は必要ない」との判定でした。点検の期間・方法の見直しを含め、老朽インフラへの対策が急務です。

■加速化する老朽化

 高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化が急激に進んでいます。50年を経過した下水道管の割合は42年に40%になり、橋の75%、トンネルの53%が40年までに建設後50年以上になります。

 12年の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故を受け政府は13年に「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、現在は25年度を期限に第2次計画が進められています。

 しかし、国交省自身、「地方公共団体管理のものを中心に早期に修繕が必要なインフラが多数存在したまま」と認めています。下水道は地方自治体管理で、21年度から23年度の点検で「速やかに措置が必要」と判定されたうち、24年3月末までに対策が完了したのは44%にとどまります。

■自治体任せ改めよ

 水道事業は独立採算制が原則とされます。しかし、自治体の予算と技術系職員の不足で、この原則の維持が困難になっています。水道職員数は1995年に6万2千人いましたが、22年には3万9千人にまで激減。自治体リストラとともに、行政が担ってきた業務を民間に開放する規制緩和が現場の技術力を低下させる原因となっています。必要な技術者を国の責任で確保することが不可欠です。

 能登半島地震を受け、水道の耐震化も課題となりました。ところが、政府の24年度補正予算に盛り込まれた補助制度は、水道料金値上げを誘導する仕組みになっています。住民負担増とセットのやり方は改めるべきです。

 自公政権は競争力・産業インフラ機能強化などとして不要不急の大型開発に巨額の予算を投入しています。

 整備新幹線、高速道、空港建設が進められ、東京外環道(関越―東名)の建設費は20年には約2兆4千億円に膨張。国際コンテナ戦略港湾整備では24年1月までに1兆円近くが投入されています。

 国民の安全・安心のため大規模開発・新規建設優先からインフラの維持・更新、防災・減災優先に根本的に切り替えることが不可欠です。

 特に国は自治体任せを改め、抜本的な支援策を打ち出すべきです。▽点検を繰り返し行うため市町村の点検費用などを国が全額補助する▽国の「防災・安全交付金」を増額し地方の要求額に100%応える▽市町村の単独事業となっているインフラの維持管理費を補助対象に拡充―などで財政難による必要な修繕の「先送り」が起きないようにすることが求められています。

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習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。

2025-02-12 | 世界の変化はすすむ
 

習近平主席、

韓国国会議長に手厚いもてなし…中国の「周辺国との関係改善」始まる

登録:2025-02-11 09:29 修正:2025-02-11 11:39
 
習主席「韓中関係を安定的に維持したい」 
トランプ米大統領の圧力への対応
 
 
ウ・ウォンシク国会議長が7日、中国のハルビンで習近平国家主席と会談している=国会議長室提供//ハンギョレ新聞社

 ハルビン冬季アジア大会の開会式に招待され中国を訪問したウ・ウォンシク国会議長が、中国から「目を引く」もてなしを受けた。

 ウ・ウォンシク議長は開会式が行われた7日午後、黒竜江省ハルビン市の太陽島ホテルで習近平国家主席と会談した。習近平主席が韓国の国会議長と接見したのは、2014年12月に当時のチョン・ウィファ国会議長と会って以来。2019年5月に中国を訪問したムン・ヒサン議長、2022年2月の北京冬季五輪の開会式に出席したパク・ピョンソク議長は、習近平主席との面談はなかった。ウ議長は5日、カウンターパートである全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当、公式序列3位)と会談したのに続き、習主席とも単独で会談した。習主席とウ議長は約40分にわたり対話した。予定では15分だったが、2倍以上の時間が取られた。

 習主席の発言内容も非常に友好的だった。ウ議長が10月末に慶州(キョンジュ)で開かれるAPEC首脳会議への出席を求めると、習主席は「APEC首脳会議に中国の国家主席が出席するのは慣例」だとし、「関連省庁とともに出席を真剣に考慮している」と述べたと国会議長室が伝えた。

 ウ議長はまた、「中国で韓国コンテンツがなかなか見られない。文化開放を通じて若者たちが互いにコミュニケーションし、友好感情を持つことが必要だ」と述べ、習主席は「文化交流は両国の交流の魅力的な部分であり、その過程で問題が起きることは避けなければならない」と語ったという。ウ議長の発言は、中国で韓国コンテンツを制限するいわゆる「限韓令」の解除を遠まわしに要請したもの。

 中国当局が統制する官営メディアの報道でも、ウ議長に対する中国の手厚い待遇が目立った。8日付の人民日報の2面には、右側のいちばん上に習近平主席とウ議長の会談に関する記事と写真が掲載された。2023年9月に杭州アジア大会の開会式に出席したハン・ドクス首相と習主席の会談の記事と写真が2面下段に掲載されたことに比べても、より良い待遇を受けたものと解釈できる。ウ議長はこの日午後、習主席主宰で多くの国家首脳が参加した冬季アジア大会の宴会にも出席。官営「CCTV」の夕方のメインニュースは、習主席とウ議長が最前列に立って宴会場に入場する場面と二人の会談場面を報道した。

 
 
人民日報の8日付2面の上段に習近平主席とウ・ウォンシク国会議長の会談の記事が掲載された//ハンギョレ新聞社

 中国のウ・ウォンシク議長に対する「もてなし」は、第2次トランプ政権の中国叩きの渦中で、重要な国である韓国との関係を管理しようという中国の戦略的な意志が反映されたものとみることができる。

 国会議長室によると、習主席はこの日、ウ議長に「韓中関係が安定して維持されるよう希望する」として「中国は開放と包容政策を堅固に維持し、デカップリング(脱同調化)に反対する」と語ったという。トランプ米大統領の関税・貿易戦争の余波を念頭に置いた発言だ。習主席は「現在、国際・地域情勢における不確実性が増したが、中国と韓国は当然共に努力し、中韓の戦略的協力パートナー関係の発展を強固にすべきだ」とも強調した。

 米国のシンクタンク「スティムソンセンター」のユン・ソン中国担当局長は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への6日の寄稿「中国のトランプ戦略(China's Trump Strategy)」で、中国指導部はトランプ政権の経済圧力に対応するために、国内経済の回復力強化に集中すると同時に、周辺国との関係改善を積極的に目指す「フェンスの修復(Mending Fences)」に取り組んでいると分析した。「周辺地域の安定を通じて余計な外交的紛争を減らすと同時に、米国が同盟国と協力して中国に圧力をかける戦略を弱めることができるため」ということだ。中国は韓国のほか、日本やインドなどとも最近、ビザなし政策、水産物輸入再開、国境紛争管理などで関係改善に積極的に乗り出している。

 5日にウ議長に会った趙楽際・全人代常務委員長は「敏感な問題を円満に処理し、中韓関係の政治的基礎を維持・保護しよう」と語った。「敏感な問題」とは、中国がTHAAD(高高度防衛ミサイル)を指してきた用語だ。

 トランプ大統領が先月27日「同盟とパートナーに提供する米国のミサイル防衛力を増やし加速させる」という条項の含まれる「米国版アイアンドーム」の大統領令に署名し、韓国にTHAADを追加配備する可能性が提起されたことを念頭に置いたものとみられる。趙委員長はまた、この日の会談で「干渉を排除しよう」、「デカップリングを共に阻止しよう」とも述べた。ウ議長は懇談会で、このような発言に関して「趙委員長がそのような話をしたが、何も答えなかった」と述べた。

 12.3内乱事態以降、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「中国のスパイ」などに言及し中国を非常戒厳宣布の理由に挙げたことを契機に中国関連の陰謀論が急速に拡散する中で、韓国もこのような中国の外交シグナルをうまく利用しながら中国との外交・経済関係を賢明に管理する必要があるとみられる。

 習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。ウ議長は習主席に限韓令の緩和なども要請した。国家安保戦略研究院のヤン・ガビョン首席研究委員は、「習近平主席とウ議長が会談で韓中間の友好的な『感情』の問題を本格的に取り上げたのは、両国の国民間の『感情』の離反に対する問題意識を持っていることを遠回しに表現したもの」とし、今後韓中間で、人的交流または人文交流などで目に見える交流協力の成果を出すための具体的な動きがあるものとの見通しを示した。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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トランプ大統領を最もよく扱った外国首脳の一人として、文在寅大統領を挙げました。大統領の目から見てトランプ大統領はどのようなリーダーですか。これから韓国政府はどう対応していくべきだと思いますか。

2025-02-11 | 韓国ハンギョレ新聞
 

文在寅前大統領インタビュー(3)

「トランプ大統領は第一印象を重視…初会談がカギ」

登録:2025-02-10 10:22 修正:2025-02-10 17:38

 

【単独インタビュー|トランプ2期発足と北朝鮮】 
 
トランプ大統領はこれまでの外交文法を無視し、予測不可能 
一方、理念にこだわらず、実用的であるため、相手しやすい面も 
意図的な「大袈裟な主張」…正確な事実で反論すべき 
朝米首脳会談、すでに推進しているはず 
韓国は北朝鮮政策の基調を変えなければ自ら疎外を招くことに
 
 
文在寅前大統領が、平山村の自宅の接見室に置かれている2018年9月19日の平壌綾羅島競技場で撮った演説写真を指差しながら説明している。この写真は当時のチョ・ミョンギュン統一部長官が携帯電話で撮ったものだという=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―米国で第2次ドナルド・トランプ政権が発足するやいなや、全世界が通商戦争に巻き込まれています。在任期間中にトランプ大統領に何度も会っていますが、昨年、米国の政治専門誌「ポリティコ」は、トランプ大統領を最もよく扱った外国首脳の一人として、文在寅大統領を挙げました。大統領の目から見てトランプ大統領はどのようなリーダーですか。これから韓国政府はどう対応していくべきだと思いますか。

  「トランプ大統領は皆さんご存知のように、米国の利益を前面に掲げて非常に強く追い込むスタイルです。これまでの外交文法を全く無視したり、また予測不可能な姿を見せたりもします。しかし、一方では理念にこだわらず、非常に実用的でもあるため、相手にしやすい面もあります。私が経験したところによると、気になる事項には質問もたくさんし、その答弁に耳を傾け、自分の意見を率直に討論するため、話が通じる、対話できると、そう思いました。

 最も良かったのは、北朝鮮問題について、これまでの共和党の政治家や保守政治家とは違って、理念にこだわらず、実用的にアプローチしたことです。もともと一般的な共和党の政治家や保守的な政治家は北朝鮮を悪の勢力と捉えるため、北朝鮮との対話を信頼せず、持続的に圧力をかけて北朝鮮を屈服させなければならない、こういう考えを強く持っています。私はトランプ大統領にこう説明しました。制裁と圧迫も必要だが、果たしてこれまで制裁と圧迫を持続した結果、北朝鮮の核とミサイル問題が解決できたのか、その脅威が減ったのか、失敗したではないか、制裁と圧迫にもかかわらず、北朝鮮の核とミサイルは高度化し続け、脅威的になったではないか、だから制裁と圧迫の他にも対話の方法も同時に駆使する必要がある。もう一方で、軍事的オプションを考えるなら、それは韓米両国にとってあまりにも大きな犠牲を伴うため、それは到底選べない方法だ、だから外交的な方法を使わなければならないし、外交的な方法でも十分に北朝鮮の非核化という目標を達成できる、そう説明しました。トランプ大統領はそのような説明に全面的に同意しながら、本当にこれまでの米国の指導者とは違い、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接会うトップダウンの首脳会談をしました。

 結果的にその対話が全て成功したわけではなりません。しかし、2017年に就任した当時は、北朝鮮の核やミサイルの脅威が最高潮に達しており、戦争の危機が朝鮮半島を覆いつくしていたことを考えると、トランプ大統領のそうした実用的なアプローチのため、少なくともトランプ大統領の任期中、また私の任期中、朝鮮半島の平和を維持できたと思います。それはトランプ大統領の非常に大きな業績だと思います。トランプ大統領は一方で、大規模な韓米軍事訓練や合同訓練、または朝鮮半島の戦略資産を展開することについても、非常に費用のかかる無駄遣いだ、または愚かな戦争ごっこだという実用的な考えを持っており、その価値を高く評価しませんでした。そのようなトランプ大統領の態度が朝鮮半島の軍事的緊張を下げるうえでも、大きな役割を果たしたと言えます」

―最近のトランプ大統領を見ると、自国の経済的利益を最大化しようと非常に努力していますが、大統領の在任時代にも防衛費分担金交渉で苦労されましたね。

 「トランプ大統領は自分の要求を貫徹するために大袈裟な主張をすることも多々あります。実際に対話をしてみると、トランプ大統領が朝鮮半島問題をそれほど深く知らないことが多く見られました。なぜなら、私たちにとってはあまりにも重要なので、韓米間の問題に精通していますが、米国の大統領にとっては数多くの世界問題の一つに過ぎず、時にはそれほど重要な問題ではないからです。だから、米国大統領が米国の国家利益を前面に掲げて外交を展開してくるなら、私たちも同じように私たちの国益を守るそのような交渉の原則を必ず貫く必要があります。トランプ大統領が正確でない情報の中で大袈裟な主張をしてくるならば、それを一つひとつ丁寧に説明する必要があると思います。

 例えばトランプ大統領は私に会って防衛費分担の話が出るたびに、在韓米軍は4万人だ、それでも韓国が防衛費分担を全くせずに安保ただ乗りをしている、と主張しました。しかし朝鮮半島の在韓米軍は2万8500人なんです。その2万8500人は米国議会が設定したラインです。そう説明して、その次に安保ただ乗りという言葉が事実ではないことについて説明しました。韓国の国防費がGDPに占める割合は約2.7%になります。米国の同盟国の中で最も高い割合です。当時、日本は1%余り、ヨーロッパ諸国は皆2%未満、だから2.7%なんて、こんなに高い国防費を負担した国はありませんでした。その上、私たちはベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争、朝鮮戦争以来、米国が行ったすべての戦争に参戦し、いわば同盟国の義理を果たしました。そのような国は韓国しかありません。

 それで韓国は絶対に安保ただ乗りをしているわけではなく、最も高い安保費用を負担する国であり、米国に多く助けられたが、韓国なりに米国を助けるために最善を尽くしてきたと、こういうふうに説明しました。それだけでなく、防衛費も決して少ない金額ではなく、それも韓国経済が発展するにつれて、新たに交渉するたびにいつも早く引き上げてきた、それに在韓米軍基地の敷地を無償提供していることとか、平沢(ピョンテク)米軍基地の建設費用100億ドルを韓国政府が負担したとか、こういう点まで考えると、韓国は十分に高い防衛費を分担していると、もちろんそのように説明したからといって、トランプ大統領が防衛費を5倍に一気に引き上げるとかの要求を撤回するわけではありません。しかし、そのような説明を聞くと、そこまで強くは要求できなくなります。

 米国側の交渉代表でさえも、韓国の立場を十分に理解する、だがトランプ大統領の指針があるから仕方がない、というような話をしたほどでした。そのような膠着状態が続いたため、私は交渉中断を宣言し、韓国の交渉代表団を撤収させたりもしました。それでも、トランプ大統領は何の報復措置も取りませんでした。それでトランプ政権時代は結局防衛費分担協定を妥結できず、ジョー・バイデン政権に移ってから、バイデン大統領とより合理的な金額の防衛費分担協定を、5年単位で結ぶことができました。

 そこで私は、防衛費分担協定が政治的な交渉にならないように、交渉代表を国防部や軍側の人物ではなく、企画財政部出身の財政専門家を交渉代表として送り出しました。それで、政治的な問題はすべて大統領に任せ、従来の防衛分担の枠組みから韓国がいくらの防衛費を分担するのが合理的なのか、そのような純粋に技術的な事項だけで交渉に臨むように指針を与えました。今後、新政権が米国と防衛費分担協定をもしすることになれば、その時の交渉代表団から経験談を十分聞いた方が良いという助言を申し上げたいです。

 おそらく米国が防衛費分担金交渉の再交渉要求をしてくるかもしれませんが、実は私たちは2026年から2030年まで防衛費分担協定をすでに締結しています。これは私たちには国会の同意まで経た一種の条約の性格を持っているため、その有効期間内に新たに交渉をしようというのは一種の国際ルール違反なのです。米国が防衛費分担の引き上げを要求するなら、新たな協定が満了する頃に、新たな協定を締結する時に要求すべきことです。そのような点を強く掲げながら、米国の防衛費分担再交渉を強く拒否する姿を見せる必要があり、もしやむを得ず再交渉に臨むとしても、最大限交渉の時期を遅らせ、日本やドイツの再交渉が先に行われた後に、その結果を見ながら韓国が交渉に乗り出す態度が望ましいと思います」

 
 
文在寅前大統領が7日、慶尚南道梁山市平山村の自宅でハンギョレのインタビューに応じている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―もし、次の政権が発足し、次期大統領が「トランプの扱い方」を大統領に聞くとしたら、どのような話をするか、もう少し話していただけますか。

 「まずは先ほど言った韓国の外交の原則、韓国が大韓民国の安保のためにも経済的側面でも韓米同盟を最大限重要視するということは誰もが知っていることなので、そのような原則のもと、韓国の国益を守る原則を確実に守っていく必要があります。ですから、受け入れるべきことは受け入れながらも、そうでない部分ではないと明確に線を引く必要があります。

 よく(米国が)強く追い詰めて要求してきたら、面と向かって断るのは難しく、その瞬間は曖昧に取りつくろってから帰ってきて実務的に他の道を模索をすることを考えがちですが、実は米国はそのような態度を最も嫌っています。ノーと言うべきことは面と向かってノーと言わなければならず、その時は何も言わず、まるで同意しているかのような姿を見せ、後になって他のことを言い出すことが最も嫌われるのです。むしろ同盟国の間で意見の相違があるのは当たり前のことで、相違を明らかにしたうえで同盟国間で協議していくのが最も健全な同盟だ、米国はその点を常に強調します。韓国の大統領と外交当局も常にそのような態度を持つ必要があります。

 首脳会談に臨む方々は、少なくとも朝鮮半島問題、あるいは韓米間の問題、いずれにしても米国との首脳会談で問題となり得る問題については、完全に熟知する必要があります。トランプ大統領が私と初めて対面した時、普通の首脳会談は互いに議題別に対話する内容をあらかじめ整理して順番にやりとりする、いわゆる約束組手で行われることが多いのですが、トランプ大統領はそのような外交の正攻法を完全に無視して、自分が気になる部分をやたらと質問するのです。時には攻撃的な質問をしたりもします。しかし、幸いにもその質問は私がすべて十分に分かっている問題だったので、十分うまく答えることができたし、そうした過程を経て、場が和み、その後は和気あいあいとして残りの日程を終えることができたのです。私の経験からすると、トランプ大統領は第一印象を非常に重要視する人に見えました。最初の会談がかなりうまくいったので、任期中ずっとトランプ大統領と良好な関係を維持することができたと思います」

ー大統領が今おっしゃった同盟間にも意見の相違は当たり前のことだというのは、とても良いお話だと思います。ところが、韓国の保守メディアは韓米間に少しでも意見の相違があれば、「韓米間に意見の相違がある」として1面トップ記事として掲載するなど、大きな問題であるかのように報じます。

 「例えば米国の省庁間でも意見の相違が多いんです。朝鮮半島問題について国務省と国防部も違うし、または大統領安保室の話も違うし、米国内部で異なる意見があるのは戦略的なものだ、『良い警官、悪い警官』というような戦略的なアプローチだと言いながら、韓国内部の意見の相違や韓米間に見解が違うと、まるで大変なことが起きているように、分裂しているかのように思うのは大きな弊害です。政府が外交を行う人々により多くの信頼を与え、十分に力を発揮できるよう後押しする必要があります」

―トランプ大統領は米国の大統領選挙の過程で、「自分は金正恩委員長とうまくやってきた」とよく言っていました。1期目の時のようにトランプ大統領が金正恩委員長と朝米首脳会談を再び進めるとみていますか。もしそうなら、私たちはどのように対応すべきでしょうか。

 「進めるでしょうし、すでに今進めていると思います。北朝鮮が対話の場に出てくるように誘導する言葉を使っているではありませんか。かなり多くの専門家が、トランプ大統領はウクライナ戦争の即時終息を約束しているため、その問題にまず取り組み、北朝鮮との対話はウクライナとロシア戦争が終わってからになるだろうと予測していますが、私はそうではないと思います。北朝鮮との対話は金正恩委員長側が呼応さえすれば、ウクライナ戦争の終息前にも実現する可能性があると思います。

 トランプ大統領としては1期目に外交を通じた北朝鮮の核問題の解決を目指しましたが、それは米国の歴代大統領ができなかったことなんです。やり遂げることができるなら素晴らしい業績になります。(トランプ大統領には)その手前で立ち止まった経験があります。それも自身の意志ではなく、本人は交渉する意思があったにもかかわらず、周りのネオコンに強く足を引っ張られ、最後までたどり着けなかったため、2期目には必ずそのような交渉目標を達成し、非常に大きな業績を残そうとする政治家としての野心を持っていると思います。

 ところが、私たちが今のように北朝鮮を敵視し、対話をしない政策基調を持ち続ければ、韓国は朝米対話から疎外され、パッシングされることを自ら招くことになるのです。ですから、韓国が早く北朝鮮との政策基調を対決から対話を進める方向に転換する必要がありますし、実際に朝米間で向かい合ったとしても、韓国がその対話を促進するうえで非常に重要な役割を果たさなければなりません。南北関係の進展なしに朝米間だけで何か問題を解決することはできないんです。仲裁者、促進者の役割を果たすためにも、韓国政府は速やかに対話基調に変えなければなりません。そしてそのような対話を通じて、北朝鮮の核やミサイルの脅威を完全になくしたり、減らしたりするトランプ大統領の努力を積極的に支持し、歩調を合わせていく必要があります」

―ところが、北朝鮮の金正恩委員長はハノイでの2回目の朝米首脳会談の結果にあまりにも失望し、交渉のテーブルにつくのは難しいだろうという分析もあります。大統領は北朝鮮も結局は朝米の対話に乗り出すとみていますか。

 「その代わり、もっと厳しい条件を掲げるでしょう。このかん北朝鮮の核とミサイルがはるかに発展したので、今では核保有国の地位を主張しているではありませんか。交渉の場には出てきても、これまでより厳しいことを求めるでしょうし、その点で朝米間の対話に入るための、神経戦のようなものが繰り広げられるでしょう。おそらく北朝鮮は核保有国の地位を主張しながら、過去のように非核化ではなく核凍結または核軍縮といった方向で交渉対話の目標を設定する可能性が高いと考えます」

―韓国では保守勢力を中心に、韓国も核を持つべきではないかという「核保有論」がますます高まる可能性も大きいと思いますが、これについてはどうお考えですか。

 「韓国独自の核武装だけでなく、一部で折衷案として提示した戦術核を再び韓国に配備することまでも、米国は絶対に同意していません。前回の韓米間の核問題交渉でも、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が独自の核武装論を手放す代わりに、核運用に関する協議をするということで、いわば核の傘を強化する方向で合意したことがありました。おそらく米国はそのような対応をするでしょう。現実的に私たちが独自に核武装をすることは不可能です。独自の核武装のためには、NPT体制から脱退しなければならず、そうすると、韓米同盟に非常に大きな亀裂が生じ、また国際社会から多くの制裁を受けることになります。韓国が核武装をすることになれば、日本、台湾も核武装の方に乗り出し、東アジア地域で核ドミノ現象も起こり得ますが、それは米国にとっては決して受け入れられない要求だと思います。しかし、米国側も韓国の要求をただ無視するわけにはいかないため、「完全な非核化」という最終目標を私たちが手放さないと言えば、米国もその点まで拒否したり否定したりすることはできないでしょう」

パク・チャンス大記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 
 

文在寅前大統領インタビュー(4)

「尹錫悦政権、中ロに背を向けたのは大きな過ち」

登録:2025-02-10 14:05 修正:2025-02-10 18:27

 

【単独インタビュー|韓日米軍事協力と北朝鮮】 
 
盧泰愚政権以来の韓国外交の伝統的な方向性が崩れた 
中ロとの関係悪化で国際的な「北朝鮮核抑止体制」が瓦解 
北朝鮮の「敵対的二国論」、金日成主席の遺訓も破って遺憾 
南北関係が悪化しても平和維持のための安全弁が必要
 
 
文在寅前大統領が7日、ハンギョレのインタビューで、パク・チャンス大記者の質問に何かを考えながら答える準備をしている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足から2年半の外交政策をどう評価しますか。特に韓米日軍事協力の強化が主軸でしたが、これに対する大統領の考えを聞かせてください。

 「尹錫悦政権が後退させた韓国外交は、他の国内政治のいかなる後退よりも(その影響が)はるかに長く続くかもしれません。まず朝鮮半島は世界で類を見ない、地政学的に米国、中国、ロシア、日本の4大強国に囲まれています。そのため、4大国いずれとも良い関係を維持してこそ、韓国の安全保障を守っていくことができます。4大国のうちどれか一方に味方し、どれか一方を敵に回した瞬間、韓国の安全保障は危うくなるのです。

 韓米日3カ国の軍事協力を強化するというのは、今や北朝鮮の核とミサイルの脅威がどんどん高まっているため、その対応として必要だというなら、一応理解できます。ところが、韓米日軍事協力を強化するにしても、他方では中国や北朝鮮との友好関係を維持していかなければならないのに、韓米日軍事協力を強化しながら、中国、ロシアに背を向け、逆に北朝鮮と中国、ロシアの三角協力体制を作ってしまったのです。そうやって互いに対立する関係になりました。韓米日の三角軍事協力が必要な理由は北朝鮮の核とミサイルを抑止するためなのに、それで抑止ができたでしょうか。むしろ、尹錫悦政権時代に北朝鮮の核とミサイルの能力はさらなる発展を遂げました。

 前政権では中国とロシアが韓国政府の朝鮮半島非核化政策を積極的に支持し、北朝鮮の核とミサイル挑発を抑止する役割を果たしていましたが、今や中ロと北朝鮮の三角協力が強化され、北朝鮮にとってはむしろ外交における風穴を開ける結果となりました。特に、ICBM発射のような挑発は前例のないものでしたが、以前なら国連安保理の制裁があってしかるべきでした。しかし、国連安保理の制裁は実際に追加されたでしょうか? 制裁に向けて一歩も踏み出せませんでした。なぜなら、ロシアと中国が拒否権を行使するからです。これまでは北朝鮮への追加制裁に対し、ロシアや中国が常に同意しており、制裁に加わっていました。このような国際抑止体制が完全に瓦解してしまいました。これは尹錫悦政権が自ら招いたことです。

 このような政治安全保障の側面だけでなく、経済的な面でも、米国と日本は中国と政治的に対立しているように見えても、政治面ではそうかもしれませんが、経済面ではむしろ過去よりはるかに交易が増え、非常に活発に協力しています。そうやって政治と経済を明確に区別しています。しかし、韓国は中国と経済的な面でも距離を置いて、経済的な面でもはるかに損をしました。ロシアとの関係でも同じことが言えます。私たちが伝統的に展開してきたバランス外交、このバランス外交というのは前政権で掲げたものではありません。盧泰愚(ノ・テウ)政権の北方外交以来、歴代のすべての政権、さらには保守政権でさえも、米国との同盟関係を重視しながらも、中ロとの関係を非常に重要に扱い、良好な関係を維持しようと多くの努力を傾けてきました。それが前政権にも受け継がれてきましたが、尹錫悦政権がバランス外交という韓国外交の伝統的な方向性そのものを崩してしまいました。

 これをかならず復元しなければなりません。米国との同盟を重視しながらも、中国との関係を修復する努力を傾けるべきですし、ロシアとの関係においても、ウクライナに対する軍事的支援協力などはもはやできなくなくなりました。ドナルド・トランプ大統領がウクライナ戦争の早期終息を公約したではありませんか。これからはウクライナ戦争の早期終息を進めるトランプ大統領の努力を支持し、歩調を合わせていく必要があります。ですから、おそらくウクライナ戦争が終息したら、その次に米国とロシアの関係、ロシアとヨーロッパとの関係も改善されるきっかけになると思いますが、韓国もそれを機にロシアとの関係を修復できるように準備し、努力していかなければなりません」

―南北関係は常に対立と緊張の関係でしたが、1991年の南北基本合意書の採択以降は南北ともに「統一を目指す特殊関係」という共通認識を持っていたと思います。ところが昨年、北朝鮮が「敵対的な二つの国家論」を打ち出したことで、南北関係に根本的な変化が訪れるのではないかとする見方もあります。北朝鮮の態度の変化についてどうお考えですか。

 「本当に残念なことです。韓国と北朝鮮が国連に同時加盟した当時、北朝鮮は非常に消極的でした。いわば、分断を固着化する恐れがあるという懸念を示したので、それを払拭するために南北間で『我々はたとえ国際法的には二つの国であっても、内部的には統一を目指すという特殊な関係にある』と誓い、それを国際社会に明言しました。だから、例えば南北間の商品交易で関税を課さないとか、開城(ケソン)工業団地で生産された製品に対してFTAを適用することなどに、国際社会の了承が得られたのです。このように韓国と北朝鮮が統一を目指す特殊関係というのは、北側では金日成(キム・イルソン)主席の時から受け継がれているほぼ遺訓のようなものです。

 ところが、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が今になってその遺訓も破り、統一を至上課題として考えていた基調もすべて捨て、これからは韓国は相手にせず背を向けると宣言したのです。私たちにとっては本当に残念なことです。北朝鮮が再び同じ民族の精神を強調しながら平和と統一を目指す、そういう基調に戻ることを願っています。

 でも一方で考えてみると、統一を目指す特殊関係というのは南北双方が互いに平和統一を目指して努力していく時だけ成立するものです。尹錫悦政権のように互いに敵視して対決する、そのようなスタンスを取りながら統一を目指す特殊関係だと主張するのは、それこそ偽善であり、空言なのです。尹錫悦政権の非常に強硬な対北朝鮮敵対政策のためにそのようなことが起きた、それもやはり尹錫悦政権が自ら招いたことだ、そう言えると思います。

 韓国と北朝鮮は国際法においては厳然たる二つの国に違いありません。北朝鮮がそのように主張する以上、韓国が二つの国であるという事実を否定することはできません。国連にもそれぞれ加盟している主権国家ですから。しかし、同じ民族からなる国で、互いに隣り合っている国ではありませんか。敵対関係の中で背を向けてしまうと、韓国にとっても、北朝鮮にとってもそれは悲劇です。二つの国であっても、互いに平和で仲良く暮らす、そんな良い隣国になるべきです。そのためには、少なくとも今の板門店(パンムンジョム)の連絡チャンネルとか、軍事ホットラインのような最小限の南北間の窓口を早く復元しなければなりません。さらに、9・19軍事合意も早急に復元して、たとえ南北関係が少々悪化しても、少なくとも平和は維持できる最後の安全弁のようなものは確保しておく必要があると思います」

 
 
7日午後、慶尚南道梁山市平山村の平山本屋で働いている文在寅前大統領の姿=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―今後、韓国が北朝鮮に対して南北和解政策を展開すれば、今のような北朝鮮の敵対的な対南政策が変わる可能性があると予想されますか。

 「当然そうだと思います。なぜなら、北朝鮮も国内の経済成長を最優先課題にしなければならないため、特に金正恩委員長はそれを最優先課題にしてきたのに、国際社会に背を向けて自分たちだけで自力競争の形で経済を成長させるというのは限界があるわけです。北朝鮮も国際社会における普通の国として国際社会と開放的な関係を持ち、また米国との関係や日本との関係を正常化していくというのは、経済成長のためにも欠かせないことです。金正恩委員長流に表現すると、北朝鮮人民の生活の向上のためにも必要なことです。北朝鮮が前政権のときに非核化への対応に乗り出した理由もそのためです。

 非核化する代わりに、国際社会の制裁の解除とともに経済成長に対する支援を受けられるなら核も放棄できる、そうして非核化対話に乗り出したわけですから、北朝鮮としては環境が整えば、またそういう保証さえあれば、いつでも韓国と再び対話する関係に戻ってくると思います。

 先ほど韓米日軍事協力の話をしましたが、実に虚しい結果であるのが、韓米同盟を最高に重視して他のすべてを犠牲にする態度をとったのに、トランプ大統領が米国の国益のために様々な圧力をかける政策を展開している今、韓国には例外を認めていますか? 全くそうではありません。それはそれで、また韓国は韓国として、また厳しい現実に直面しなければなりません。日本と関係が良くなったということをを大々的に掲げていますが、実際に日本から得たものは何でしょうか。実際、関係に何か変化がありましたか。本当に虚しい外交と言わざるを得ません。北朝鮮との関係も北朝鮮を打倒すべき対象であるかのように主張し、強硬な主張を並べて、向こうが挑発してきたら、それより百倍千倍で報復する、そうすれば、気持ちの面では国民もすっきりするかもしれませんが、それが国の安全保障を損ねる道であるのは言うまでもありません。それは国際的に韓国外交の地位を落とすことでもあります。

 覚えている方もいらっしゃると思いますが、前政権の時、トランプ大統領がG7体制の拡大を目指し、最初の拡大の対象に掲げた国が韓国でした。私たちにそれを打診してきました。他の加盟国が同意しなかったため、実現しませんでしたが、なぜ韓国が最初の対象国になったのかというと、日本はアジアで最も米国と近い国でもあり、大国ではありますが、アジア太平洋地域諸国の利益を十分に代弁する位置にいないと考えられていたからです。アジア太平洋地域でまた別の国を探しており、それが韓国だったのです。ところが、今のように私たちが自ら米国と日本の下位パートナーになってしまえば、国際社会で韓国外交の独自性を認め、尊重してもてなす理由は何もなくなるのではないでしょうか。

―大統領は在任中に3回にわたって北朝鮮の金正恩委員長と首脳会談を行い、史上初の朝米首脳会談への道も開きました。ところが、ハノイでの2回目の朝米首脳会談の失敗後は、朝米間、南北間の関係も非常に悪化し、今ではその時の成果はほとんど痕跡すら見当たらなくなりました。在任中の対北朝鮮政策を振り返るとしたら、どんな点が不十分で不足だった、残念だったと思いますか。

 「結果的に残念です。もっと進めることができていればと思います。ですが、先ほどもちらっと話しましたが、2017年の就任当時に高かった戦争危機を考えると、このように南北対話、そして朝米対話を通じて戦争危機を解消し、北朝鮮を平昌(ピョンチャン)冬季五輪に参加させ、また南北間で3回首脳会談をし、朝米間でも2回も史上初めての首脳会談を行い、そして5年間を通して朝鮮半島の平和を維持していったことは非常に大きな成果だと思います。

 特に今私たちが直面している朝鮮半島の安全保障の不安に比べると。当時の平和がどれほど大切だったかがよく分かると思います。今の状況では、当時のことがすべて水の泡のように感じられるかもしれませんが、しかしそうではないのが、先ほどのトランプ大統領と金正恩委員長の間の首脳会談をもし行うことになれば、それは先に2回の首脳会談があったからこそ可能なことです。その時立ち止まった線から一歩進むことができるのです。それはすでに大きな一つのマイルストーンとして残っていると思います。

 ただ、残念なのは、あまりにも期間が短かったことです。70年間戦争まで繰り広げた敵対関係を平和体制に切り替えるのは1〜2年、2〜3年でできることではありません。首脳同士で1、2回会ったからといって、それが実現するわけではありません。実際、南北間、朝米間の首脳会談があったのは2018年、2019年の2年でした。その後はすぐに米国が大統領選挙の局面に入り、対話を持続することが難しくなり、またコロナ禍が重なり、北朝鮮が非常に徹底した封鎖体制ですべての国境を封鎖する体制になったため、北朝鮮とのいかなる接触も難しい状況になりました。

 そのようにしばらく息を整える過程があっても、対話を再び続けなければならなかったのに、米国も政権が変わり、韓国も政権が変わり、その変わった政権がこれまでの北朝鮮政策を完全に覆すような政策を掲げてしまいました。これが一番残念なことです。南北関係、対話の持続のためにも、民主党が政権を維持しなければならなかったのに、それができなかったのが最も残念です。未練が残るのは、その中でも何とか開城工業団地や金剛山(クムガンサン)観光だけはよみがえらせることができていればと思っています。

 当時としてはハノイ会談の見通しは明るいと考えていたため、それが成功すれば制裁問題が部分的にでも解決され、これで開城工業団地や減価償却問題は自動的に解決できるため、その流れに任せてしまい、開城工業団地や金剛山観光については特に力を入れていませんでした。しかし結果からすると、国連安保理制裁に対する例外の承認を強く主張し、何とかしてそれを引き出して実現していれば、南北関係が完全に破綻するのを防ぐ最後の砦の役割を果たせたのではないかという未練は残ります」

 
 
7日、慶尚南道梁山市平山村の文在寅前大統領が運営する平山書店で、市民たちが本を買って記念写真を撮るために並んでいる=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―それと関連し、大統領在任期間の2020年に北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所を爆破しました。韓国国民にとってはショックでしたが、その時はどうでしたか。

 「あの時は言葉では言い表せないほど、衝撃を受けました。裏切られたと思いました。北朝鮮も板門店会談後に世界に、いわば金正恩委員長が世界の舞台にデビューしたと言われるほど、正常国家の姿を見せるために努力してきたわけですが、その一度の爆破で再び三流国家、ならず者国家のような姿に戻ったと思います。北朝鮮にとっても深刻な自傷行為だったわけです。今後、南北が再び対話を続けるなら、それはきちんと指摘して、北朝鮮から謝罪を受けるべき問題だと思います」

―最後の質問です。フェイスブックにて、大統領府で演説秘書官として大統領を補佐していた詩人のシン・ドンホ氏の著書『大統領の読書』を勧める投稿をしましたね。「政治をする人たちは本をたくさん読まなければならない」とおっしゃいましたが、在任中にかなり多忙だったと思いますが、本はどれくらい読みましたか。

 「もともと本好きで、大統領在任中もコツコツと読んで、本を勧めたりもしました。ただし、読書の方向性が変わりはしました。それまでは自分の好きな歴史分野とか、文学、そういったものをたくさん読んできましたが、大統領になってからは国政運営に何か役に立つような、いわば国家が進むべき未来を洞察できる体系とか、また当時新型コロナウイルスが広がっており、気候危機が深刻だったため、それに関連する本を主にたくさん読みました。大統領だけでなく、政治をする人々は本をたくさん読まなければなりません。本をたくさん読んだからといって、必ずしも良い政治をして良い大統領になるわけではないでしょう。ですが、本を読まないと洞察力や分別力を養うことができません。世の中があまりにも早く変わるので、学生時代に読んだ読書がすべてなら、その後変化する世の中を理解し、追っていくのは難しいでしょう」

パク・チャンス大記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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国民が思い描いた「責任ある大統領の姿」とは大きくかけ離れています。前大統領として、こうした尹大統領の態度と行動についてどうお考えですか。

2025-02-10 | なるほど、その通り
 

文在寅前大統領インタビュー(1)

「検察改革すると言った尹錫悦起用、後悔している」

登録:2025-02-10 10:17 修正:2025-02-10 12:21
 
【単独インタビュー|尹錫悦検事総長起用の過程】 
 
当時、尹総長の任命に反対する意見は少数 
「短気で制御できない、身内びいき」 
身近にいた人たちの評価なので苦悩 
検察改革を支持したから選択…悔やんでも悔やみきれない
 
 
文在寅前大統領が7日午後、慶尚南道梁山市平山村の自宅でハンギョレのインタビューに応じている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は今月7日のハンギョレのインタビューで、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長の抜擢、その後、彼がそれを足場として大統領にまでなった過程、戒厳と弾劾事態を見て抱いた自責の念を打ち明けた。文前大統領は「悔やんでも悔やみきれない」と言い、「尹錫悦政権の誕生に対して文在寅政権の人たちも責任から免れることはできないし、もちろんその中でも私に最も大きな責任がある」と述べた。文前大統領は「あのような人に政権を渡してしまったという自責の念が非常に大きかった。そのうえ今度は戒厳、弾劾事態が起きたので、夜眠れないほど国民に申し訳なかった」と述べた。尹錫悦検事総長を起用した過程については多くの人物が言及しているが、最終人事権者だった文前大統領が自らこのことについての考えを詳細に明らかにしたのは初めてだ。

-昨年12月3日夜、尹錫悦大統領の非常戒厳発表のニュースに接した時、文大統領はどう思いましたか。

 「本当にあきれました。当惑しました。私は実は知りませんでした。帰宅した秘書から電話がきて知ったんですが、最初は信じられないからどこかでユーチューブのフェイクニュースを見たのだろうという程度に考えて、テレビをつけて確認してみたら本当だったんです。それで大統領談話を2回3回と再放送するのを何度も聞いて、ようやく実感したんですが、本当に当惑するし、あきれたことです。

 非常戒厳というのは、韓国の憲法上の制度としては残っていますが、すでに数十年前に博物館の収蔵庫に入った遺物のようなものなんです。それを21世紀の天下に引っ張り出してきて国民に振り回すというのは、考えられますか? 野党勢力をすべて反国家勢力と呼び、反国家勢力を一挙に清算する、そういうのを聞いて、大統領は本当に妄想の病が深いようだと思いました。

 一方で、国際的にも非常に恥ずべき事件が起きたことについて、自分は前任の大統領としてどうすればよいのか悩みました。国会には戒厳解除を決議する権限があり、それがうまくいけばよいが、もし実際に国会議員たちが逮捕・拘禁されたり、または定足数が足りなくて直ちに決議があがらなかったり、そうなったら前任大統領として直ちにソウルに行かなければならない、行って民主党の国会議員たちと一緒に行動し、緊急に外国メディアとの記者会見などもしなければならない、せめて何か座り込みでもすべきだろうか、そう悩みました。

 幸いなことに、民主党中心の国会が迅速に戒厳解除を議決してくれましたし、おそらく国際社会も韓国という成熟した民主主義国家で非常戒厳だなんてといって最初は驚いたでしょうが、全国民と国会がともに力を合わせてそれに立ち向かい、戒厳解除を成し遂げた過程を見て、その民主主義の回復力に驚嘆したと思います」

-耳が痛いかもしれない質問をします。文大統領の在任初期に国政壟断捜査を主導したのが、当時の尹錫悦ソウル中央地検長でした。この過程で検察特捜部の力が強まったことでそれが検察改革の足かせとなり、尹錫悦は検事総長に抜擢され、その後、(当時野党の)「国民の力」に入党して大統領にまで上り詰める足場を築くことになります。現時点で当時を振り返るとしたら、どうお考えになりますか。

 「まずは、おそらく今、元検察官や元検事たちが国を意のままに壟断する、まさに検察王国の時代が来たから、あの時期に検察改革がもっと徹底してなされていたらという、そういう脈絡の話のようですが、まずはその国政壟断捜査というのは私たちの政権(文在寅政権)が始めたものではありません。朴槿恵(パク・クネ)政権時代から始まっていました。また、あの時は積弊清算に対する国民の要求がとても高かったため、あの時期に検察が捜査を適当に済ましてしまうように検察の権限を奪ったり力を弱めたりするというのは考えられませんでした。だから検察改革は段階的にアプローチするしかなく、時期を調節しなければならない問題でした。

 それだけでなく、韓国の検察改革の本質、それは検察の持つ捜査権を警察にすべて渡し、検察は起訴庁としての役割を果たすようにするというものですが、それは70年の制度を変えることなので、一朝一夕に変えることは不可能です。これは意志の問題ではなく、現実の問題です。直ちに検察の捜査権をすべて警察に渡すのなら、警察がその捜査を担えなければなりませんが、大韓民国の警察が今それを担える水準に来ているのか、または警察が国民からそれだけの信頼を得られているのか、そういうことを考えると、それは一朝一夕にできることではありません。

 だから、検察の捜査権限を段階的に警察へと移し、検察の捜査権限を徐々に縮小していき、将来は検察の捜査権限がすべて警察に渡るようにするというこの過程は、数年間にわたって、いわば根を下ろしながら少しずつ段階的に、漸進的にやるしかない課題でした。われわれの政権の間に、ここまではやらなければならないと考えた検察改革は成し遂げました。検察の捜査権限を狭め、その次に公捜処(高位公職者犯罪捜査処)も設立しました。そして警察は国捜本(国家捜査本部)に、そのようにしました。だから、もう一歩踏み込んだ検察改革は次の政権が継続すべきだったのですが、次の政権はそれに逆行する政権となってしまったんです。だから、あの時の検察改革は不十分だったというのは、事後的にやや残念に思ってする話であって、当時を穏当に評価するものではないと考えます。

 幸いなことに、今回の尹錫悦政権のあり方、そして戒厳まで含めて、これを見て今や国民は検察の完全な改革、検察の捜査権を全面的にすべて警察に移し、その検察は起訴庁としてのみ存続すべきだという、この検察改革の方向性に対して、すべての国民が誰も異議を唱えないほどコンセンサスを得たと思います。だから次の政権は早急にそのような検察改革を完成させ、まとめる必要があると思います」

 
 
文在寅前大統領が7日午後、自ら営む慶尚南道梁山市の平山書房で、本を購入する市民たちと言葉を交わしている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

-もう少し具体的にうかがいます。尹錫悦検事を検事総長に起用する際、大統領府の内外で意見がはっきりと割れた、と当時民情首席だったチョ・グク前祖国革新党代表は本に書いています。それでも文大統領が尹錫悦検事を検事総長に起用した理由と、その過程はどのようなものだったのか、少し詳しく説明していただけますか。

 「そうですね。いずれにせよ、それが尹錫悦大統領誕生のいちばんの端緒になるわけですから。後悔しています。実際にあの当時、賛否が分かれていたのはその通りです。割合で言うと、(尹錫悦検事総長の任命を)支持して賛成する意見の方がはるかに多く、反対意見は少数でした。民主党は全面的に支持し、賛成するという意見でした。でも、その反対意見は数的には小さくてもそう無視できなかったのは、私のみるところ相当な説得力があったんです。

 どんな人たちだったかというと、尹錫悦中央地検長時代に例えば法務部長官をしていたとか、とにかくその時期に尹錫悦に近くで接した人たちです。そういう人たちは尹錫悦候補について、短気な性格で、自己制御がうまくできないことが多くある、そして尹錫悦師団という言葉ができるほど非常に身内びいきなスタイルだという意見を(述べました)。それは後で考えるとすべて事実で、その話は正しいことが後に確認されたわけです。とにかく近くで接した人たちがその接してきた経験にもとづいて言っているため、人事においてはそういう意見が重要なんです。だから反対の数は少ないけれど十分に耳を傾けるに値する内容だったので、でもまあ多数は支持、賛成していましたから、それでたいへん悩みました。

 そこで、チョ・グク民情首席(当時)と私とで、検事総長候補推薦委員会から推薦された候補は4人だったのですが、その4人全員をチョ・グク首席が一人ひとりインタビューして、当時私たちが最も重要だと考えていた検察改革に対する各候補の意志や考えを確認することにしたのです。チョ・グク首席が4人全員に会ってみた結果、3人は全員検察改革に反対の意見を明確にし、尹錫悦候補だけが検察改革に対して支持する、そういう話をしたというんです。

 それで最終的に2人に絞って考えました。(尹錫悦候補ではなく)もう1人はチョ・グク首席と同じ時期に大学に通っていて、また私たちの政権で検察の高位職をしており、チョ・グク首席との人間的な関係も悪くなく、意思疎通もかなりうまくいく、そんな関係だったんですが、残念ながらその方は検事として検察改革には賛成できないと、検察改革に対してはっきりと反対意見を述べたということで、いわば検事マインドが強いということです。そして、もう1人が尹錫悦。コミュニケーションは少し取りにくいかもしれないが、検察改革の意志だけは肯定的に語っていたし、実際に尹錫悦候補は中央地検長時代に検察改革に対して好意的な態度を示したことがありました。それで悩んだわけです。今思えば、それでもチョ・グク首席とコミュニケーションが取れて関係の良好な、そういう方を選ぶのが理にかなっていたのかも知れません。

 でも、あの当時、私とチョ・グク首席は検察改革というものに、いわば肩に力が入り過ぎていたというか、それにこだわりすぎていたというか、だから多少問題があっても尹錫悦候補を選んだのですが、そのせいでその後に非常に多くのことが起こったため、あのときの選択は悔やんでも悔やみきれません」

 (文前大統領は公式インタビューの終了後の少し自由な会話で、チョ・グク前祖国革新党代表のことを「最も痛い指」だと言い、「限りなく申し訳ない」と語った。そして、「チョ・グク前代表がすごいのは、(尹錫悦ではない方の)別の検事総長候補と親しかったのに、その候補者を推薦しなかったことだ。検察改革に消極的だという理由からだ。あの時、チョ・グク前代表と親しいその候補を推薦していたなら、その人にさせたはずなのに、そうはしなかった」と語った)

-尹錫悦検事総長は自分の期待とは異なる道を歩んでいる、期待外れだと考えるようになったのはいつからですか。

 「チョ・グク首席が法務部長官候補に指名された時、チョ・グク候補の一家に対する捜査は明確にチョ・グク首席の主導した検察改革、また、今後法務部長官になったらさらに強力に進められる検察改革に対する報復であり、足を引っ張る行為だったわけです。その時初めて分かったんです。そのため、チョ・グク長官候補の家族はそれこそ粉々になってしまったわけです。実に人間的に皮肉です。尹錫悦をソウル中央地検長に起用する際、最も支持したのがチョ・グク首席で、検事総長に起用する際にもチョ・グク首席が味方になったわけですが、逆に尹錫悦総長(当時)からそのようなことをされたのですから、実に人間的に皮肉なことです」

-尹錫悦総長がチョ・グク法務部長官の人事聴聞会を前にして捜査を開始した際、自分は起用する人間を間違えたと後悔しましたか。

 「はい。なぜなら、尹錫悦総長が『いくらチョ・グク首席でも容認できないのが、いわゆる私募ファンドだ』と言って、それは詐欺だということだったわけです。でも実際に私募ファンドはすべて無罪になったじゃないですか。まったく関係のない、単なる、表彰状だとか何だとか別のものを持ち出して、家族をみんなああいう風にしてしまったわけです」

-文大統領の責任論を主張する人々がいます。結果論的な話ですが、尹錫悦大統領は散々な失敗をしたわけですが、その失敗の一部については彼を起用した文大統領の責任ではないかというのです。こういった主張についてどう思われますか。

 「それは問題ではなく、とにかく尹錫悦政権はあまりにもだめでした。水準の低すぎる政権、今回の戒厳の前も本当に何もできていなかったし、水準の低い政治をしていましたが、私たちはこのような人らに政権を渡してしまったという自責の念、それがとても強くあります。そして、そのような姿を見るたびに本当に国民に申し訳ないと思いました。それに加えて今回の弾劾、戒厳事態が起きたものだから、本当に言葉にできないくらいの自責の念で、眠れないほど国民に申し訳ない気持ちです。

 その始まりが尹錫悦検事総長の起用なのは確かですが、検事総長というポストは大統領になるポストではありません。そもそも検事総長は、むしろ退任後に政界入りすることが批判されるポストです。なぜなら政治的中立性が要求されるからで、検事総長への起用が終わりではなく、その後に例えば尹錫悦検事総長に対する何らかの懲戒、そのような過程が滑らかにうまくいかず粗雑になったことで、逆に非常に多くの逆風を浴びたし、そのために尹錫悦検事総長を政治的にとても大きくしてしまったわけです。それで、まるで文在寅政権と対極にある人物のようになってしまったために、それが『国民の力』の大統領候補にまでしてしまったんだと思います。

 しかし、それもまた終わりではなく、さらに残念なのは、実は前回の大統領選挙です。なぜなら、尹錫悦候補は前回の大統領選の過程ですでに示していたんです。この人は言ってみれば有能な検事かもしれないけれど、大統領の資質はまったくない人、何らかのビジョンだとか政策能力みたいなものも全然なく、準備も全くできていない人だということが、あの時すでにあらわになっていたわけです。だから、最初はくみしやすい相手だと思ったんです。私たちの側の候補(イ・ジェミョン候補)の方がビジョンや政策能力、または大統領としての資質やそのような部分がはるかに優れているので、簡単に勝てるだろうと考えていたんですが、おそらくビジョンや政策能力をめぐって競争する選挙になっていたなら当然そうなっていたでしょう。歴代の大統領選挙はそうやってきましたから。ところがそうは流れず、ある種のネガティブ選挙によって、まるでどちらがより嫌われているかを競っているかのように、そのように選挙が流れてしまったし、その枠組みから結局は抜け出せなかったことが敗因となってしまったんです。

 そのように全過程を通じて後悔するところが数々ありますが、総体として尹錫悦政権を誕生させたということに対してわれわれの政権(文在寅政権)の人たちは、もちろん私に最大の責任があるはずだし、そこから私たちは免れないと思います。国民に申し訳なく思っています」

-先ほどおっしゃいましたが、当時、チュ・ミエ法務部長官と尹錫悦検事総長が鋭く対立していました。あの時、いくら検事総長が任期の保障されたポストだったとしても、なぜ大統領の人事権を行使して検事総長を辞めさせなかったのか疑問に思っている人もいます。これについてはどのように説明しますか。

 「そのような部分はハンギョレ新聞のようなメディアがきちんと伝えるべきことですが、そう言ってしまうと、私たちは帝王的大統領を批判しながら大統領に帝王的な権限権力を行使すべきだと要求するのと同じことです。矛盾する主張です。まずは、大統領には検事総長を解任する人事権がありません。だから、そのような権限はそもそもないんです。やるとしたら、政治的に圧力を加えることはできるかも知れません。

 例えば『信頼しない』ということをおおっぴらに言うとか、マスコミを通じて辞任を迫るとか、実際に過去の権威主義時代には、大統領が少し不快に思っているということをちょっとほのめかしただけでも検事総長が自ら身を引く、そんな時代がありましたから。今はもう時代が違います。今はそのように迫ったら、尹錫悦総長本人はもちろんのこと、検察組織全体が反発するし、当然保守メディアもいきり立つでしょう。そうなれば途方もない逆風が生じ、それはまた大統領選で非常に大きな悪材料になるでしょう。それを選択することはできませんし、大統領に権限があるように考えるからそのようなことを言うわけで、そうではないということは明確にしてほしいと思います。

 あの当時、尹錫悦総長を辞めさせる唯一の方法は、法務部長官は懲戒建議で懲戒解任ができるため、実際に当時の法務部長官はそれを試みたんです。ところが、その過程がうまく処理されればよかったのですが、そのように処理されずに進んだため、解任もできずに逆風を浴びて政治的にあの人を大きくする結果になってしまったんです」

パク・チャンス大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

 

文在寅前大統領インタビュー(2)

「民主党、包容・拡張する時…イ代表も共感」

登録:2025-02-10 09:47 修正:2025-02-10 12:53
 
【単独インタビュー|尹錫悦弾劾と民主党の進路】 
 
内乱否定する尹錫悦、大統領として醜く悲しい 
早く国の安定に協力するのが大統領に残された道理 
金大中・盧武鉉「帝王的大統領」ではなかった 
内閣制こそ「帝王的首相」の恐れも…任期4年の再任可能な大統領制への改憲が現実的
 
 
文在寅前大統領が7日、慶尚南道梁山市平山村の自宅でハンギョレのインタビューに応じている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は今「内乱ではなく、警告するための戒厳だった」と主張しています。憲法裁判所の弾劾裁判では、国会本会議場で議員を引きずり出せと指示したことはないと述べるなど、すべての責任を軍の指揮官に転嫁する姿を見せていますが、国民が思い描いた「責任ある大統領の姿」とは大きくかけ離れています。前大統領として、こうした尹大統領の態度と行動についてどうお考えですか。

 「まず悲しいです。実に醜くて恥ずかしい姿ではありませんか。戒厳宣布が間違っているのは言うまでもないが、そのせいで2カ月以上、国中が完全にひっくり返り、国民が眠れず、不安に陥り、寒い夜に街頭で抗議デモをせざるを得なくなり、国民の生活も経済も非常に苦しくなったのに、それについて少しでも責任感があるならば、今からでも早く責任を認めて国を安定化させることに協力するのが大統領に残された道理ではないでしょうか。なのに、何とか生き延びようとする態度が非常に醜く、恥ずかしく、(そのような姿を見ていると)悲しくなります」

―にもかかわらず、尹大統領を守ろうという保守勢力のデモは、ますます暴走しています。尹大統領に拘束令状が発付された日には、デモ隊が裁判所を襲撃し、暴動を起こしたこともありました。極右勢力がファシズムに進んでいるという分析もありますが、こうした現象についてどうお考えですか。韓国社会はどのように対応すべきでしょうか。

 「あの人々の多くは誤った情報、フェイクニュースなどに扇動されており、また付和雷同しているのです。だから、まずは憲法裁判所を通じた弾劾手続き、その次に裁判所を通じた刑事処罰の手続きができるでだけ速やかに行われ、大統領の戒厳宣布行為が反憲法的な行為であることを憲法裁判所が早く判断を下し、またそれが内乱行為として厳しく罰せられるべき行為であることを裁判所が早く確定すれば、多くの国民がきちんと判断できるのではないかと思います。当然その過程で非常に暴力的なデモに対しては断固たる処罰が下されなければならないと思います。

 さらに根本的には、極右ユーチューバーを通じたフェイクニュース、扇動、それによる国民分裂、またそれを通じた極右・過激派の勢力獲得などは、我が国だけの問題ではなく、ヨーロッパや米国も同じように体験している問題です。実際に多国間首脳会議では、首脳たちが議題の他に何か議論する時間ができれば、一様に懸念していたのがフェイクニュースを通じた極右勢力の浮上でした。特にヨーロッパ諸国がそのような懸念を抱いていました。ところが、問題はそれに対するこれといった対応策を用意できていないことなんです。

 ユーチューブを通じたフェイクニュースを広める行為を規制しなければならないのですが、この規制が下手に行われると、これが表現の自由を侵害する恐れがあるため、むしろ市民社会とか革新的な報道機関などがこれにもう少し先頭に立って反対しているのが現実です。そのような懸念も十分に一理ありますし、尊重しなければなりませんが、極右ユーチューブのフェイクニュースの生産とそれによる国民扇動と分裂、こういうことが国の存立を危うくする段階に来た、いわば大韓民国をほとんど政治的内戦状態に追い込んでいることが、今回の戒厳の過程を通じて確認されたではありませんか。これ以上放置できない問題です。なので今は、本当にどのように適切な水準でそれを統制し規制するのかについて、韓国社会が知恵を集めなければならないと思います。

 ユーチューブのフェイクニュースだけでなく集会やデモも同じです。集会・デモも本来自分の主張を社会に知らせるために認められる基本権です。ところが、今やそのような集会・デモの本来の目的を通り越して、非常に嫌悪的な集会・デモや他の人々を苦しめるための目的の集会・デモだとか、さらに高性能マイクと録音機一つさえあれば集会・デモの自由という名のもとに、終日人を罵倒する録音を流すことができるのが今の現実です。韓国社会は過去の権威主義時代に集会・デモの自由を侵害された経験があるため、民主化されてからは非常に寛大に(その権利を)拡大し続ける方向に進みましたが、今は合理的な規制のようなものを模索すべき時になったと思います」

―1987年6月の抗争以後、韓国にはそれなりに民主主義が根付いたと多くの国民は思っていました。ところが、今回の非常戒厳事態を見ると、必ずしもそうでもないようです。今後、民主主義を強固にするためにはどうすればいいでしょうか。

 「まずは弾劾後に早期大統領選が行われると信じていますが、早期大統領選で政権交代を確実に成し遂げ、いわば確実な民主主義のレジリエンス(回復力)を見せなければなりません。大統領選の過程で(大統領にふさわしい人を)きちんと選ぶことが本当に重要です。ネガティブ攻勢に乗って人を選んでしまうと、今回のようなことがまた繰り返されるのです。だから大統領選で最も重要なのは、誰が大韓民国を導いていく未来のビジョンを持っており、それを遂行できる政策能力を持っているか、どれほど大統領になるための準備ができているか。これをきちんと見て選択をすれば、今回のようなことの再発を防げるでしょう。

 そして、先ほど話したように、今、民主主義の危機は韓国だけのことではありません。 世界中で民主主義の危機を語っているではありませんか。ヨーロッパの場合も、極右政党が今ちょうどあちこちで第1党に浮上しているような状況ですし、米国もドナルド・トランプ大統領の当選について民主主義をめぐる危険なシグナルとして受け止めている人がたくさんいます。だからこそ、民主主義を守っていくためには、民主主義を脅かすある勢力、先ほど話した過激なユーチューブやフェイクニュースをまき散らして扇動したりする行為に対して、民主主義を守り抜くことができる防御策が必要だと思います。

 これまではその点について誰もが必要性を考えながらも、それが表現の自由を侵害したり、あるいは集会とデモの自由を侵害したりするという理由で、踏み切ることができませんでしたが、これからは本格的に知恵を集める時だと思います」

 
 
文在寅前大統領が7日、慶尚南道梁山市平山村の自宅の庭で飼育している鶏について説明している=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―12・3非常戒厳宣言後の野党第一党「共に民主党」の対応についてはどう評価しますか。民主党とイ・ジェミョン代表にどんな話をしたいと思いますか。

 「本当にうまく対応したと思います。民主党が速やかに国会に集結し、早いうちに戒厳解除の議決をしたことで、いわば戒厳を失効させましたから。もちろん、多くの国民の皆さまが力を貸してくださいました。このように驚くべき民主主義のレジリエンスを示すその過程で、民主党が先頭に立ったことを非常に誇りに思っています。弾劾訴追も民主党が主導し、弾劾裁判が開かれ、また尹錫悦大統領は刑事上でも起訴されてこれから裁判を受けることになるため、これからは民主党がもっと国政に責任を負うという姿勢を持たなければならないでしょうし、国民もそれを期待しているのではないかと思います。

 それでこの前、イ・ジェミョン代表に、今は本当に経済が厳しく、補正予算があまりにも急がれるから、全国民支援金とか、地域貨幣とか、補正予算の規模とか、これらのような民主党流の補正予算を進めようと欲を出さずに、政府側に全面的に協力して補正予算が一日も早く実行できるようにした方が良いと助言し、イ・ジェミョン代表も同意しました。実際にそのような立場を発表しました。これから、政府与党が早く野党と協議して迅速に補正予算を樹立し、また実行して国民の暮らしを安定させていくことを願っています。

 民主党の次の課題は必ず早期大統領選で政権を取り戻すことです。それが今、民主党に与えられた一つの歴史的責務だと思います。そのためにイ・ジェミョン代表に申し上げたいことは、民主党が勝つためには必ず民主党がもう少し包容し拡張する姿を見せなければならないということです。そして、その拡張された後に拡張された力を一つに結集する団結が最後の段階で行われなければなりません。

 民主党が勝利を収めた2017年の大統領選挙を振り返ってみますと、その時は私とイ・ジェミョン候補、アン・ヒジョン候補の3人が非常に激しく競争しました。熾烈な競争を通じて民主党は大きく拡張することができました。そして、拡張されたうえで団結することで、我々は政権交代を成し遂げることができました。ところが今、民主党にはその当時のイ・ジェミョン候補のような方、その当時のアン・ヒジョン候補のような方々がいません。イ・ジェミョン代表を支持する人だけで51%になるかというと、そうではないのが現実ではありませんか。競い合い、それを通じて支持ももっと広く集めることが必要だと思います。外部の祖国革新党もその役割を果たさなければなりません。その後、汎野党圏が一つに力を合わせて政権交代をやり遂げなければならないのです。

 こういうことについて、ある活動や競争について民主党内の一部でそれを分裂だと批判し、押しのけるのは本当に望ましくないことです。そのようなことが民主党をさらに狭めてしまうのです。前回の総選挙の時、祖国革新党の役割だけを見ても、当時民主党内の多くの人々が分裂だと批判しましたが、結局祖国革新党が成し遂げたのは拡張だったと思います。祖国革新党も成功しただけでなく、民主党もそのおかげでより多くの議席を確保することができました。民主党がもう少し開かれて包容し拡張していき、その後に再び力を集めるそのような過程にうまく導いていくことをイ・ジェミョン代表にお願いしたいです」

 (文前大統領は公式インタビューが終わった後、「拡張と包容」に関してこのように付け加えた。「今、党内でイ・ジェミョン代表にはライバルがいないのではありませんか。そうであるならなおさら拡張しなければなりません。(旧正月連休の時に訪れた)イ・ジェミョン代表にもそのような話をしました。イ代表も私と同じ考えです。だけど、周りにに少し強硬派の人たちがいるみたいで…」)

―今のお話は、包容と拡張を成し遂げた後に団結するのが望ましい、そういう意味だと理解すればよいのでしょうか。

 「はい、そうです。団結とは、最後に我々の代表選手、誰が代表選手になっても、その代表選手に向けて団結することです」

―大統領は2018年3月に国会に任期4年で再任可能な大統領制(現行は任期5年で1期限り)への改憲案を発議しました。ところが当時野党だった「国民の力」の前身である「自由韓国党」の反対で議決定足数にならず廃棄になりました。最近、再び改憲に関心が集まっています。現実的に大統領選挙前の改憲は難しいと思いますが、次期政権での改憲についてどうお考えですか。

 「大統領選前の改憲は難しいが、大統領選と同時に改憲することは現実的に可能です。だから大統領選と改憲国民投票を一緒に行うこともできます。だから改憲が行われると、新たに選出された大統領がその改正された憲法の適用を受けるということになります。改憲案が公告された後に、国会が60日以内に議決すれば良いし、また30日以内に国民投票に回付しなければならないので、国会が議決する日付を30日以内に繰り上げるだけで十分可能です。ただしそうするには、与野党と政府が少なくとも改憲に対する最小限の合意を実現しなければなりません。今回の戒厳事態について言えば、二度とそのようなことが起きないよう、最低限の改憲に合意すべきです。ところが、今の政府や与党『国民の力』の行動からして、そのような反省があるようには見えないし、だから改憲はできそうにありません。

 ならば、次の大統領選の時に改憲を公約に掲げ、そうして当選した大統領が就任当初に改憲を成し遂げること、それがもう現実的な案でしょう。実は私も(2017年の大統領選)当時、そのように選挙の時に公約して就任後に改憲案を発議したのですが、その時は少数与党だったため、改憲を成し遂げることができませんでした。しかし、今は民主党が多数党なので、十分進められる立場にあります。そうなることを願っています」

 
 
文前大統領が運営する慶尚南道梁山市の平山本屋の柱に、市民たちが残した文と写真、絵がぎっしりと貼られている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―今、改憲論が高まっているのは、主に帝王的大統領制に対する問題意識によるものだと思います。選挙で選ばれた大統領が軍を動員して国会を掌握しようとしたという衝撃が大きいのですが、「帝王的大統領制」についてはどうお考えですか。

 「韓国の大統領制が帝王的大統領制だという指摘には同意できません。金大中(キム・デジュン)大統領や盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が帝王的大統領でしたか。(むしろ)あまり力のない大統領でしたよね。私も帝王的大統領だったとは思っていません。言ってみれば、大統領の権限を乱用する、そういう逸脱する大統領たちがいたわけです。皆さんご存知のように、全員国民の力側の大統領でした。しかし、だからといってそれを帝王的大統領制だとして、内閣責任制に変えれば解決するのか。内閣責任制になったら、もう政府権力と行政府の権力と国会権力を一人が持てるようになるではありませんか。そうなれば、まさに帝王的党代表、帝王的首相になり得ます。ですから、これは制度の問題ではなく、結局は人の問題で、運用の問題だと思います。

 もちろん、今の大統領制で大統領の権限が過度に肥大化しているところは引き続き権限を減らしていき、国会の統制権限をさらに高めていくような改憲はしなければなりません。そのような土台の上で任期4年・再任可能な大統領制への改憲が実現可能であり、また国民が支持できる案ではないかと思います。任期4年で再任可能な大統領制への改憲になっても大統領制であることは同じではないか、こう言えるかもしれませんが、そう変われば少なくとも最初の4年間は次の再選を見据えているので、さらに国民の世論に耳を傾けるような政治をせざるを得なくなります。すると、2期目の時はもうそうしないのではないかと思うかもしれませんが、2期目は1期目に行った政策基調を続けていくため、またそこから逸脱する可能性ははるかに低くなります。

 ですから、任期4年で再任可能な大統領制への改憲とともに、大統領の赦免権とか、先ほどもお話しましたが、戦時事変でもないのに戒厳令を敷くことができるとか、そういう部分は抑制し、それに対して国会の統制権をさらに強化するというような、こういう類の改憲ができるのではないかと思います」

―(文前大統領が)大統領に当選した時も弾劾後でしたが、その後の広範囲な弾劾連帯が検察の捜査とかいろいろなことを経て、あまりにも狭くなったのではないか、それが文在寅政権の国政運営にも負担になったのではないか、という批判があります。それについてどうお考えですか。

 「むしろその反対について言わせていただきたい。今、戒厳以降に弾劾裁判に入り、(尹錫悦大統領が)拘束起訴され、このような状況であるにもかかわらず、あちら(尹大統領と国民の力側)が何をしているのかを見てください。そのような状況でも、戒厳は正当だったと詭弁を並べ、むしろこちら(民主党側)が内乱だと言い張っているではありませんか。むしろそうやって結集しています。(一方で民主党側としては、)いまでは金大中大統領は歴史的に評価されていますが、金大中大統領の頃はまるで歴代最悪の大統領であるかのように、批判され罵倒されました。失敗した大統領とまで言われました。盧武鉉大統領はどうですか。支持率はどん底でした。振り返ってみると、盧武鉉大統領こそ本当に多くの改革を成し遂げたにもかかわらず、イラク派兵で支持が離れていき、韓米FTAでさらに支持が離れていき、そうしてついには退任の頃には支持されなくなり…。私はこちら側もそうだと思います。

 もちろん、こちら側の人たちは価値を重視するので、自分が考える価値と合わなければ批判することもあります。それがこちら側の特性ではありますが、しかし、弾劾連帯というのがもしあったというのなら、弾劾連帯がそんなふうに崩れてはいけない。はるかに堅固でなければならないのです。文在寅政権が(時代に)逆行した政権でしたか。期待には及ばなかったかもしれませんが、その方向に向かおうと努力した政権であることは明らかです。ならば、弾劾連帯というのがあるなら、最後まで支持して後押しして、新しい政権を生み出すところまで行かなければならないのではありませんか。期待に及ばなかったから、弾劾連帯が瓦解して尹錫悦政権を誕生させたんでしょうか」

パク・チャンス大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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今、夢から現実へ変わろうとしている。10年後には、空飛ぶクルマによってこれまで1-2時間かかっていた通勤時間が10-20分に短縮され、都市に住む人々は渋滞に悩まされることがなくなるだろう。

2025-02-08 | 市民のくらしのなかで

空飛ぶクルマが私たちのもとへ「飛来」

人民網日本語版 2025年02月07日10:42
 

今年1月初めに米国ラスベガスで開催された世界最大の電子機器見本市「コンシューマーエレクトロニクスショー(CES)」で、中国の広東匯天航空航天科技有限公司(小鵬匯天)が開発した分離式の空飛ぶクルマ「陸地航母」が、初めて世界の舞台に登場して注目され、来年から納入される予定だ。(文:張揚軍・清華大学車両運載学院教授、空飛ぶクルマ動力研究センター長)

未来の交通の無限の可能性を秘めた空飛ぶクルマは、今、夢から現実へ変わろうとしている。10年後には、空飛ぶクルマによってこれまで1-2時間かかっていた通勤時間が10-20分に短縮され、都市に住む人々は渋滞に悩まされることがなくなるだろう。

今では、空飛ぶクルマの定義がより具体的になっている。狭義の空飛ぶクルマは地上を走行し、空中も飛行できる陸空両用車を指し、広義の空飛ぶクルマは大量輸送用の電動垂直離着陸機(eVTOL)を含む。

2024年9月25日、浙江省杭州市で開催されたグローバルデジタル貿易博覧会で、ティルトローターを採用した「空飛ぶクルマ」のティルトローター電動垂直離着陸機(eVTOL)「AE200」を眺める来場者。(撮影・龍巍)

2024年9月25日、浙江省杭州市で開催されたグローバルデジタル貿易博覧会で、ティルトローターを採用した「空飛ぶクルマ」のティルトローター電動垂直離着陸機(eVTOL)「AE200」を眺める来場者。(撮影・龍巍)

2024年に中国汽車工程学会(China-SAE)が発表した中国初の空飛ぶクルマに関する研究報告書「空飛ぶクルマ発展白書1.0」によると、21世紀の電動スマートカーの発展が、電動スマート航空の発展に着実な産業の基礎を固めた。eVTOLは広義の空飛ぶクルマとして、航空機・自動車の電動スマート技術と産業チェーンとの融合を通じ、地上を走る自動車のように大量輸送用の交通手段になるものと期待され、広義の空飛ぶクルマの概念が業界のコンセンサスとなった。

未来に目を向けると、空飛ぶクルマは今、私たちのもとへ「飛来している」。同白書によれば、空飛ぶクルマはこれから3つの発展段階をたどる。まず2025年からの商用飛行がスタートする1.0の段階で、物を積んだeVTOLが商用化をスタートし、人を乗せたeVTOLが特定のシーンで実証応用をスタートする。次は2035年頃からのスマート化が加速する2.0の段階で、スマートeVTOLの空飛ぶクルマの大規模な応用が加速し、低空域の移動における主要な交通手段になる。そして2050年頃からの立体的な普及へと進む3.0の段階で、陸空両用の空飛ぶクルマの大量輸送の応用が実現し、低空域交通と地上交通が深く融合し、3次元的で立体的なスマート交通システムが構築される。

2024年5月3日、北京モーターショーで、小鵬匯天の陸空一体型の空飛ぶクルマを眺める来場者。(撮影・唐克、写真提供は人民図片)

2024年5月3日、北京モーターショーで、小鵬匯天の陸空一体型の空飛ぶクルマを眺める来場者。(撮影・唐克、写真提供は人民図片)

世界に目を向けると、多くの国が空飛ぶクルマのイノベーション応用ペースを加速させており、その発展の道筋は主に3つある。1つ目は、機械航空から電動スマート航空への前進だ。米国のジョビー・アビエーション、欧州のエアバス、中国の上海峰飛航空科技有限公司(峰飛航空)、沃飛長空(成都)有限公司(沃飛長空)、追夢空天科技(蘇州)有限公司(追夢空天)などの企業は、従来の航空機の設計の経験と技術による優位性に基づいて空飛ぶクルマを発展させる。2つ目は、電動スマート自動車から電動スマート航空への拡大だ。空飛ぶクルマの産業チェーンの約85%は電動スマート自動車と関連があり、電動スマート自動車の発展は空飛ぶクルマのためのしっかりした産業チェーンの基礎を固めた。たとえば、小鵬匯天と広州汽車集団は電動スマート自動車産業チェーンでの優位性を利用し空飛ぶクルマの開発を加速させている。3つ目は、マルチロータードローンから電動スマート航空への進出だ。マルチロータードローンの発展は電動スマート航空のためのある程度の飛行制御技術の基礎を固めた。中国の広州億航智能技術有限公司やイスラエルのエロボテックスなどが、早くからマルチロータードローンを発展させてきたとの優位性に基づき、空飛ぶクルマの開発に向けて歩みを進めている。

米国ジョビー・アビエーションは2025年内に都市部の空の交通におけるeVTOLの商用化を実現させる計画だ。エアバスは従来の航空分野での技術の蓄積とグローバル市場での事業展開を利用し、「次世代の都市のエアバス」プロジェクトを打ち出し、2024年には開発した全電動航空機を発表して初飛行を成功させた。このことは従来型航空会社が電動スマート航空へと前進する上での重要な一歩となった。中国には世界トップクラスのスマートカーとマルチロータードローンの技術および産業チェーンという優位性が備わり、空飛ぶクルマの開発と製造に着実な基礎を提供している。たとえば重慶長安汽車股份有限公司(長安汽車)と億航智能の業界の枠を超えた協力は、自動車とマルチロータードローン技術の有機的な融合を実現し、空飛ぶクルマの発展へ新たなアプローチと活力をもたらした。

低空域交通は新エネルギー、人工知能(AI)、ビッグデータ、5G通信などの新技術の応用の主な担い手とシーンであり、「低空経済」(低空域飛行活動による経済形態)の発展における戦略的方向性であり、グローバル経済と世界の発展構造を再構築するものとなる。現在、「低空経済」活動の主な担い手はドローンや空飛ぶクルマといった低空域を飛行する航空機だ。その中で、コンシューマードローン、産業用ドローン、交通手段としての空飛ぶクルマの「低空経済」への寄与は、それぞれ地上経済を牽引する自転車、バイク、車の牽引の役割に似ている。現在、ドローンは「低空経済」で主導的な位置を占めており、すでにコンシューマー向けのレジャー娯楽用ツールから、電力網の点検、農林業の植物保護など産業用ツールへと変化している。今後は、空飛ぶクルマの普及応用が、人類社会の立体的交通の新時代を牽引するようになり、1兆元(1元は約20.7円)レベルの「低空経済」のブルーオーシャンで新たな競争分野を切り開くことだろう。(編集KS)

「人民網日本語版」2025年2月7日

 
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