常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

グミ

2020年10月23日 | 日記
妻と一緒に、笹谷峠に紅葉を見に行った。仙台へ抜ける道の脇に、一本の秋グミがるルビーのような赤い実をつけていた。我々の年代の者にとっては、グミの実はなついかしい。食べるものが少なかった時代、子どもたちにとっては、グミは空腹を満たす果実であった。いま口にしてみると、口のなかにどこか渋みが感じられる。だが全体としてほんのりした甘みは昔の懐かしい味である。妻はグミの木の下に立って、枝を引き寄せ、たわわになったグミを懐かしそうに味わっていた。秋グミは採って、果実酒のすることができる。だが今では、その赤い実が、周囲の紅葉にまじりあって秋の山を彩るのを、鑑賞に行く。食べるのも、酒にするのも、もう手間をかけることは避けるようになっている。

日々の散歩で、木の下に落ち葉を踏んで歩くようになった。2月の末から始めた、ヘルスケアによるウォーキングのトータル歩数が300万歩を数えた。アプリは、この節目にメダルをくれる。300万歩を示す3をデザイン化したのもだ。これで6つ目。次に目指す節目は500万歩だ。これを達成するには、冬を越えて満1年ほどの日数を要するであろう。アプリの励ましに動機づけられながら、どいうにかここなで継続することがでた。新たなフエイスブックのグループ「山形散歩」に加わった。ここには350人ほどの人が集って、歩いた場所を写真に収めてアップしている。山形にも、知らない名所がたくさんある。歩くことの動機付けへ、新しい試みである。

「今日の森はなんて静かでしょう。葉っぱがさやさや鳴る音もなく、ただそよ風が梢をゆらして吹いていくだけ!遠くの浜辺に寄せては返す波の音のよう。森はなんとすてきでしょう!美しい木々よ!みんなを友だちのように愛しているわ」(モンゴメリ『アンの青春』より)

赤毛のアンが愛した森の小径は、日々歩くことの喜びを共有させてくれる。コロナ感染という不幸が、人が自分の足で歩く輪を世界中の人へ広げていって欲しいものだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二十世紀

2020年10月22日 | 日記
二十世紀といえば、和ナシの代表種で、今では鳥取県の名産として市場に出回っている。しかし、このナシが明治時代千葉県の松戸で発見されたものであるのはあまり知られていない。明治21年のこと、千葉の松戸に住んでいた松戸覚之助という人が、自宅のゴミ箱の近くに芽生えているのを偶然発見した。これがおいしいナシであることが分かり、来る二十世紀を担う品種として「二十世紀」と命名された。同じころ川崎市の当當間長十郎が、自分のナシ園で実生で発見したものに発見した人の名をとって「長十郎」と命名されたナシがある。なかなか面白い符合だが、以来日本のナシの代表品種として長く親しまれてきた。

戦後になって、ナシの品種改良が行われ、幸水、新水、豊水などが登場した。これらを総称して三水と呼ばれて、今ではナシの代表格である。二十世紀だが、30年ほども前のことだが。当時は福島産の代表品種として有名だった。隣県のことで、知り合いからいただくことも多く、福島市をナシの季節に訪れると必ず皮を剥いてふるまってくれた。その実の白さは奥深く、その甘さに感動したことは今も忘れられない。先日、尾花沢の道の駅で、二十世紀が売られているのを見て、懐かしかったので買ってみた。しかし、ここのものは実が小さく、みずみずしさも今いちであった。これなら、庄内産の刈谷ナシの方がよい。ナシは肩と尻が張ったものが美味しい。尻の方に甘みがあり、実の中心部分は酸味が強いので、大きく芯をとって切りわけるべきだ。

これから、山形では洋ナシの「ラフランス」の収穫が始まる。高価なナシとして贈答品として人気があるが、これもナシの交配用にたまたま植えた品種から偶然においしい洋ナシであることが分かり、市場の出回ることになった。ナシのは、こんな偶然が重なっているのは面白い。

真夜覚めて梨むきゐたりひとりごち 加藤 楸邨
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紅葉賀

2020年10月21日 | 源氏物語
源氏物語の7帖は「紅葉賀」である。神無月の紅葉の美しい日、先帝朱雀院の住まいに桐壺亭の行幸があった。その屋敷には、紅葉が紅く染まり、先帝の長寿を祝うのにふさわしい秋の日であった。この賀に花を添えるのは、光源氏と頭中将が舞う青海波であった。

この時、后の藤壺は懐妊しており、行幸に同行することはかなわなかった。多くの女房たちも、二人の青海波をみることができないのを残念がった。藤壺の胸中を察して、帝は清涼殿で行幸の予行練習ともいうべき試楽を行い、藤壺をはじめ、多くの女房たちの前で源氏と中将の青海波が舞われた。青海波とは、唐楽の曲名で、波は序波急という舞の調子で序から、次第に複雑な調子が加わり、急のクライマックスへと展開される。

二人は波に千鳥の模様をつけ着物、頭には鳳凰の頭をかたどった兜をかぶり、源氏は赤、中将は白の衣装で、違いを見せた。詩楽は、かの迦陵頻伽を思わせる美声で舞を引き立てた。帝はついぞ知ることはなかったが、藤壺が懐妊していたのは、若き光源氏との不義の子であった。罪の意識にとらわれながら、源氏は藤壺のために舞い、藤壺もまたその舞いの美しさに見とれるのであった。

もの思ふに立ち去る舞うふべくもあらぬ身の
 袖うち振りし心知りきや(光源氏)

唐人の袖振ることは遠いけれど
 立居につけてあはれとは見き(藤壺)

試楽のあと、源氏と藤壺の歌のやりとりである。青海波には袖を大きく振る舞いが登場する。袖を振るという行為には、古来「魂よばひ」のしぐさとされている。それを見る人の魂を呼ぶ愛情表現の行為であった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋の夜長

2020年10月20日 | 日記
秋の日没を釣べ落としと言う。4時ころに日が傾くと、びっくりするほど早く夕闇がせまってくる。日一日と日照時間が短くなる。知人の庭にバラが一輪、淋しそうに咲いていた。もう花も、少しづつ咲くのを止める。あれほど、実が成長した野菜たちも、すっかり成長をとめた。朝夕の気温が急に下がったためか、虫の音すら聞こえなくなっている。今日は秋晴れ、気温も日中は20度を越えた。朝は10℃を下回っているから、一日の気温差が10℃以上になる。コロナ禍のなかで、体調管理はしっかりとしなければならない。

長き夜や書架に無数の文字眠り 林 翔
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鶴間池

2020年10月18日 | 登山
紅葉した鳥海山の初冠雪。朝の一瞬だけ、その全貌を見せた。息をのむ美しさだ。土曜日の曇り、小雨の日を避けて、この日を選んだかいがあった。しかし、その後は鳥海山に雲がかかり、終日その姿を見ることはできなかった。しかし、今日の主目的は鳥海山の南斜面、標高820mに位置する鶴間池の紅葉である。この池は、鳥海山の火山活動のなか側火山の火口湖である。勾玉形の池で南北250m、最大幅130、最大深度3.9m。北側の沢水が流入し、南西に流出して渓流となって流れる。春の深緑、また秋の紅葉は明媚でカメラマンの撮影ポイントとなっている。この季節は、紅葉を求める人たちの人気が高い。

6時に天童の道の駅を出発、登山口には8時15分に着く。看板に鶴間池までの歩行は60分とある。すでに登山口の道路わきに、縦列で10台ほどが停められており人気の高さが分かる。ここは既に2度ほど訪れているが、登山道はしっかりと手入れされている。だが、池への下り道が意外と急勾配で、やや難儀して下った。
沢筋から平坦な地形に出ると、ブナの純林がさらに広がっている。黄葉が始まったブナ林の美しさに、仲間の歓声があがる。鳥海山の800m付近まで来なけれなかなか目にすることのできない光景だ。何故これほどブナがこの山中で勢力を張ることができるのか。それはひとえに、肥沃で適度な湿気をもった土壌ゆえである。水はけのよい尾根筋では、クロベやマツ、アスナロなど樹種でなければ生きられない。針葉樹であるがゆえに、乾燥に強いことが必要になる。幸田文は広葉樹林の春の新緑から、秋の紅葉を衣替えと言った。花嫁であればお色直しというべきか。いままさに、その衣替えを目の当たりにした。

やがて沢に水音が響いて来た。鶴間池が近いことを知らせている。東から池に流入してきた沢水が出口から勢いよく流出している。三角の屋根が見え、避難小屋が現れる。視界が開けると、周囲を紅葉に彩られた鶴間池が姿を現す。「おう~きれい!」期せずして異口同音の言葉で、光景への賛嘆が聞かれる。とりもなおさず、カメラを出して撮影。すでに、三脚を立てた人たちが思い、思いの構図で撮影に余念がない。登山口から1時間10分。本日の参加者8名、内男性2名。

山の池になほみづく木や初黄葉 木津 柳芽
鶴間池を降って鳥海家族村近くに鳳来山(858m)がある。鳥海山への登山コースにもなっている。Mさんの提案で、この日の二つ目の山登り。麓で昼食のあと周遊コースを歩く。こちらの紅葉も始まって、次週の週末には最盛期を迎えるという情報だ。今年は、紅葉が遅くなっている。鳥海家族村の登山口から登り始めたのが、12時。比較的急な登山道を登って約1時間、頂上に着く。人はほとんどいない静かな山中だ。紅葉が始まって、秋の雰囲気が満喫できる。見晴らしのきく地点は少ないが、庄内平野の向こうに日本海が広がっているのも見えた。一行は、初めて登る鳳来山に大満足である。下りはなだらかな勾配を時間をかけて下る。湯の台口に出たのは2時。ここから、車を取りに15分ほどの道のりを歩く。前回までの大きな山から一転して、鳥海山麓の好スポットで、秋山の雰囲気を堪能した一日であった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする