してもらえると、うれしいな。
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ひさびさの福井・ジェンダー図書撤去問題の情報です。
福井県が「生活学習館」情報ルームの
「男女共同参画推進関係図書等整備方針」を作っていました。
これが「図書選定基準」にあたるものだそうです。
留意事項に、
(2)著者の思想的、宗教的、政治的立場にとらわれて、
その著作を排除することはしない。
(3)他からの圧力や干渉によって図書等の自己規制をしない
と明示されていますので、これで図書の排除はできなくなります。
せっかく作ったなら、教えて下さればよさそうなものですが、
以下、「男女共同参画推進関係図書等整備方針」と
「男女共同参画学習事業企画推進委員会」名簿です。
福井県生活学習館情報ルーム
男女共同参画推進関係図書等整備方針
1 基本方針
男女共同参画社会づくりに向けて、県民が男女共同参画および女性問題
関する学習や調査研究等の参考とするため、図書等を整備する。
2 図書等の収集の範囲
(1) 内閣府男女共同参画局が編集および監修しているもの。
(2) 男女共同参画に関する政府刊行物等のデータ集。
(3) 女性の歴史や文化に関するもの。
(4) 海外の男女共同参画に関するもの。
(5) その他、男女共同参画や女性問題に関するもの。
3 留意事項
図書の選定にあたっては、次の点に留意する。
(1) 多様な意見のある問題については、それぞれの観点に立つ図書等を幅広く収集する。
(2) 著者の思想的、宗教的、政治的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3) 他からの圧力や干渉によって図書等の自己規制をしない。
(4) 人権またはプライバシーを侵害するものは除外する。
(5) 上記(1)~(4)については、寄贈の図書等についても同様とする。
4 選定委員会
(1) 図書等の選定にあたっては、「図書等選定委員会」に諮るものとする。
(2) 図書等選定委員会の委員は、「男女共同参画学習事業企画推進委員会」の
委員が兼ねるものとする。
5 適用年月日
この整備方針は、平成18年7月1日から適用する。
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留意事項の(1)(2)(3)についてはよいのですが、
(4)人権またはプライバシーを侵害するものは除外する、
って、だれが「人権侵害・プライバシー侵害」を判定するんでしょう。
{人権とは」とか「表現の自由とプライバシー」の問題は論争になってて
本が何冊もあるくらい難しい問題なのに、
この委員のメンバーが一冊ずつ内容を読むんでしょうかねえ?
それとも、
本のタイトルだけを見て「黙って座ればピタリと当たる」
と人権またはプライバシーの侵害が分かる?
著者の人権や個人情報が分かってない福井県には判断できないし・・・・
メンバーに司書(専門家)はいないようだし
と安易に「除外規定」を作るのは問題ありです。
この条文だと「除外できる」ではなく「除外する」となっているので、
すべての本の内容を調べなくてはいけないことになります。
図書の内容の精査が検閲にあたるということが、
いまだに分かってないようです。
基本方針の
(1)(2)は、国の下請け施設じゃあるまいし、
どうして内閣府や政府の刊行物がさいしょにくるの?
なんで、男女共同参画や女性問題に関するものは「その他」なの?
などなどおおいに疑問はあります。
「福井県生活学習館の設置および管理に関する条例」には、
(業務)第3条の2 女性の自立等の促進および生涯学習の充実に関する
調査、研究および情報の提供、とありますから、当然に、
1 基本方針 「福井県生活学習館情報ルームは、
「福井県生活学習館の設置および管理に関する条例」に基づき・・・・・
と、根拠となる条例がくるはずです。
4 選定委員会 となっていますが、6月に情報公開請求したときは、
「男女共同参画学習事業企画推進委員会」も「図書等選定委員会」
もなかったのですが、いつできたのでしょう。
この前の「女性センター図書選定基準」を、
福井県からやっとわたしが受け取ったのは、なんと8月25日。
ということは、
7月には新・選定基準ができていて、既に破棄されたものだった。
前の選定基準はたしかに雑なものでしたが、
今度のも3分で作ったインスタントラーメンみたい。
今朝の読売新聞にも記事が載っていますので紹介します。
書籍撤去問題 「図書選定自己規制せず」(2006.10.25 読売新聞)
◆県整備方針留意点に明記
フェミニズム関係の書籍約150冊を一時撤去した問題で、県生活学習館は、新たに「図書等整備方針」を制定し、「他からの圧力や干渉によって図書等の自己規制はしない」と、選定の留意事項に明記した。
収集する書籍類として▽内閣府男女共同参画局の編集及び監修▽女性の歴史や文化関連▽海外の男女共同参画関連――など5項目をあげた。留意事項はほかに「著者の思想的、宗教的、政治的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない」など4項目を定めた。選定委員会を設置することも盛り込まれた。
これまでは1996年に作られ、97年に改正した6項目の「選定基準」があったが、「『ふくい女性ソフィア』および『ふくい女性大学』の講師から推薦のあった図書」など、やや抽象的な内容だった。
県男女共同参画推進員が「過激すぎて男女共同参画に合わない」として、上野千鶴子・東京大教授の著書などを撤去するよう要請し、県は今年3月、一時これらの本を書架から外して問題となった。
(2006年10月25日 読売新聞)
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図書を排除してしまった反省としていそいで作った気持ちはわかるけど、
これがルールになるのですから、もう少し吟味してほしかったですね。
わたしは、女性が差別や抑圧を受ける社会に戻させないために、
女性センターの図書の選定~廃棄(除籍)のどの段階に対して、
いかなる恣意的な介入も禁止する文言を明示した
図書収集規定が必要だと思います。
以下、参考になりそうな図書の収集規定です。
●「日進市図書館資料収集要綱」
(資料の収集に当たっての基本的態度)
第3条
市民ひとりひとりの価値観は多様であり、一冊の本に対する評価や、個々の社会的な問題に関する意見も多様である。
従って、資料の選択にあたっては、以下の点を基本的態度とする。
(1)対立する意見のある問題については、バランスを考慮し、できるだけ客観的な立場で書かれている資料を幅広く収集する。
(2)著者の思想的・宗教的・党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3)図書館員の個人的関心や好みによって選択しない。
(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりしない。
(5)図書館の収集した資料が、どのような思想や主張もっていようとも、それを図書館又は図書館員が支持することを意味しない。
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●広島市立図書館資料収集要綱
7 選択の基本的態度
図書館は、利用者が自ら考え、判断することができるよう、次の点に留意しながら、あらゆる思想や主張が共存するような幅広い資料の収集に努める。
(1) 多様な、対立する意見のある事柄については、それぞれの観点に立つ資料を収集する。
(2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれずに収集する。
(3) 個人及び団体からの圧力に屈せずに収集する。
(4) 収集によって起こる紛糾をおそれずに収集する。
(5) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
以上によって収集した資料が、どのような思想や主張を持っていても、それを図書館及び図書館員が支持しているものではない。
8 資料収集の決定
(1) 職員で構成される選択会議を経て、中央図書館長が決定する。
(2) 選択会議の手続きについては、別に定める。
9 資料の更新及び除籍
図書館は常に適切な資料構成を維持し充実させるため、資料の更新を図る。また、資料の除籍も必要に応じて行なう。その基準は、次のとおりとする。
除籍の基準
(1) き損・汚損
ア はなはだしいき損もしくは汚損のために修理製本等ができないもの。
イ 代替資料があり、修理価値のないもの。
(2) 亡失
ア 自然災害や不可抗力の事故等により亡失したもの。
イ 再三の督促にかかわらず、回収不能の状態で2年を経過したもの。
ウ 所在が不明になって2年を経過したもの。
(3) 不用
ア 時間の経過によって内容が古くなり、資料的価値がなくなったもの。
イ 時間の経過により利用の可能性が低下した複本。
ウ 新版・改訂版又は同種資料の入手によって、代替可能となった既存資料。
エ 新聞・雑誌については、定められた保存年限を経過したもの。
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●逗子市立図書館資料収集方針
(6)資料の選択にあたっては、以下の点を基本的態度とする。
ア. 市民の要求を的確に反映できるように努める。
イ. すべての分野において、時代に則した最新の情報を提供できるように留意する。
ウ. 公民館図書室などの機能にも留意して、全体の蔵書構成は体系的で均整のとれたものにする。
エ. あらゆる思想、信条、学説、宗派にとらわれず、公平に扱う。
個人、または組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾を恐れて自己規制したりはしない。
また、図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
オ. 著者、発行所(者)、内容、形態などにも十分留意する。
カ. 寄贈資料などの受け入れについても購入資料と同じ基準で選択する。
キ. 学習参考書、資格試験などの問題集は原則として収集しない。
(7) 資料の選択は図書館の責任において選書会議を開催し、その結果を尊重して図書館長が決定する。
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1月に国から「ジェンター・フリー」を「使用しないことが適切と考える」
という事務連絡が出されバックラッシュが激しくなったいま、
女性センター職員が自由に(ある意味恣意的に)
図書を選定できる時代ではなくなりました。
指定管理者制度も本格的にスタートし、女性センターの管理運営を、
民間会社、法人、各種団体、NPOなどが受託する時代になり、
専門的知識を持つ人も少なくなることも予想できます。
女性センターの図書への圧力や介入をさせないためには、
図書館の資料収集の「基本的態度」に準じた
検閲の禁止を明言した選定基準が必要です。
図書館と女性センターとは違うという意見を聞きますが、
基本的な1条(目的)や、収集する資料の種類、根拠法(条例)などが違うだけで、
(図書収集の基本的態度)の文言を盛り込むことは可能です。
ということで、福井県の「図書等整備方針」の、
わたしの総合的な評価は、60点くらいでしょうか。
あなたなら何点??
今朝の芙蓉
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入ってすぐのところに、
「図書館の自由に関する宣言」なるもおが掲げられていて、なにかすごく感激しました。
あまり図書館には縁のないわたしとしては、この宣言がどこの図書館にも当たりまえに掲げられているのかどうか、まれなことなのかどうかもわかりませんが、ご紹介します。
日 本 図 書 館 協 会 1 9 7 9 改 訂
(主文)
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。
第1 図書館は資料収集の自由を有する
第2 図書館は資料提供の自由を有する
第3 図書館は利用者の秘密を守る
第4 図書館はすべての検閲に反対する
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
図書収集方針の中には,図書館法よりは、大体「図書館の自由に関する宣言より」とうたっています。
この自由を守る精神、いいですね
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「図書館の自由に関する宣言」
第4 図書館はすべての検閲に反対する
1 検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
検閲が、図書館における資料収集を事前に制約し、さらに、収集した資料の書架からの撤去、廃棄に及ぶことは、内外の苦渋にみちた歴史と経験により明らかである。
したがって、図書館はすべての検閲に反対する。
2 検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。
3 それらの抑圧は、図書館における自己規制を生みやすい。しかし図書館は、そうした自己規制におちいることなく、国民の知る自由を守る。
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「図書館の自由に関する宣言」は、蔵書の提供に当たって、「人権またはプライバシーを侵害するもの」は制限があり得るとしているのであって、選書についてではありません。また、ありえません。
出版された著作物が名誉・プライバシーの権利侵害を構成するかどうかを判断する能力と権限をもつのは裁判所だけです。図書館は裁判所ではなく、司書は裁判官ではありません。
福井県の選書担当者や選定委員会委員にそのような能力があるとし、選定除外の権限を持たせるこの規定は、行政が「人権侵害」を拡大解釈し、出版物を恣意的に排除することを正当化するものです。最高裁は「検閲」を行政による出版前の事前審査に限定しているので、当局は「検閲ではない」と言うでしょうが、検閲と同様の効果をもって憲法21条(表現の自由・知る自由)を損うことを正当化します。限りなく違憲の疑いのある規定です。
福井・生活学習館がこの規定をサービス方針(そういうものがあるか不知ですが)に移したとしても、次の点に留意を求めます。日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言・解説」で、提供を制限する対象を“地名総鑑”や、名誉・プライバシー侵害で頒布差止めの判決が出たものに限定し、さらに制限方法は最小限とすること、廃棄せずに適宜提供制限を見直すこと、を求めていることです。
「情報ルーム」の役割と存在意義は、公立専門図書館として市民の知る自由を保障することにあるはずです。
明快かつ的確なコメントありがとうございます。
>「人権またはプライバシーを侵害するものは除外する。」としていることに非常な違和感をもちました。
わたしも同感です。
>出版された著作物が名誉・プライバシーの権利侵害を構成するかどうかを判断する能力と権限をもつのは裁判所だけです。図書館は裁判所ではなく、司書は裁判官ではありません。
福井県の選書担当者や選定委員会委員にそのような能力があるとし、選定除外の権限を持たせるこの規定は、行政が「人権侵害」を拡大解釈し、出版物を恣意的に排除することを正当化するものです。・・・・・・・・・・日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言・解説」で、提供を制限する対象を“地名総鑑”や、名誉・プライバシー侵害で頒布差止めの判決が出たものに限定し、さらに制限方法は最小限とすること、廃棄せずに適宜提供制限を見直すこと、を求めていることです。
「情報ルーム」の役割と存在意義は、公立専門図書館として市民の知る自由を保障することにあるはずです。
この選定基準に対しては、何らかの対応をするつもりなので、参考にさせていただきます。