常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

疝気の虫

2018年02月02日 | 日記


最近、人に会うと腰や膝の痛みを訴える人が多い。曰く肋間神経痛、腰部脊椎狭窄症、変形性膝関節症などなど。加齢とともに、骨の老化によるものであろうか。疝気は昔下腹部の痛みを称し、漢方薬で直したものらしい。しかし、今の腰痛も当時は疝気といわれたらしいから、骨や神経からくる痛みもその例外ではない。得体の知れない疝気の虫が、その病の原因になっていた。

疝気持ち雪にころんであわれなり 漱石

漱石は胃弱で、いつも胃に軽い痛みを感じていた。それを自ら自嘲気味に疝気持ちと称していた。漱石の住んでいた近くには寄席があり、子どものころから寄席に行くのを楽しみにしていた。落語にはこの疝気持ちという話がしばしば登場する。枕に、「悋気は女のつつしむところ、疝気は男の苦しむところ」などと始まる、「疝気の虫」という話もある。

医者が見慣れぬ虫を見つけてつぶそうとすると、「助けてくれ」とその虫が言う。聞けば、その虫は疝気の虫で、ソバが大好物でこれが胃に入ってくると喜んで大暴れをするため、喰った人間が苦しむ。ただ、ソバの薬味のトウガラシが苦手で、これが虫の身体につくと腐ってしまうので「別荘」の睾丸に逃げ込んでいると言う。これを聞いた医者が、疝気で苦しむ男の女房にソバを食べさせて、好物につられて女房の身体に虫を移してから、トウガラシを食べさせた。あわてた疝気の虫は、それと、逃げ込もうとしたが、「あれ別荘がない」。他愛のない落ちである。
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