曇り、時おり小雨がぱらつく。きょうの山行は月山を予定していたが、80%雨の予報で予定を変更。宮城県太白区白沢峠、二輪山、ゴロ山、箱倉山の周遊コースへ行く。この山は雪の2月に登った山で、再訪ということになる。こちらの気候は快晴とはいかないが、時おり日差しもあり、気温は20℃を記録。
道は足の感覚で覚えていたが、雪景色から一転、新緑と美しい花に彩られた風景はまったく別の山であるような気がする。靴を軽登山靴にしたこともあって、足取りはスムーズだ。山桜はすでに花を落とし、かわりにヤシオツツジやヤマツツジが開き、山道を可憐なスミレサイシンが彩っていた。
二ノ輪山、ゴロ山、箱倉山の標高はせいぜい340mから370m里山だ。この山も地域の人に愛されているのだろう、道を迷わないようにテープや矢印で細かく案内表示されている。細い山道は所々にきのうの雨で足場の悪い水溜りがあったが、ヤブなどはなく、腐葉土が全体を覆いクッションがきいて歩きやすい。里山にはどこか人の暮らしの匂いがついていて、私には懐かしい気がする。
ゴロ山頂上からの眺望がこの日一番の絶景であった。近景の新緑、その向こうに山桜や薄みどりの木々が広がり、またその上空に泉ヶ岳の勇姿が浮かび、左に目を転ずると戸神山の頂がすぐそこである。
連休の最後の休日のためか、48号線から仙台方面へ向かう車がひきを切らない。だが、この里山の春景色を満喫したのは、我々のグループだけで、山中で人に会うこともなかった。山道にツバメオモトの葉が群生している。この花が咲けばさぞかしキレイだろうと、想像しながら歩く。
歩きながら考えることは少ない。ふと目にした風景に感動していることの方が多い。頭をよぎるのは畑の植え付けの手順だったり、昔の思い出だったりする。子どものころ、母に連れられて山に蕗を採りにいったことがある。母がせっせと蕗を採っているむこうに、蛇が何尾もとぐろを巻いている。「蛇だあー」と叫んだのは、夢であったのか、現実であったのか記憶はすでに朦朧としている。
鳥の声が突然に聞える。藪のなかで、かさかさと音がする。すぐに蛇を連想するが、後ろからきた人が、枯れ枝を道の外へ片付けている音であることに気づく。体中にやすらかなここちよさがゆっくりと広がっていく。難所の恐怖感もない、里山歩きの醍醐味だ。
箱倉山の頂上だ。登頂記念の柱が立っている。曰く「初登頂記念」「10周年記念」「キャンプ登山」。麓の小中学校の生徒たちの歓声があたりに響いているような気がする。「箱倉山、地形図で見ると四角な山なんだね」とTさんが言う。
箱倉山からの下りは急勾配であった。雑木林の下に、ブッシュ状の伐採跡が広がっていた。ここにゼンマイが群生していた。しばらくの間、ゼンマイ採りになる。ゼンマイは雪が融け落ちいく斜面に多く自生するが、沢でもない斜面に出ているのは珍しい。
総歩行距離6km、歩数13000歩。歩行時間3時間の山行であった。