力あわせ、未来ひらく――日本共産党 参議院議員選挙政策(1)
2016年6月9日
(選挙政策と同時に発表) 「消費税にたよらない別の道」――日本共産党の財源提案
発表会見する志位和夫委員長(6月9日)
野党共闘の勝利と日本共産党の躍進で、
安倍政権を倒し、新しい政治をつくろう
民意に背く「安倍暴走政治」の全体にノーの審判、チェンジの意思を示す選挙に……いま、日本の政治は、独裁と戦争への逆流か、立憲・民主・平和の新しい政治か、という歴史的な分かれ道に立っています。
安倍政権は、憲法違反の安保法制=戦争法を強行し、立憲主義と民主主義をこわす危険な道を暴走しています。同時に、この動きに対して、戦後かつてない新 しい市民運動、国民運動が発展し、この運動に背中を押されて野党共闘が大きく前進しています。これは日本の未来にとって大きな希望です。
安倍首相は、参議院選挙を「アベノミクス選挙」などと言っています。「アベノミクス」の是非は大争点の一つですが、この問題だけに争点を狭めるわけには 決していきません。安倍首相は、過去2回の国政選挙を「アベノミクス」一本でたたかい、多数の議席を得ましたが、やったことは数々の憲法破壊の政治でし た。こんなことを3度も繰り返させるわけにはいきません。
この参院選を、民意に背く「安倍暴走政治」の全体――安保法制=戦争法と憲法改定、「アベノミクス」と消費税大増税、TPP協定、原発問題、沖縄基地問題などに、ノーの審判をくだし、チェンジの意思を示していく選挙にしていこうではありませんか。
日本共産党は、参院選で2つの目標に挑戦します。
第一は、野党と市民の共闘を成功させることです……この参院選では、全国の32の1人区のすべてで野党統一候補が実現しました。日本共産党は、このすべてで勝利するために、全力をあげます。
野党4党は、「安保法制廃止、立憲主義を取り戻す」という、国民的大義のもとに結束しています。同時に、野党4党は、国民生活と民主主義にかかわるさま ざまな分野での「共通政策」を豊かに発展させています。この間の野党党首会談、野党が共同で提出した15本の議員立法、「安保法制の廃止と立憲主義の回復 を求める市民連合」の要請などをふまえ、次の諸点が「共通政策」として確認されています。
――安保法制を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回する。安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する。
――「アベノミクス」による国民生活の破壊、格差と貧困を是正する。介護・福祉職員の給与引き上げ、保育士の給与引き上げ、ひとり親家庭に対する児童扶 養手当の増額、長時間労働の規制、均等待遇と同一価値労働同一賃金、最低賃金の大幅引き上げ、高校完全無償化、給付制奨学金・奨学金債務の減免、被災者生 活再建支援法の改正、累進所得税・法人課税と資産課税のバランス回復による公正な税制の実現(タックスヘイブン対策を含む)など。
――TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治に反対する。TPP合意に反対、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の中止、女性に対する 雇用差別の撤廃、男女賃金格差の是正、選択的夫婦別姓の実現、国と地方議会の議員の男女同数を目指す、包括的な性暴力禁止法と性暴力被害者支援法の制定、 LGBT(性的マイノリティー)差別解消、原発に依存しない社会の実現に向けた地域分散型エネルギーの推進など。
第二は、日本共産党の躍進を必ずかちとることです…… 日本共産党は、あらゆる分野で「安倍暴走政治」と真正面から 対決して頑張っています。国民の立場にたった責任ある対案を示しています。野党と市民の共闘のために誠実に努力しています。暴走と対決し、対案を示し、共 同をすすめる党――日本共産党が躍進してこそ、安倍暴走政治への痛打となり、新しい政治をつくるたしかな力となります。野党と市民の共闘をさらに発展させ る力になります。
日本共産党は、2013年の参議院選挙、14年の衆議院選挙で、大きく躍進させていただきました。日本共産党が、国会での発言力を大きく増したことが、 安倍政権を追及し、その危険な中身を国民に明らかにするうえでも、野党共闘をすすめるうえでも、大きな力となりました。議案提案権を使い、ブラック企業規 制法案を提出し、これを契機にして、厚生労働省がブラック企業の摘発に乗り出さざるを得なくなるなど、現実政治を動かし、国民の願いを一歩一歩実現してき ました。
あなたの一票で、野党共闘の勝利と日本共産党の躍進をかちとらせてください。新しい政治の希望ある扉を開こうではありませんか。
日本共産党の重点政策
(1)安保法制=戦争法廃止、立憲主義の回復、安倍改憲を許しません
【憲法違反の安保法制=戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻します】
憲法違反の戦争法廃止の審判を下しましょう…… 安倍政権は、国民多数の反対の意思も、8割の国民の「審議が不十 分」という声も、9割以上の憲法学者の「憲法違反」との厳しい指摘も、いっさい無視して戦争法を強行しました。戦争法強行後も、国民の世論と運動は広が り、「戦争法廃止」の署名は1200万人を超えています。安保法制=戦争法強行後、初めての国政選挙で「戦争法廃止」の審判を下そうではありませんか。
日本を「殺し、殺される」国にしてはなりません…… 戦争法には、「戦闘地域」での米軍等への兵站の拡大、戦乱が続 いている地域での治安活動、地球上のどこでも米軍を守るための武器使用、集団的自衛権の行使という、自衛隊が海外で武力行使をする4つの仕組みが盛り込ま れています。どれもが、憲法9条を乱暴に踏みにじるものです。
とくに集団的自衛権は、憲法違反の核心部分です。アメリカが、ベトナム戦争やイラク戦争のような先制攻撃の戦争に乗り出したときに、言われるままに集団的自衛権を発動して、侵略国の仲間入りをする――ここにこそ、集団的自衛権行使のもっともな危険な本質があります。
戦争法が施行されたことによって、戦後はじめて、日本の自衛隊が“海外で外国人を殺し、戦死者を出す”危険が現実のものとなっています。南スーダンの PKO(国連平和維持活動)に派遣されている自衛隊の任務拡大、イラクやシリアでの過激組織ISに対する軍事作戦への自衛隊の参加、アフガニスタンの治安 部隊を支援する軍事活動への自衛隊の参加などが、最初の「殺し、殺される」ケースになりかねません。戦争法は一刻も放置できません。その廃止は急務です。
立憲主義と民主主義を取り戻し、「個人の尊厳」を守り大切にする社会に……安倍政権は、「憲法9条のもとでは集団的自衛権は行使できない」という戦後60年余にわたる一貫した政府の憲法解釈を180度覆して安保法制=戦争法を強行するという、立憲主義を破壊する禁じ手に踏み込みました。
立憲主義とは、憲法によって権力を縛るということです。国会で多数を持つ政権党であっても、憲法の枠組みに反する政治を行ってはならないということです。これが壊されたら、「法の支配」が「人の支配」に代わり、独裁政治が始まることになります。
立憲主義によって権力を縛ることの究極の目的は、憲法13条が保障している、すべての国民を「個人として尊重」することであり、「個人の尊厳」を擁護す ることにあります。安倍政権による立憲主義破壊の政治は、「国家の暴走で個人の尊厳を踏みつぶす政治」です。それは、戦争法、秘密保護法、沖縄の米軍新基 地建設、原発再稼働、TPP、格差拡大の経済政策など、あらゆる分野で表れています。
立憲主義を壊し、独裁政治の道をすすむのか、それとも立憲主義と民主主義を取り戻し、「個人の尊厳」を守り大切にする社会を築くのか――いま日本の政治にするどく問われています。
――安保法制=戦争法を廃止します。
――集団的自衛権行使を容認した閣議決定を撤回し、立憲主義を回復します。
【「自民党改憲案」にノーの審判を――変えるべきは憲法をないがしろにする政治です】
安倍首相は「憲法を改正していく。自民党は憲法改正草案を決めている」とし、「(きたるべき国政選挙で)この草案をお示ししていきたい」と公言しています。「自民党改憲案」を許していいのかどうかは、大争点です。
「自民党改憲案」は、憲法9条2項を削除して国防軍を創設すると明記し、海外での武力行使を無条件で可能にするものです。内閣総理大臣が「緊急事態を宣 言」すれば、内閣が立法権を行使し、国民の基本的人権を停止するなど、事実上の「戒厳令」を可能にしています。「公益及び公の秩序」の名で基本的人権を制 限できる仕組みに変え、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」とした憲法97条は、丸ごと削除されています。
これらは「憲法によって権力を縛る」という立憲主義を否定し、「憲法によって国民を縛る」ものに大変質させてしまうものです。「憲法を憲法でなくしてしまう」時代逆行の「自民党改憲案」にノーの審判を下しましょう。
日本国憲法は、世界でも最先端といっていい先駆的な内容を持っています。憲法9条は、恒久平和主義を徹底した世界に誇る宝です。日本国憲法には、政治的 権利とともに、生存権、働く権利などの経済的権利も含め、30条にわたる豊かで先駆的な人権規定が明記されています。変えるべきは憲法ではありません。憲 法をないがしろにしてきた政治です。
――安倍政権による憲法改悪を許しません。
――日本国憲法の前文を含む全条項を守り、平和的民主的条項の完全実施をすすめます。
【憲法9条にたった平和の外交戦略を提唱します】
いま日本にもとめられるのは安保法制=戦争法ではなく、憲法9条にたった平和の外交戦略です。
北朝鮮問題――対話による解決へ、国際社会の一致結束した外交努力を……北朝鮮が、核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し強行し、世界の平和と安定への重大な脅威をもたらしています。
国連安保理は、北朝鮮の行為に対して、これまでにない厳しい制裁措置を決定するとともに、「緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控える」よ う各国に呼びかけ、6カ国協議(日本、韓国、中国、アメリカ、ロシア、北朝鮮)の再開を強く呼びかけています。安保理決議に基づく北朝鮮に対する制裁措置 を全面実施し、北朝鮮を対話の場に復帰させる、これが国際社会の共通の認識であり目標です。
安倍政権は、北朝鮮問題を利用して、安保法制=戦争法を合理化しようとしています。しかし、北朝鮮の軍事挑発に対して、日本が戦争法という軍事で構えた ら、軍事対軍事の悪循環に陥るだけです。北朝鮮問題を利用して、戦争法を合理化することには、一かけらの道理もありません。
――北朝鮮を6カ国協議という対話のテーブルにつかせ、核・ミサイル開発を放棄させる、国際社会の一致結束した外交努力を強く求めます。
南シナ海問題――一方的な現状変更と軍事的緊張を高める行動の中止を求めます…… 南シナ海では、中国が、領有権紛争のある南沙諸島に人工島を造成し、レーダーを設置し、西沙諸島でミサイルや戦闘機を配備し、周辺諸国との間で緊張が高まっています。
中国の行動は、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国と結んだ「南シナ海行動宣言」(DOC)の「現在無人の島嶼(とうしょ)、岩礁、浅瀬、洲その他の ものへの居住を慎む」「紛争を複雑化あるいは激化させ、また平和と安定に影響を与えるような行動を自制する」という規定、みずから署名した約束に反してい ます。
――南シナ海での一方的な現状変更と軍事的緊張を高める行動を中止し、外交交渉による平和的解決に徹することを求めます。
戦争法への「平和的対案」――「北東アジア平和協力構想」……日本共産党は、つぎの4つの目標と原則からなる「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。
(1)北東アジア規模の「友好協力条約」を締結します。
(2)北朝鮮問題は、困難はあっても「6カ国協議」の枠組みで解決をはかります。
(3)この地域に存在する領土に関する紛争問題をエスカレートさせない行動規範を結びます。
(4)日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、地域の友好と協力のうえで不可欠の土台となります。
この「構想」は、ASEAN諸国が東南アジアで現に実践している、東南アジア友好協力条約(TAC)のような、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する地域の平和協力の枠組みを北東アジアにも構築しようというものです。
日本共産党の提唱には、アジア諸国の政府関係者からも共感の声が広がっています。ここにこそ、安倍政権がすすめる安保法制=戦争法に対する、「平和的対案」があります。
(2)格差をただし、経済に民主主義を――3つのチェンジを訴えます
「アベノミクス」と消費税大増税路線の破たん…… 安倍首相は、「世界で一番、企業が活躍しやすい国をめざす」と宣 言し、「大企業を応援し、大企業が儲けをあげれば、いずれ家計に回ってくる」と言ってきました。しかし、大企業は3年連続で史上最高の利益をあげました が、働く人の実質賃金は5年連続でマイナスです。5%も下落し、年収400万円程度の労働者だと20万円もの目減りです。
消費税大増税路線も破たんに陥っています。8%への増税後、日本経済の6割を占める個人消費は冷え込み続けています。5月に発表されたGDP(国内総生 産)統計で、個人消費(実質値)は、2014年度、15年度と2年度連続でマイナスとなりました。消費税を5%に引き上げた1997年度、「リーマン・ ショック」の2008年度も、個人消費はマイナスになりましたが、翌年にはプラスになりました。2年度連続のマイナスは戦後初めての異常事態です。
追いつめられた安倍首相は、消費税10%の2年半「先送り」を表明しました。これは「アベノミクス」の失敗、消費税大増税路線の失敗を示すものです。と ころが首相は、自らの失政を認めず、「世界経済の危機」に責任を転嫁しています。「アベノミクスを加速させ、消費税を増税する」と、破たんずみの路線にし がみついています。
格差と貧困が広がっています…… 「アベノミクス」は、大企業と大株主に莫大な利益をもたらし、大企業の内部留保は 300兆円を超えました。株価の上昇で、200人を超える大株主が、資産を3年間で100億円以上も増やしました。アメリカのフォーブス誌が集計した「日 本の富裕層」上位40人の資産総額は、この4年間で7.2兆円から15.4兆円へと、2倍以上にも増えました。
その一方で、「金融資産ゼロ」の世帯は、3年間で470万世帯も増え、全世帯の35%と、過去最高になりました(日銀のアンケート調査から推計)。
貧困が新たな広がりをみせています。失業や病気などで所得が減れば、たちまち生活が行き詰り、多くの国民が貧困に陥る危険と隣り合わせで暮らしていま す。ほんの一握りの超富裕層と、99%の国民との間の大きな格差が生じる、そして、国民の生活全体が悪化し、生活不安、社会不安が重くのしかかり、貧困が 広がる――これが「アベノミクス」が日本社会にもたらしたものです。
「アベノミクス」ストップ、格差をただし、経済に民主主義を確立するために、日本共産党は、「3つのチェンジ」を訴えます。
≪第1のチェンジ――税金の集め方を変える≫
消費税10%増税は「先送り」でなく、きっぱり断念を。富裕層と大企業への優遇税制をやめ、応分の負担を求めます
消費税10%は断念すべきです……安倍首相は、2度も消費税10%増税の「先送り」に追い込まれました。消費税大増税路線は、完全に行き詰まっています。
消費税の増税は、必ず消費を冷え込ませ、景気を悪化させます。消費税は低所得者ほど負担が重く、その増税は、格差をいっそう拡大し、日本経済の歪みをさ らに広げます。「社会保障のため」と言って増税しましたが、社会保障は悪くなるばかりでした。消費税増税を「先送り」しても、それを実施すれば、同じ誤り を繰り返すだけです。
――消費税10%への増税は、「先送り」実施でなく、きっぱり断念すべきです。
【大企業への優遇税制をただし、中堅・中小企業並みの税負担を求めます】
日本共産党は、「税金は所得や資産など負担能力に応じて」の原則にたった、公正で民主的な税制への改革をすすめます。まず、「アベノミクス」で大儲けした富裕層や大企業を優遇する不公平税制をただすことを求めます。
法人税率は一律のはずですが、実際の負担率は大企業ほど低くなり、大企業の平均は利益に対して12%、巨大企業が使っている連結納税法人だと6.3%に すぎません(2014年度実績)。研究開発減税などの租税特別措置、受取配当益金不算入、連結納税など、もっぱら大企業だけが利用できる特権的な優遇税制 があるからです。
――研究開発減税、受取人配当益不算入、連結納税など、もっぱら大企業しか利用できない優遇税制をただし、大企業に中堅・中小企業並みの税負担を求めます。
――法人税減税を中止します。安倍政権が行った法人税減税を元に戻します(中小企業を除く)。
――これによって6兆円の財源が生まれます。
【富裕層への優遇税制をただし、適正な課税を行います】
所得税は累進税率で、所得が多いほど税率が高いはずなのに、所得が1億円程度以上の富裕層になると、逆に負担率が下がってしまいます。
こんなことになるのは、富裕層の所得は株式売却などのもうけが多くを占めていて、これに対する税率が低いからです。日本では、富裕層の株式配当や売却益 に対する税率は、所得税だけなら15%、住民税を合わせても20%にすぎません。欧米主要国が30~40%なのと比べると、まさに「株主天国」です。
――配当は他の所得と合算して総合課税し、富裕層には最高税率を適用します。株式売却益にも欧米なみに富裕層には30%の課税をします。
――引き下げられた所得税・住民税の最高税率(現行55%)を、98年以前の65%に戻します。相続税・贈与税の最高税率(現行55%)も、70%に戻します。
――相続税評価額で5億円を超える資産を持つ富裕層(全世帯の0.1%程度)の5億円を超える資産に対して、1~3%程度の累進の低率で毎年課税する「富裕税」を創設します。
――富裕層への適正な課税を行えば3兆円以上の財源が確保できます。
【タックスヘイブンを利用した「税逃れ」を徹底追及します】
大企業や富裕層が、税金が課税されないか税率が極めて低い国・地域(タックスヘイブン=租税回避地)にペーパーカンパニーをつくり、「税金逃れ」や「資産隠し」をしていることが、世界で大問題になっています。
日本の銀行や商社など多くの大企業も、タックスヘイブンに子会社をつくっています。所得税も法人税もゼロのケイマン諸島への日本の対外投資残高は、昨年末時点で76兆円と10年前の2倍ですが、どのように課税されているのかは明らかにされていません。
富裕層も、タックスヘイブンを利用しています。企業のオーナーが本人名義で自社の株式を保有していれば、その配当に5割近い税金がかかりますが、香港、 シンガポール、オランダなどに設立した資産管理会社に株式を移転すれば、配当への課税が5~10%程度に軽減されてしまいます。
大企業や富裕層の「合法的税逃れ」を許してはなりません。「逃げた」ものは追いかけてつかまえる、そのための法整備や国際的な協力体制が急がれます。
――タックスヘイブン税制(子会社がタックスヘイブンにある場合には、子会社の所得を親会社に合算して税金を計算する制度)の適用要件を拡大します。
――タックスヘイブンに子会社をつくっている親会社の調査と公表など、実態を徹底調査して公表する情報公開をすすめます。
――国際的な「税逃れ」を許さないための世界各国の協力は不可欠であり、それを積極的に推進します。
≪第2のチェンジ――税金の使い方を変える≫
社会保障、子育て、若者に優先して税金を使う
自公政権は、社会保障予算の増加が財政悪化の原因であるかのように宣伝し、社会保障を削減しながら、軍事費や大型公共事業へのバラマキをつづけています。
しかし、日本の社会保障支出(国民一人当たり)はOECD加盟34カ国中17位、教育への公的支出は先進国で最下位、保育・幼児教育への公的支出はイギリス、フランスの半分以下です。
国民から集めた大切な税金は、社会保障、子育て、若者への支援など、国民の暮らしと日本の将来に役立つ支出に優先して使うべきです。
【社会保障削減を中止し、拡充へと転換します】
安倍政権は、発足後の4年間で1兆3200億円もの社会保障予算の「自然増」を削減し、年金支給の連続削減、70~74歳の医療費窓口負担の引き上げ、 要支援者のヘルパー・デイサービスの保険給付外し、介護報酬の大幅削減、生活保護費の切り下げなど、社会保障を連続改悪してきました。「社会保障のため」 といって消費税増税しながら社会保障を大削減する、これは国家的詐欺に等しいやり方です。
今後も毎年3000~5000億円の「自然増」削減を続ける(「骨太の方針」)とし、年金支給削減、後期高齢者医療保険料の大幅引き上げ、要支援者に続いて「要介護1・2」も保険給付外にする介護保険の大改悪などを、参院選後の国会に提出しようとしています。
日本共産党は、連続改悪でズタズタにされた年金・医療・介護・福祉を立て直し、憲法25条が定める生存権保障にふさわしい制度へと改革していきます。
――年金削減をストップし、低年金を底上げして、“減らない年金・頼れる年金”を実現します。最低保障年金制度をめざします。
――国の責任で、高すぎる医療費の窓口負担、国民健康保険料(税)の軽減をすすめます。後期高齢者医療保険料の値上げに反対し、高齢者差別の制度を廃止します。
――診療報酬の引き上げや医師・看護師の計画的増員により「医療崩壊」を打開します。保険外負担・混合診療の拡大をやめ、保険診療を拡充します。
――特養ホームなど介護施設の抜本的増設で、待機者問題を解消します。介護保険料・利用料の負担減免をすすめ、削減された介護報酬を引き上げ、介護・福祉労働者の賃上げと労働条件の改善をはかります。
――障害者・児の福祉・医療の「応益負担」を撤廃し、無料化をすすめます。
――保護費削減や申請の“門前払い”の強化など生活保護の切り捨てをやめさせ、国民の生命と人権をまもる仕組みに改善・強化します。
――雇用保険の拡充、失業者への生活援助、再就職支援の強化をすすめます。
【子育てを支援する政治を――認可保育所の緊急増設、子ども医療費の無料化】
保育園待機児問題の解決…… 認可保育所の決定的な不足と、労働条件が悪いことによる保育士不足が待機児問題の最大 の原因です。ところが、安倍内閣の「子育て支援」策は、保育の質の低下をもたらす「規制緩和」による「詰め込み」と認可保育所以外の「受け皿」の拡大など で、認可保育所の増設は一言もありません。保育士不足も、「多様な保育士」「保育補助員」など、人件費の安い非正規・無資格の職員で対応するというので す。
日本共産党は、待機児童問題の解決のため、根本的な解決策に緊急にとりかかることを提案します。
(1)30万人分(約3000箇所)の認可保育所を緊急に増設します。
――国・自治体が先頭にたって公立保育所を増設します。
――国による新たな財政支援の制度を創設して、保育所の建設・分園設置・改修などを補助し、廃止された運営費の国庫負担分を復活します。
――認可保育所の建設に国有地を無償供与するなど、用地確保を国が支援します。
――地域の保育ニーズと待機児童の実態を、自治体と国がつかみ、対策をすすめます。
(2) 保育士の賃上げ、配置基準の見直しで労働条件を改善します。
――野党共同で提出した保育士賃上げ法案(月額5万円アップ)を成立させ、さらに5年間、毎年、月額1万円の賃金アップをすすめて、合計10万円の賃上げをはかります。
――保育士の配置数の適正化と国の運営費(公定価格)の引き上げで、保育士の労働条件を改善します。保育士の専門性にふさわしい処遇にします。
――非正規の保育士の「使い捨て」をやめ、正規雇用化をすすめます。
(3)学童保育の待機児を解消し、指導員の処遇を改善します。
――学童保育を増設し、待機児や大規模化によるつめこみを解消します。すべての学童保育で6年生まで利用できるようにします。
――学童保育と放課後子ども教室は、それぞれの制度として拡充、連携をはかります。
子どもの医療費無料化を国の制度にします…… すべての市区町村で、子ども医療費の助成事業が実施されていますが、 所得制限や対象年齢など自治体による格差が大きな問題になっています。しかも、国は、子どもの医療費無料化を行う自治体に国民健康保険の予算を減額すると いうペナルティを科しています。こうした姿勢を抜本的にあらため、国による子ども医療費の助成制度をつくるときです。
――小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度を創設します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。
――子どもや障害者の医療費無料化(現物給付)を行っている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティをやめさせます。
【未来を担う若者のために――大学授業料を10年で半額に、給付制奨学金の実現を】
日本は、大学の学費が世界有数の高さでありながら、給付制奨学金がないという、特異な国となっています。日本の奨学金は学生に借金をさせる「学生ロー ン」であり、利用した学生は、平均でも300万円、大学院進学など多い人では1000万円もの借金を負わされています。奨学金が若者を借金苦と貧困に引き ずり込む、こんな社会に未来はありません。日本共産党は、大学授業料の半額化計画と奨学金制度の抜本的改革を提案します。
(1) 大学授業料を毎年引き下げ、10年間で半額にします。
――国立大学への国の交付金を毎年1%程度(約160億円)ずつ増やし、現在、年53万円の授業料を、10年後には26万円にまで引き下げます。
――国の私学助成に学費値下げ用の緊急枠をつくり、毎年900億円程度の国費を投入することで、平均で年86万円の私大授業料を、10年後には半分の額まで引き下げます。
――公立大学にも、10年で授業料を半額にするための助成を実施します。
(2)「学生ローン」から本物の奨学金へ――三つの奨学金改革をすすめます。
――月額3万円の給付制奨学金を、現行の奨学金受給者の半分にあたる70万人の規模で創設します。
――すべての有利子奨学金を無利子にします。
――既卒者の奨学金返済の減免制度をつくり、生活困窮の人に救済措置を講じます。
【大軍拡、大型開発など、無駄づかいをあらため、くらしにまわします】
安倍内閣は、軍事費を4年連続で増やし続け、史上初めて5兆円を突破しました。米軍関連経費も史上最高額で、条約上の義務のない「思いやり予算」 (SACO・米軍再編関係費を含む)は3749億円と、中小企業対策費の2倍、文教施設費の4倍にのぼり、米兵一人当たり768万円にもなります。
安倍政権は、公共事業費も4年連続で増額させています。「国際競争力の強化」を看板にした三大都市圏環状道路や国際コンテナ戦略港湾、リニア新幹線など大型開発事業偏重の無駄づかいや原発推進予算など、歳出の浪費にメスをいれます。
――条約上の義務のない、米軍への「思いやり予算」を廃止します。
――海外派兵用の兵器購入を中止するなど、大軍拡から軍縮へと転換します。
――大型公共事業、原発推進予算など、歳出の浪費をただします。
≪第3のチェンジ――働き方を変える≫
ブラックな働き方をなくし、人間らしく働けるルールを
安倍首相は、「同一労働同一賃金」とか「長時間労働の是正」を言い出しましたが、それが本気なら、派遣法改悪や裁量労働制などの労働法制の規制緩和路線 を撤回し、転換することが必要です。「残業代ゼロ法案」を国会に提出しながら、「長時間労働の是正に向けて背中を押していく」などというのは「ブラック ジョーク」です。
日本共産党は、ブラックな働き方をなくし、だれもが人間らしく働ける労働のルールを確立します。
【長時間労働をなくし、安定した雇用を創出します】
(1)残業時間を法律で制限し、長時間労働を是正し、「過労死」をなくします。
――残業時間の上限を法律で規制し、終業から翌日の始業まで最低11時間空けるインターバルの確保など労働基準法を改正します。
――「残業代ゼロ法案」に断固反対し、廃案をめざします。
(2)ブラック企業、ブラックバイトをなくします。
――違法な「サービス残業」が発覚したら残業代を2倍にして払わせるなど、「ただ働き」を根絶します。
――離職者数や過去の労働法違反の経歴など、労働条件や職場環境の実態がわかる企業情報を公開させます。
――パワハラ行為をおこなった企業には、労基署などが助言、指導、勧告を行い、勧告に従わない企業名を公表します。
(3)雇用のルールを強化し、非正規から正規への流れをつくります。
――労働者派遣法を抜本改正し、派遣労働は臨時的・一時的業務に限定して、正社員の派遣労働への置き換えをなくします。
――同一労働同一賃金、均等待遇を、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法に明記するなど、非正規への不当な差別・格差をなくします。
【最低賃金は、1500円をめざし、いますぐどこでも1000円に】
最低賃金の抜本的な引き上げは、消費に直結する即効性のある経済対策です。アメリカでは、最低賃金が高い州の方が景気が良いことが実証され、経営者から も最低賃金の引き上げ要求が出されています。中小企業への支援を行いながら、最低賃金の抜本的な引き上げをすすめます。
――最低賃金をいますぐどこでも時給1000円に引き上げ、さらに1500円をめざします。
――社会保険料減免や賃金助成など、中小企業の賃上げに本格的な支援を行います。
――最低賃金の地方間格差を是正し、全国一律最低賃金制に踏み出します。
≪「消費税にたよらない別の道」で財源を確保します≫
日本共産党は、「消費税にたよらない別の道」で、社会保障財源をつくり、財政危機打開の展望を開く、2つの改革を提案しています。
第一は、富裕層や大企業への優遇をあらため、「税金は所得や資産など負担能力に応じて」の原則をつらぬく税制の改革です。
大企業に中堅・中小企業並みの税負担を求めることで6兆円、富裕層への適正な課税で3兆円以上の財源をつくることは、この改革の第一歩です。
将来的には、社会保障の抜本的拡充のために、富裕層、大企業だけでなく、国民全体で支えることが必要ですが、その場合にも、低所得者に重い消費税ではなく、所得税を中心として「能力に応じた負担」の原則をつらぬきます。
こうした不公平税制を改める税制改革とともに、軍事費、大型開発、政党助成金などの歳出の浪費を削減する財政改革をすすめれば20兆円以上の財源を確保することができます。
第二は、国民の所得を増やす経済改革で、税収を増やすことです。
国民の所得が増え、中小企業を含む企業経営全体が改善していけば税収も増えます。300兆円にも膨れ上がった大企業の内部留保を日本経済に還流させるた めに、大幅賃上げと安定した雇用を増やし、下請企業の納入単価引き上げなどをすすめるなど、国民の所得を増やす経済改革にとりくみ、税収や社会保険料収入 を増やします。
先進国では普通の「名目2%」程度の経済成長を実現できれば、現行の税制を前提としても、10年後には20兆円以上の税収をふやすことができます。
この二つの改革をすすめれば、消費税にたよらなくても、社会保障の財源を確保し、財政危機を打開することができます。
財界献金と無縁な日本共産党を躍進させてこそ……この「3つのチェンジ」は、経済政策の舵を、財界応援から、国民の暮らし応援へと切り替えることになります。財界献金と無縁な日本共産党を躍進させることこそ、「経済に民主主義を」という改革の提案を実行するたしかな力となります。