どこまでだって歩いていけるさ

2012年1月22日 それまでの日記を引き連れてOCN Cafeから移住。
新しい扉の向こうには何があるのだろうか。

贖罪―イアン・マキューアン

2008年05月10日 | 日記
この一週間 腹痛に悩まされる私の気を紛らわせてくれたのは 一冊の本だった

イアン・マキューアンの『贖罪』

単行本での発刊は数年前だし 今春映画となって上映されたようだから 既にご存知の方も


映画でそれがどう構成されているのかは知らぬところだが 文字媒体としての小説の構築力は抜群だった

物語そのものが 後に作家となった主人公の幼き頃に犯した嘘に対する贖罪の小説となっている

そのことに 最後になって読者は気がつかされるのだ

もう一度初めからフィルムを撒き戻してみたい そんな気持ちにさせる一冊

世界大戦を挟んだ時代背景も見事だ

この背景が現代にも充分重なる要素を持っていると感じられる


私はこう思う

物語の中では たった一つの真実というものは無いのだと

彼女の口を借りて 彼は小説家をこう表現している

物事すべてを決める絶対権力を握った存在 つまり神でもある小説家は いかにして贖罪を達成できるのか

贖罪はありえないことと限界を知りつつ それが要であり試みることがすべて と


解説に9・11のテロに対しての作者の表明文があった

「他人の身に自らを置くとどうなるか想像することは人間性の核である

それは同情の本質であり 道徳の始まりである」

私は 是に両手を挙げて賛同する

小説を読むこと 芸術作品に触れること そんな大それたことでなくとも日常のありふれた人生の中でも

私にはそれが人としてあるべき また与えられた最大の想像力だと思える


私にも私なりの『贖罪』の物語はある

それを抱きつつ生きるのも そう悪いことでもないと思っている
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