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気温15℃、畑で除草、苗木にアンドン、水遣り。液肥をニンニク、ラッキョウ、ニラにかける。9時頃から雨になる。ウェザーニュースでは季節を進める雨とある。畑の作物には恵みの
雨である。雨に藤の花が洗われていた。
チャペックの「園芸家12カ月」に恵みの雨を喜ぶシーンがある。
「うれしい雨。ひやひやした水のなんというこころよさ。わたしの魂に水をあびせておくれ。わたしの心を洗濯しておくれ、きらきら光る冷い水。暑さが私を不機嫌にした。不機嫌にし、なまけ者にし、憂うつにし、鈍感に、物質的に、エゴイストにした。ひでりでわたしは干からび、憂うつと不愉快で息がつまった。ひびけ乾いた大地が降りそそぐしずくを受けるときの、銀の鈴を鳴らすような接吻!音高く降れ、風にそよぎつつ万物を洗い清める水のヴェール!どんな太陽の奇跡も、恵みの雨の奇跡にはおよばない。大地の溝の中を走れ、憂いにしずんだ小さな水。わたしたちを囚人にしている乾いた土をじっとりとうるおし、しみこんでおくれ。わたしたちは息を吹きかえした。みんな。草も、わたしも、土も、みんな。いい気持ちになった、これで。」
雨に濡れた藤の花をカメラに収める。
藤は日本古来の在来種である。ただひとつ中国から渡ってきたシナフジが例外だが。左巻のヤマフジ、右巻のノダフジの3種が原種である。フジの基本の色は紫で、それゆえに古来から人々に愛されてきた。日本の歴史上の貴族である藤原氏は、藤にゆかりの氏族であるし、僧の最高位には藤の色である紫の僧衣を着用する。
清少納言は「枕草子」でめでたきのもとして「色あひふかく、花房ながく咲きたる藤の花の
松にかかりたる」と藤の花を愛でている。昨今では、公園に設えられた藤棚に垂れ下がる藤が賞玩されているが、万葉や平安の時代は松の幹に巻きつき、その枝から垂れる藤の花が愛でられた。
恋しけば形見にせむとわが屋戸に
植えし藤波いま咲きにけり(万葉集巻8 1471)
千数百年のときを経て、わたしたちのこころに残る藤へのあこがれはいまだに消え去ってはいない。