杭全神社・御田植神事・ガイダンス
いよいよ、明日、13日、19時より、650年続く「御田植神事」が杭全神社・拝殿にて執り行われます。
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Scene1.シテ(主人公)と地方(じかた=コーラス・グループ)の登場。前説。
シテは「御田植」を始めることを宣言し、神事がスタートします。
この神事で何度も繰り返される台詞があります。
シテ 「世の中の良ければ、ほながの尉(じょう)も たーれたれ」
地方 「大柑子(だいこうじ)を二つ並べて、福の種を蒔こうよ」
世の中に疫病や飢饉がなく、無事に繁栄することを願うというシテの言葉に対し、めでたいとされる大柑子(大きなみかん)を二つの太陽に例え、その下で稲を育てれば、豊作に違いないという地方の返しが心地良く、耳に残ります。
「たーれたれ」は、豊作で疫病や飢饉がなければ、世の中、事足りるという意味です。
シテは鍬(くわ)で田を耕す所作をしながら、和泉諸白(いずみもろはく=高級な日本酒)や強飯(こわめし=おこわ)、銭米(お金と米)など豊作の喜びを語ります。
地方も「同感だ」と合いの手を入れます。
ここで、シテは鍬を振りおろし、水口(みなくち=田の水の取り入れ口)を切って、田に水を入れる所作をします。
「やあえい、がばがばがば、やあえい、がばがばがば」ともっとも、力の入るシーンです。
昔は観客も一緒になって、「やあえい。やあえい。」と声を合わせたと言います。
そこから、御田植神事は地域の方から「あーえん」と親しく呼ばれるようになりました。
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Scene2.シテは唐鋤(すき)をつけた牛を連れて、再登場。
シテは田を鋤く前に農耕の大切なパートナー、牛さんと会話をします。
シテ「西宮の尉(ぜぜ)が」
牛=地方が代弁「月に三度の雨、月々(2ヶ月)に六度の雨、モオーウ」
「西宮の尉」とは、雨乞いの祈祷をする人ではないかということです。
ここで、シテが名台詞を発します。
「牛のやまう(病)、人のえきれい、萬(よろず)悪しきこと、熊野の奥の泥の海へさしのけい」
庶民の幸せを願う気持ちが強く顕れていて、何だか、ほっこりとした気持ちになります。
シテは「させい、ひょうせい、ひょうせい」と繰り返しながら、牛を引き、唐鋤で田を鋤きながら拝殿をゆっくりと廻ります。
Scene3.シテは田均し(たならし)をした後、籾(もみ)種を蒔く。
田均し棒を持って、再登場したシテは「やあえい、えい、えい、えい」と棒で田を均す所作をして、この作業に大変な労力が要することを窺わせます。
次にシテは籾桶(もみおけ)を持って、登場します。
シテは各地の長者の名を挙げ、あやかりたいと願いながら、「福の種を蒔こうよ」と籾種を四方八方に向かって蒔きます。
次に「宮の前も蒔こうよ、当所も蒔こうよ」と近くに籾種を蒔き、幸せがこの地にやってくることを祈願します。
このとき、シテと地方のやり取りはクライマックスを迎えるのです。
この籾種を持ち帰ると「福を授かる」と言い伝えられております。
昔はこの種から芽生えた早苗を田に植えれば、その田はよく稔るという信仰があり、近郊の農民が大勢来て、蒔かれる籾種を争って拾ったといわれます。
ここで、地方は退場します。
Scene4.太郎坊、次郎坊、早乙女の登場。
シテが再登場して、拝殿の隅まで行くと、「太郎坊やーい、次郎坊やーい」と扇を振って、子どもたちを呼びます。
この声に呼応して、市松人形を背負う男性と早乙女二人が登場します。
この市松人形が次郎坊で、男性が太郎坊です。
昔、子どもたちも田作業を手伝っていたことが偲ばれます。
シテは早乙女から、幼い次郎坊を預かり、神前でご飯を食べさせ、桶に放尿させます。
このシーンは大変、珍しく、杭全神社の御田植神事でしか見られないそうです。
赤ん坊の生育(食べさせる、排尿)を扱って子孫繁栄を祈っているとも、排便させて肥料とすることで自然界の循環を現わしているともいわれます。
このあと、早乙女はシテから次郎坊を受け取り、太郎坊に背負わせます。
そして、三人は神前に苗を持って並び、田植の所作を三度、繰り返したあと、帰っていきます。シテも退場して、神事が終了します。
私、今年も4年目の地方役にて、ご奉仕させていただきます。
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「御田植神事」
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いよいよ、明日、13日、19時より、650年続く「御田植神事」が杭全神社・拝殿にて執り行われます。
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シテは「御田植」を始めることを宣言し、神事がスタートします。
この神事で何度も繰り返される台詞があります。
シテ 「世の中の良ければ、ほながの尉(じょう)も たーれたれ」
地方 「大柑子(だいこうじ)を二つ並べて、福の種を蒔こうよ」
世の中に疫病や飢饉がなく、無事に繁栄することを願うというシテの言葉に対し、めでたいとされる大柑子(大きなみかん)を二つの太陽に例え、その下で稲を育てれば、豊作に違いないという地方の返しが心地良く、耳に残ります。
「たーれたれ」は、豊作で疫病や飢饉がなければ、世の中、事足りるという意味です。
シテは鍬(くわ)で田を耕す所作をしながら、和泉諸白(いずみもろはく=高級な日本酒)や強飯(こわめし=おこわ)、銭米(お金と米)など豊作の喜びを語ります。
地方も「同感だ」と合いの手を入れます。
ここで、シテは鍬を振りおろし、水口(みなくち=田の水の取り入れ口)を切って、田に水を入れる所作をします。
「やあえい、がばがばがば、やあえい、がばがばがば」ともっとも、力の入るシーンです。
昔は観客も一緒になって、「やあえい。やあえい。」と声を合わせたと言います。
そこから、御田植神事は地域の方から「あーえん」と親しく呼ばれるようになりました。
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シテは田を鋤く前に農耕の大切なパートナー、牛さんと会話をします。
シテ「西宮の尉(ぜぜ)が」
牛=地方が代弁「月に三度の雨、月々(2ヶ月)に六度の雨、モオーウ」
「西宮の尉」とは、雨乞いの祈祷をする人ではないかということです。
ここで、シテが名台詞を発します。
「牛のやまう(病)、人のえきれい、萬(よろず)悪しきこと、熊野の奥の泥の海へさしのけい」
庶民の幸せを願う気持ちが強く顕れていて、何だか、ほっこりとした気持ちになります。
シテは「させい、ひょうせい、ひょうせい」と繰り返しながら、牛を引き、唐鋤で田を鋤きながら拝殿をゆっくりと廻ります。
Scene3.シテは田均し(たならし)をした後、籾(もみ)種を蒔く。
田均し棒を持って、再登場したシテは「やあえい、えい、えい、えい」と棒で田を均す所作をして、この作業に大変な労力が要することを窺わせます。
次にシテは籾桶(もみおけ)を持って、登場します。
シテは各地の長者の名を挙げ、あやかりたいと願いながら、「福の種を蒔こうよ」と籾種を四方八方に向かって蒔きます。
次に「宮の前も蒔こうよ、当所も蒔こうよ」と近くに籾種を蒔き、幸せがこの地にやってくることを祈願します。
このとき、シテと地方のやり取りはクライマックスを迎えるのです。
この籾種を持ち帰ると「福を授かる」と言い伝えられております。
昔はこの種から芽生えた早苗を田に植えれば、その田はよく稔るという信仰があり、近郊の農民が大勢来て、蒔かれる籾種を争って拾ったといわれます。
ここで、地方は退場します。
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Scene4.太郎坊、次郎坊、早乙女の登場。
シテが再登場して、拝殿の隅まで行くと、「太郎坊やーい、次郎坊やーい」と扇を振って、子どもたちを呼びます。
この声に呼応して、市松人形を背負う男性と早乙女二人が登場します。
この市松人形が次郎坊で、男性が太郎坊です。
昔、子どもたちも田作業を手伝っていたことが偲ばれます。
シテは早乙女から、幼い次郎坊を預かり、神前でご飯を食べさせ、桶に放尿させます。
このシーンは大変、珍しく、杭全神社の御田植神事でしか見られないそうです。
赤ん坊の生育(食べさせる、排尿)を扱って子孫繁栄を祈っているとも、排便させて肥料とすることで自然界の循環を現わしているともいわれます。
このあと、早乙女はシテから次郎坊を受け取り、太郎坊に背負わせます。
そして、三人は神前に苗を持って並び、田植の所作を三度、繰り返したあと、帰っていきます。シテも退場して、神事が終了します。
私、今年も4年目の地方役にて、ご奉仕させていただきます。
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