二十四節季の小満を迎えた。節季を現す言葉のなかで一番好きな言葉だ。この頃になると、山の緑が一段と濃くなり、野草の花の盛りになる。小満とは、麦の実が少し入ってふくらみ始めることを意味する。次の節季は種を蒔く、芒種であるから農家にとっては一年で一番の繁忙期である。そして梅雨が、日本列島に広がっていく。
緑は山原に遍く 白は川に満つ
子規声裏 雨煙の如し
ホトトギスが鳴く季節である。山行で緑に目を奪われながらも、鳥の声のなかに探しているのはホトトギスの声である。今年はまだその声を聞いていない。カタクリの花に来るギフチョウ、フジバカマに群れるアサギマダラ。そして蛍が飛ぶ頃、八丁トンボが姿を現す。いよいよ、自然の交響楽のような季節が始まった。