秋風にこゑをほにあげてくる舟はあまのとわたる雁にぞありける(古今和歌集)
秋風に大和へ越ゆるかりがねはいや遠ざかる雲隠りつつ(万葉集)
ゆきかよふ雲ゐは道もなきものをいかでか雁のまどはざるらむ(人丸集)
山の端(は)の雲のはたてを吹く風にみだれてつづ く雁のつらかな(玉葉和歌集)
雲間もる入り日のかげに数みえてとほぢの空をわたるかりがね(風雅和歌集)
夕さればいや遠ざかり飛ぶ雁の雲より雲にあとぞ消えゆく(玉葉和歌集)
夕日影さびしく見ゆる山もとの田のもにくだる雁の一つら(風雅和歌集)
大江山かたぶく月の影さえて鳥羽田(とばた)の面(おも)におつるかりがね(新古今和歌集)
つれてとぶあまたのつばさよこぎりて月のした行く夜半(よは)の雁がね(風雅和歌集)
さ夜中と夜はふけぬらし雁が音(ね)の聞こゆる空に月わたる見ゆ(万葉集)
霧こめてあはれもふかき秋の夜に雲ゐの雁もなきわたるかな(中務内侍日記)
しのびあまり恋しきときは天(あま)の原そらとぶ雁のねになきぬべし(金槐和歌集)
いかにせむ雲の上とぶ雁がねのよそになり行く人の心を(続後撰和歌集)
(2009年11月3日の「雁」の記事は削除しました。)