インフルエンザが流行り始めた。定期の診察のため病院を訪れると、風邪の治療のために来ている人も多い。もうこの年で、新年会などの会合などのほかは、人混みのなかに行くことも少ないが、自分にとっての感染機会は病院の待合室のような気がする。インフルエンザワクチンというものを接種したことがない。ワクチンで予防するという発想がない。風邪の菌に打ち勝つ体力を高めるこの方が大切であると思っている。ここ10年の記憶をたどってみても、風邪で寝込んだのは一度ぐらいしかない。
江戸時代の市井では、風邪をもたらすのは風の神であると信じられていたらしい。そのため風邪が流行ると、人々は「風の神送り」というものを行っていた。京都では、疫病神に見立てた藁人形を小さな船に乗せ、鉦や太鼓、三味線などで囃したてながら鴨川に流した。その様子を詠んだ狂詩がある。
「京中一面、春の寒に中てられ、家並みの鼻垂、退けんとするも難し。往往 風の神を送る者あり、吾初めて観る。」
インフルエンザの菌は乾燥を好む。空気が乾いた地域から、猛威を振るいはじめ、学級封鎖や職場の欠勤が増える。できれば、医院へ薬を貰いにいくのも避けたい。