①
国道37号線沿いの伊達市と洞爺湖町の境に、
美味しいラーメン店がある。
年に数回だが、そこの味噌ラーメンが食べたくなり、
車を15分ほど走らせることがある。
その味は、いつも決して期待を裏切らない。
最初に、レンゲでスープをすくい、一飲みする。
その瞬間、「来てよかった。」と必ず思う。
何度かそこの暖簾をくぐり、
それを味わっていて、分かったことがある。
麺をすするのを2,3回くり返すと、
味噌あじの中にあるほのかな甘みに気づく。
その甘みの正体は何か、探った。
それは、スープの中にまぎれ込んでいる、
刻んだタマネギと白菜だった。
恥ずかしいことだが、それまで野菜が、
こんな上品な甘みを生み出すことを知らなかった。
味噌あじのスープに、甘みがとけ込んでいて、実に美味しい。
その上、小さく刻まれたタマネギも白菜も味わうと、
これまたやさしい甘みが口いっぱいに広がった。
この甘みが、私の好きな味噌ラーメンの美味しさを作っている。
当然、タマネギも白菜も、地産だと思う。
②
私の知る限り、市内には3軒の中華料理店がある。
その中でも私は、
老夫婦と息子の3人で切り盛りしている某店が好みだ。
そこでは、決まって麻婆豆腐と酢豚を注文する。
もう一品を加えるとしたら、エビチリか、青椒肉絲なのだが、
つい先日は、珍しく回鍋肉にしてみた。
どれも、いつも私好みの味で、
ついつい生ビールも進んでしまう。
それにも増して、この日の回鍋肉には、驚かされた。
豚肉の美味しさに加え、キャベツのなんと「うまい!」こと。
次から次へと箸が進んだ。
家内は無言。当然、私も無言。
皿に盛られた全てが、もう無くなろうとしていた頃、
口を揃えて「美味しいね!」の有り様だ。
店主の腕もさることながら、
あの味は、きっと春キャベツの力だと思った。
柔らかいのに、シャキシャキとした食感がたまらない。
1週間後、我が家の食卓にも回鍋肉がのった。
若干、旨味は違っていたが、
あの春キャベツの美味しさは不動だった。
最盛期には、市内の至るところの畑が、春キャベツで埋まる。
その新鮮さも味にプラスされているのだろう。
③
全国展開の『イオン』が、伊達にもある。
その食料品売場の一角に、対面販売の魚屋がある。
夕方になると、そこに並ぶ鮮魚に、
「半額にするよ!」と声が飛んだりする。
しかし、私は、生きがよくて好みの魚を求め、
昼時にはその売場に行き、正価で買うことが多い。
さて、最近のことだが、どういう訳か、
その売場に並ぶ鮮魚に、カレイの種類と量が豊富なのだ。
その上、その中に、
あの「ババガレイ」がよくあるのだ。
小中学生だった頃、時々食卓にのった煮魚である。
その味が忘れられず、学生時代に帰郷すると、
よく母に「ババガレイの煮つけ」をリクエストした。
しかし、あの頃ババガレイは不漁で、
超高級魚の仲間入りをしてしまっていた。
だから、それを食べることは叶わなかった。
ババガレイは、東北から北海道の太平洋岸の魚である。
首都圏でその姿を見ることは、全くなかった。
私は、すっかり諦めていた。
ところがである。
今年は、マガレイと同じような値段で、
店頭に並んでいる日がある。
なので、諦めていた「ババガレイの煮つけ」が、
もう3度も夕食にのぼった。
少年の頃、美味しいを連発して、食べたあの美味しさが、
鮮明に蘇った。
私だけではないと思うが、「煮魚の王様」だと確信した。
それにしても、「ババガレイ」とは、すごい名である。
しかも、『婆婆鰈』と書く。
一節によると、体の表面がヌルヌルとした粘液でおおわれて、
汚らしいことから、「ばばっちぃ」が変化した名だと言う。
東北地方では、「ナメタガレイ」と呼ぶらしい。
美味しさのあまり、最後は皿までなめたことから、
その名がついたと聞いた。
大いに納得する。
私も、その美味しさに皿までなめたくなる。
今は、これからも時々は、
私たちの手の届く値で、
店先に並んでほしいと願っている。
④
現職の頃、出張先の昼食では、よくカレーライス専門店を利用した。
ビーフ、ポーク、チキンとメニューが並んでいたら、
迷わず「ビーフカレー」を注文した。
肉は、何と言っても牛が一番と思っていたし、
実際に美味しかった。
ところが、伊達に来て5年、
今や「肉は豚でしょう!」に、変わってしまった。
北海道産の豚肉は、実に美味しい。
十勝地方発祥の豚丼、『室蘭やきとり』は鶏肉の代わりに豚肉など、
北海道には豚肉を使ったご当地グルメが多い。
伊達には、地元の豚肉がある。
オオヤミートさんの『黄金豚』(コガネトン)である。
聞くところによると、子ども達の給食にでる肉が、
どこでどう生産された物なのか不安になり、
精肉店を営んでいた主人が、
地元の豚肉を提供しようと頑張ったのだと言う。
『黄金豚』は、オオヤミートが自社牧場で飼育している。
その上、製品製造、販売まで一貫した自社流通で行っている。
地元牛からの特別なホエーを与えた「三元豚」が、
その美味しさの秘密だと聞いた。
確かに、適度の柔らかさに豚肉の旨味があり、満足できる。
その上、安心安全がついてくる。
近くにカレーライスの専門店はない。
もっぱら家内が作るものだが、
今はポークカレーに大満足である。
「エッ!、『黄金豚』のトンカツですか?」
これまた、たまらない!
⑤
今朝も、10キロのジョギングで汗を流した。
走る道々に、トウモロコシ畑がある。
つい先日までは、その丈が50センチにも満たなかったのに、
もう1メートルを超えている。
まもなく実をつけるだろう。
地元では、誰も「トウモロコシ」とは言わない。
「とうきび」である。
間もなく北国も夏である。
とうきびの季節だ。
最盛期には、朝もぎのものが1本100円である。
私は、200円を握りしめ、
子どものようなワクワクした気持ちで、
物産館に買いに行く。
戻るとすぐに皮をむき、家内に茹でてもらう。
毎日でも食べたくなる。
伊達に来るまでは、その美味しさを知らなかった。
給食で、ほんの一欠片が出ても、その食べずらさに、
眉をしかめたことが、ウソのようだ。
あの美味しさまで、後1,2週間、待てばいい。
* * *
年齢と共に、様々な「欲」が下降していくと言う。
きっと、私もそうなのだろうが、
でも、「まだまだ、まだまだ」と思っている。
特に、食欲はこの地で一段と目ざめたようだ。
世界も私たちの国も私の足元も、先々に不安が増している。
中には今の状況は戦前に似ていると警告する方もいる。
理不尽なニュースの数々に、無性に心は傷む。
こんな時、『北の「うまい!」』などと、
「ふぬけている場合か!」とお叱りを受けそうである。
しかし、そんな幸せ感を誰もが大切にしてこそと、
私は思うのだが・・・。
ジャガイモ ピンク色の花
国道37号線沿いの伊達市と洞爺湖町の境に、
美味しいラーメン店がある。
年に数回だが、そこの味噌ラーメンが食べたくなり、
車を15分ほど走らせることがある。
その味は、いつも決して期待を裏切らない。
最初に、レンゲでスープをすくい、一飲みする。
その瞬間、「来てよかった。」と必ず思う。
何度かそこの暖簾をくぐり、
それを味わっていて、分かったことがある。
麺をすするのを2,3回くり返すと、
味噌あじの中にあるほのかな甘みに気づく。
その甘みの正体は何か、探った。
それは、スープの中にまぎれ込んでいる、
刻んだタマネギと白菜だった。
恥ずかしいことだが、それまで野菜が、
こんな上品な甘みを生み出すことを知らなかった。
味噌あじのスープに、甘みがとけ込んでいて、実に美味しい。
その上、小さく刻まれたタマネギも白菜も味わうと、
これまたやさしい甘みが口いっぱいに広がった。
この甘みが、私の好きな味噌ラーメンの美味しさを作っている。
当然、タマネギも白菜も、地産だと思う。
②
私の知る限り、市内には3軒の中華料理店がある。
その中でも私は、
老夫婦と息子の3人で切り盛りしている某店が好みだ。
そこでは、決まって麻婆豆腐と酢豚を注文する。
もう一品を加えるとしたら、エビチリか、青椒肉絲なのだが、
つい先日は、珍しく回鍋肉にしてみた。
どれも、いつも私好みの味で、
ついつい生ビールも進んでしまう。
それにも増して、この日の回鍋肉には、驚かされた。
豚肉の美味しさに加え、キャベツのなんと「うまい!」こと。
次から次へと箸が進んだ。
家内は無言。当然、私も無言。
皿に盛られた全てが、もう無くなろうとしていた頃、
口を揃えて「美味しいね!」の有り様だ。
店主の腕もさることながら、
あの味は、きっと春キャベツの力だと思った。
柔らかいのに、シャキシャキとした食感がたまらない。
1週間後、我が家の食卓にも回鍋肉がのった。
若干、旨味は違っていたが、
あの春キャベツの美味しさは不動だった。
最盛期には、市内の至るところの畑が、春キャベツで埋まる。
その新鮮さも味にプラスされているのだろう。
③
全国展開の『イオン』が、伊達にもある。
その食料品売場の一角に、対面販売の魚屋がある。
夕方になると、そこに並ぶ鮮魚に、
「半額にするよ!」と声が飛んだりする。
しかし、私は、生きがよくて好みの魚を求め、
昼時にはその売場に行き、正価で買うことが多い。
さて、最近のことだが、どういう訳か、
その売場に並ぶ鮮魚に、カレイの種類と量が豊富なのだ。
その上、その中に、
あの「ババガレイ」がよくあるのだ。
小中学生だった頃、時々食卓にのった煮魚である。
その味が忘れられず、学生時代に帰郷すると、
よく母に「ババガレイの煮つけ」をリクエストした。
しかし、あの頃ババガレイは不漁で、
超高級魚の仲間入りをしてしまっていた。
だから、それを食べることは叶わなかった。
ババガレイは、東北から北海道の太平洋岸の魚である。
首都圏でその姿を見ることは、全くなかった。
私は、すっかり諦めていた。
ところがである。
今年は、マガレイと同じような値段で、
店頭に並んでいる日がある。
なので、諦めていた「ババガレイの煮つけ」が、
もう3度も夕食にのぼった。
少年の頃、美味しいを連発して、食べたあの美味しさが、
鮮明に蘇った。
私だけではないと思うが、「煮魚の王様」だと確信した。
それにしても、「ババガレイ」とは、すごい名である。
しかも、『婆婆鰈』と書く。
一節によると、体の表面がヌルヌルとした粘液でおおわれて、
汚らしいことから、「ばばっちぃ」が変化した名だと言う。
東北地方では、「ナメタガレイ」と呼ぶらしい。
美味しさのあまり、最後は皿までなめたことから、
その名がついたと聞いた。
大いに納得する。
私も、その美味しさに皿までなめたくなる。
今は、これからも時々は、
私たちの手の届く値で、
店先に並んでほしいと願っている。
④
現職の頃、出張先の昼食では、よくカレーライス専門店を利用した。
ビーフ、ポーク、チキンとメニューが並んでいたら、
迷わず「ビーフカレー」を注文した。
肉は、何と言っても牛が一番と思っていたし、
実際に美味しかった。
ところが、伊達に来て5年、
今や「肉は豚でしょう!」に、変わってしまった。
北海道産の豚肉は、実に美味しい。
十勝地方発祥の豚丼、『室蘭やきとり』は鶏肉の代わりに豚肉など、
北海道には豚肉を使ったご当地グルメが多い。
伊達には、地元の豚肉がある。
オオヤミートさんの『黄金豚』(コガネトン)である。
聞くところによると、子ども達の給食にでる肉が、
どこでどう生産された物なのか不安になり、
精肉店を営んでいた主人が、
地元の豚肉を提供しようと頑張ったのだと言う。
『黄金豚』は、オオヤミートが自社牧場で飼育している。
その上、製品製造、販売まで一貫した自社流通で行っている。
地元牛からの特別なホエーを与えた「三元豚」が、
その美味しさの秘密だと聞いた。
確かに、適度の柔らかさに豚肉の旨味があり、満足できる。
その上、安心安全がついてくる。
近くにカレーライスの専門店はない。
もっぱら家内が作るものだが、
今はポークカレーに大満足である。
「エッ!、『黄金豚』のトンカツですか?」
これまた、たまらない!
⑤
今朝も、10キロのジョギングで汗を流した。
走る道々に、トウモロコシ畑がある。
つい先日までは、その丈が50センチにも満たなかったのに、
もう1メートルを超えている。
まもなく実をつけるだろう。
地元では、誰も「トウモロコシ」とは言わない。
「とうきび」である。
間もなく北国も夏である。
とうきびの季節だ。
最盛期には、朝もぎのものが1本100円である。
私は、200円を握りしめ、
子どものようなワクワクした気持ちで、
物産館に買いに行く。
戻るとすぐに皮をむき、家内に茹でてもらう。
毎日でも食べたくなる。
伊達に来るまでは、その美味しさを知らなかった。
給食で、ほんの一欠片が出ても、その食べずらさに、
眉をしかめたことが、ウソのようだ。
あの美味しさまで、後1,2週間、待てばいい。
* * *
年齢と共に、様々な「欲」が下降していくと言う。
きっと、私もそうなのだろうが、
でも、「まだまだ、まだまだ」と思っている。
特に、食欲はこの地で一段と目ざめたようだ。
世界も私たちの国も私の足元も、先々に不安が増している。
中には今の状況は戦前に似ていると警告する方もいる。
理不尽なニュースの数々に、無性に心は傷む。
こんな時、『北の「うまい!」』などと、
「ふぬけている場合か!」とお叱りを受けそうである。
しかし、そんな幸せ感を誰もが大切にしてこそと、
私は思うのだが・・・。
ジャガイモ ピンク色の花
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