鳥海山の東麓にある丁山地。標高こそ高くないが、岩峰の荒々しい山で構成されている。今回はそのなかで、主峰への取りつきの長い加無山に挑戦した。季節はすでに初冬、鳥海山、月山はすでに冠雪し、紅葉はより低地へと進んでいる。加無山も、枯れた葉がわずかに残り、一番遅い黄色の紅葉が最後の輝きを見せていた。記録と記憶をたどると、この山に登るのは、今回で3回目である。平成6年10月9日が最初に登ったことになっている。その日からもう20年以上の日がたっている。
もう薄れてしまった記憶では、広い車道のような登山道、たくさん出ていたキノコのことがあるのみだが、現実には深い沢に刻まれるようにつけられている長いトラバース状の登山道に足の筋力が急速に奪われていく。標高は997mに過ぎないやまだが、著名な山に比べても体力が必要な山であることを思い知らされる。
渡渉の回数は4度、昨夜雨が降ったらしく水量が多い。それでも、残されている紅葉に魅せられながら足元の悪い登山道を進む。沢の対岸にはスラブ状の一枚岩が敷き詰められたような姿を現す。登山口で山仕事をしているらしい人にあっただけで、我々のグループ以外には人影は見えない。ときたま山鳥の甲高い鳴き声が響くばかりだ。早朝の霧が晴れて、青空と葉を落として木々と、岩でごつごつした荒々しい山容が姿を現していた。
雌加無山の裾を巻くような急登を挽割へと向かう。登山を開始してから3時間、胎内くぐりの場所に着く。ここで昼食。日暮れの早い晩秋であるため、この地点で引き返すことにする。勾配のゆるい登山道であったが、意外にも疲れてしまったことに驚く。20年前にこの山で疲労したなどということはほとんど記憶していない。記憶が薄れたのか、体力が衰えたのか、はたまた登山道が荒れたのか、いずれが真実なのか定かではない。キノコ狩りを期待していたが、ナメコやムキタケもほとんど見つけられない。ただ、オオイチョウタケの群生が一か所見つかり、メンバー4人全員のお土産ができたのが救いだった。