鈴蘭
2021年05月06日 | 花
北海道に生れてこの地に来るまで、鈴蘭は北海道にだけある花と思い込んでいた。ここへ来て、宿舎の玄関わきに鈴蘭が咲くのを見て驚いたことを覚えている。確かめてみると、街にはすずらん街という商店街もあり、人に聞いても鈴蘭は普通に知っていたので、この地に自生していることが分かった。そればかりか、ずっと南の長野県や奈良県にも、町の花にしているところがある。井の中の蛙とは、よく言ったものである。実は、北海道の勇払郡に早来町というところがあり、この町の花は鈴蘭である。昔からすずらん祭りが行われていて、ここまで多くの人が鈴蘭狩りに出かけていた話を聞いたことがあった。
霧吹きて鈴蘭を摘む人が来る 水原秋桜子
同種のものはヨーロッパにもあり、フランスでは婚約者や親しい人に、この季節、鈴蘭を贈りものする風習があるらしい。芳香がさわやかで、この花を贈られた女性は喜ぶらしい。花の季節、人々の暮らしは、花によって彩られ、喜びも悲しみも花とともにあった。
北海道の利尻島に生れた作詞家に時雨音羽がいる。フランク永井のヒット曲「君恋し」の作詞者だ。この人の書いた「海棠」を読んでみる。
姿やさしい海棠の
花につれない夜の雨
あらしになったらなんとしょう
乙女心をそのままに
きょうもあの日の夢に咲く
悲しいわかれじゃないかしら
雨は涙か引く糸か
花を見せたい人は来ず
逢わずに散ったらなんとしょう