
快晴、朝方の気温13℃。肘折温泉に行く。新緑と山菜を求めて例年行っていた肘折だが、ことしの大雪で温泉付近に地崩れが発生、不安であったがこのところの好天でもう雪も融けただろうと出かけた。次年子を過ぎて、周囲の山は緑が濃く、紫の藤の花が今をさかりに咲いていた。
肘折へあと13キロの表示があってすぐに、従来の道が通行止めとなり、迂回路が看板で案内されている。集落が所々にあり、道も思ったよりよく、車は順調に進んだ。だが、肘折へあと8キロの表示あたりから、道が細くなり、そしてつづれ折になる。制限速度30キロ、片側交互通行で停車を余儀なくされる。
峠の頂上近くで道の両側に積雪が現れる。急に木々の芽が小さく、新緑さへいまだしという感じだ。肘折に近づいて、広い農園が見えてくる。関係者以外立ち入り禁止の看板が随所に見える。温泉が見える小高い丘から銅山川が見える。雪解け水で見るだけで水量が増えているのがわかる。
ワラビは萌えだしたばかりで、小さな頭が顔を見せているに過ぎない。フキノトウ、コゴミを採る。枯れ草の間からイタドリが伸び始めているが、所々にシオデがすっと立ち上がっているのに出会う。シオデはもっと時期が遅いと思っていたが、日当たりのよいところではほかの草にかくされず見つけることができた。
それにしても雪の被害がこれほどとは思わなかった。明日から6月だというのに、雪が残り、山道のガードレールは雪の重みでグニャグニャに曲がっている。温泉近くのトンネルは通行不能で、方々に土砂崩れの崩落の跡が見える。この状態では観光客の呼び込みも難しそうだ。

肘折を後に、村山市の湯船沢温泉に向かう。午後の太陽がまぶしく降りそそぐ。ここは茅葺の屋根をいただく、ひなびた一軒家の温泉だ。親戚の子が嫁ぎ、女将家業も長くなった。久しぶり女将と話すと、子どもたちはそれぞれ結婚し、二人の孫ができたという。「もう、おばあちゃんです」と、笑った。近く土手でワラビを採る。
犬を連れたおばあさんが庭からギンボを採って出てきた。先代の女将さんだ。90を過ぎても愛犬と話しながら、元気そうだ。いま、デイサービスに通っているという。「もっと欲しかったらまだまだあるから」といって、採ったばかりのギンボを土産がわりに手渡してくれた。「ところでどちらさんだったかの」元女将の記憶は薄れていた。