涅槃とはずいぶん難しい言葉だ。昔、ある俳優が投身自殺をしたとき、「涅槃へ行きます」という遺書を残したことがあった。辞書を見ると、聖者の死、入寂、入滅などとある。本来、梵語で吹き消すというのがもとの意味である。そこから、煩悩を滅却して、絶対自由の状態という意味が生まれている。昨日2月15日が、釈迦入滅の日で、お寺では涅槃会が行われる。木の下で臥せている釈迦の絵を本堂に掛けて、読経する。
木のもとに臥せる仏をうちかこみ象蛇どもの泣き居るところ 正岡 子規
釈迦をしたって同じ日に死んだ西行、また吉田兼好。古人の忌日が続き、遠い過去に思いを寄せる日々である。その前日はバレンタインの殉教した日。春めいて小鳥たちが相手を求めあうという伝説から、恋人たちが手紙を交す風習が生まれた。間違っても、義理チョコなどを配る日ではない。天才中学生棋士藤井聡太5段のもとには、家に持ち帰ることができないほどたくさんチョコレートが届いたそうだ。