常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

歳時記

2021年05月27日 | 日記
烏の子育ての季節が始まろうとしている。森の中で、巣に近づくと、大きな声で泣きながら威嚇の飛行を始める。巣を守ろうとする本能なのか、頭を掠めるように飛ぶので、恐怖感を覚える。3月には巣作りを始め、6月には抱卵20日で雛になる。そこから烏の子育てが始まるが、親は巣を留守にして餌を採りに出かけ、巣で待つ子烏に口移しで餌を与える。巣離れは雛になって一か月後、その後も親と一緒に過ごし8月ころようやく親と別れる。

「反哺の孝」という諺が中国にある。雛から成長した子烏が、雛の頃に親から口移しで餌をもらい育てられた恩返しに、しばらくの間、親のために餌を運んで親に与えるという意味だ。野鳥の研究家の間では、こんな習慣はないと結論づけられているが、親孝行の見本として日本での語り継がれてきた。

歳時記の「別れ烏」とう季語がある。秋の季語だが、この項を読むと、ふだん憎らしい存在の烏だが、その恩愛の情が伝わって来る。「烏は親子の情愛が深く、抱卵の時は雌烏に雄烏が餌をよく運び、人が巣を見上げたりしていると、威嚇して鳴く。」秋の気配がしてくると、子別れの季節がやってくる。「別れ烏」という季語は、一種言い難い哀切季語、と記されている。

田の縁や追ひ崩さるる秋烏 樗堂

歳時記は俳句を作る人には必携の書だが、季節感に浸りながら読む楽しみがある。亀が鳴く、蚯蚓鳴くなどありそうもないことが季語になっている。そこには、自然のさまざまな事象を、句に詠み込んできた人々の知恵がいっぱい詰まっている。
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