常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

馬酔木

2022年03月24日 | 万葉集
馬酔木に関して、自分の知識は甚だ心もとない。第一、この読み方にしたも、「あしび」か「あせび」かはっきりしない。その上、この花がこんなに早春の花であったことも、今頃になって気づいている。何かで読んだ記憶で、この葉は有毒で、馬が食べると酔ってふらつく、というのがある。少し調べてみると、「あしびきの」という枕詞は山かかるもので、大和地方から九州のにかけて自生することが多いためという解説もあった。芭蕉の句にも「馬酔木は馬に喰はれけり」というのがあったような気がする。

あしびきの山行きしかば山人の
 我に得しめし山づとぞこれ (万葉集巻20・4293)

ここで詠まれた山人について、伊藤博の言及がある。山村の守護神を祭り、村人をも統括する山の神人。つまり仙人であると言う。そして山づとは恐らく杖であろうと述べている。往時、杖は邪悪なものを払う呪物の役割があった。

山に自生する馬酔木は3㍍もになる大木らしい。このあたりでは庭や公園に植えられているが、灌木のような小さな木が多い。白い花が多いが、このような赤い花は、紅アシビと名付けられているようだ。

来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 水原秋櫻子
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睡眠の改善

2022年03月23日 | 日記
私の睡眠改善はスマホアプリのヘルシーリビングを頼りにしている。アプリを開くと睡眠改善プランを開始して119日と表示が出る。決まった時間に睡眠に就き、決まった時間に起床するのが一番の目標である。そして、前夜の睡眠の分析が示される。

夜間の睡眠 7時間54分 評価 84点 深い睡眠 25% 浅い睡眠 54%
レム睡眠 21% 熟睡 64点 目が覚めた回数 2回 呼吸の質 98点

熟睡の時間のみ70点の目標に届かず低レベルであった。その他は概ね平均。全体評価は目標の80点をクリアしている。そして何より、導入剤なしでこの2日間良好な睡眠になったことに何より安堵している。導入剤に頼る睡眠では、改善とは言い難いからだ。今年に入ってから続けている晩酌の中止も、次第に効果を高めているようだ。

何故、睡眠の改善に取り組むのか。老後の健康に睡眠が大きな役割を果たすからだ。日々不安が高まる老後の健康。これは、老人には避けられないストレスである。このストレスを解消する最善の方法が睡眠である。そのためには、朝散歩、運動が欠かせない。日々励ましてくれるスマホアプリは自分にとっては心強い味方だ。
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言志録から

2022年03月22日 | 日記
作家の小島直記は妻を伴ってヨーロッパに旅行した。携行したのは小さな文庫本、佐藤一斉の『言志四録』であった。修養の書というべき本だが、いまでいうツイッターのような短文が書き連ねてある。その章句を摘読して気に入ったものを書き記している。例えば、学問に役立つものとして

山岳に登り、川海を渉り、数十百里を走り、時有ってか露宿して寝ねず、時有ってか饑うれども食わず、寒けれど衣ず、此は是れ多少実際の学問なり。夫の徒爾として、明窓浄机、香を焚き、書を読むが若き、恐らくは力を得るの処少なからむ。

山に登ったり、川や海を渡り、野宿したり、飢えて食べものも口にせず、寒さに着るものもない。こうした経験は学問で大いに役立つ。明るい窓べのきれいな机で、香をくゆらせて読書するなどは、力をつけることは少ない。

林家の塾長であった佐藤一斉は、このように記し、塾生たちにこの考えを伝えもしたであろう。やがて、黒船が来航し、明治維新となる。志士たちの学問の基礎にはこの言志四録があった。
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山刀伐峠

2022年03月20日 | 登山
おくのほそ道の旅で、松尾芭蕉がこの峠を越えたのは、元禄2年5月14日のことであった。この峠の最高部に地蔵堂がある。その後ろに、山刀伐峠と刻まれた碑があり、「おくのほそ道」の一文が書かれている。

高山森々として一鳥声きかず。木の下闇茂りあひて、夜行くがごとし。雲端につちふる心地して、篠の中踏分、踏分、水をわたり岩に躓て、肌につめたき汗を流して、最上の庄に出づ。

この峠を降りて最初の集落が市野々である。ここの地区の人々が、山刀伐峠の古道を守り、奥の細道を今に伝える地道な努力をされている。毎年のお彼岸の頃に開かれる「山刀伐峠カンジキツアー」は、」この地区の恒例行事である。この近くで生まれたsさんは、このツアーに山の会を参加させようと早々に参加申込みをしてくれた。残念ながら地区行事は、コロナのために中止。わが会だけ参加のカンジキツアーとなった。案内は地区区長の山口忠博さんと菅藤公民館長。

区長さん持参の烏帽子は、峠の山の形をなぞって作られている。それを被り、カンジキを履いて峠道に入る。見れば区長の履いたカンジキは長靴より一回り大きいだけでコンパクトだ。雪の季節に兎を狩るためのカンジキで、この地区の伝統であるらしい。莵が木の林に逃げ込むと、杉の枝を空へ投げ上げる。それを鷲と勘違いした兎が、雪のなかに潜りこむ。そこへ走って捕獲するためにカンジキが動きやすいコンパクトなものになっていると説明してくれた。

偲い木坂の悲恋、一日早い刈り上げ餅、峠に住むことになったいきさつ等など。ツアーなれしているのか、山口さんの話題はユーモアに富んでいる。船下りの船頭さんの話ぶりに似た感じがしないでもない。笑いながら、最後の急坂を登る。半分雪に埋もれた地蔵堂と山刀伐峠の石碑がある。祠の傍らに樹齢数百年という杉の老木がある。一本の幹から数本の枝でているこの杉は「子持ち杉」と呼ばれ、傍らのお地蔵さんは「子持ち地蔵」「子宝地蔵」と呼ばれ、子宝、安産の祈願に訪れる若者が多い。お賽銭を上げ、孫の安産を祈願する。
帰路は急坂を下ってトンネルの脇の国道に下る。参加者13名、内男性2名。

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晩年の本

2022年03月19日 | 読書
私の探しものは春の花ばかりではない。散歩のついでに立ち寄るブックオフの棚で、この年になって楽しめる本を探すことである。この古書店の棚に100円~200円のコーナーがある。文庫のほか新書だけでなく、日本人の作家の小説や実用書までかなり大きな棚に本が収めてある。村上春樹の小説も新本のようなものが200円で買える。たまたま目についたのが小島直記『私の「言志四録」』である。伝記作家の小島が死の前年に新装改定版として致知出版社から出されたものだ。

小島直記は幕末の儒者・佐藤一斉の『言志四録』を必見の書と考えている。還暦で妻を連れたヨーロッパ旅行で携えていったのが、岩波文庫の『言志四録』であった。イギリスやローマの史跡を見たあとホテルに帰ってこの本を摘読ししている。86歳になって、60代に書いた本の改定版を出すことは、この本を読めという小島の遺言のような気がする。私の本棚には講談社学術文庫の訳文付きの『言志四録』4巻が眠っている。小島はこの摘読から、これは心に響くもの書き留め、この本で紹介している。

数ある章句からひとつだけ書いておく。

順境春の如し。出遊して花を看る。逆境は冬の如し。堅く臥して雪を看る。春は固と楽しむべし。冬も亦悪しからず。

人生の順境と逆境について述べたものだ。順境とは万事が都合よく状態をさしている。その反対に逆境がある。すべてが意のごとくにならない時。誰の人生にはそうした時はある。川上正光氏の付記に「逆境は伸びるための準備をする時期であり、順境にあっては、心のゆるみを押さえて失敗しないように慎重に事にあたらねばならない」とある。

この本で小島は友人の伊藤肇の死について書いている。同じジャーナリストであるが、伊藤は財界に幅広い人脈を持ち、後に小島を伝記作家へ導く多くの偉人を紹介した。同じブックオフで伊藤肇の『人間的魅力の研究』という本を見つけた。良寛、西郷隆盛、瀬島龍三。こうした人物の魅力につて書かれ、初めて触れる面白い本である。こんな掘り出し物が200円で買えるという望外の幸せに、春の順境を満喫している。
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