賦得麦秋至、一首
暦を歩すれば 春王去りぬ
時に乗ずれば 夏の令安(やすらか)なり
麦田 千畝遠し
秋色 両岐寛(ゆるやか)なり
先づ登(みの)る穀(たなつもの)を挙(まつ)らむことを欲りす
暮律の寒きに逢ふこと非ず
候(とき)は繭の税(みつぎ)を収めむことを占(しめ)す
人は鶏の竿を守らむことを趁(もと)む
旧を録して囚戸を排(ひら)く
新を羞(すす)めて廟檀に粛(つつし)む
此れより稼瑞 多し
望まむとす 碧雲端
(菅家文草~岩波・日本古典文学大系)
千峯の鳥路は梅雨を含めり 五月の蝉の声は麦秋を送る
(和漢朗詠集~岩波・日本古典文学大系)
せみ
送るといふ蝉の初声きくよりぞいまかと麦の秋をしりぬる
(蜻蛉日記・巻末家集~岩波文庫)
みそのふにむきのあきかせそよめきてやまほとときすしのひなくなり
(散木奇歌集~日文研HPより)
五月かも麦の秋風蝉のこゑましはる杜になく郭公
(草根集~日文研HPより)