ばくのメモ帳

『ばくのお宿』管理人の西みつのり、略して西みつのメモ帳です。ホームページに書き切れない雑多な情報を綴ります。

『散歩屋ケンちゃん』を見て その2(ネタバレ含みます)

2023年07月26日 | 銚子電鉄

7月7日、池袋シネマ・ロサで封切り上映を見ての感想です。

『散歩屋ケンちゃん』は親子4代にわたる物語です。
ケンちゃんとその父親の漫画家ゆでぷりん先生、ケンちゃんの息子の銚子電鉄社員のSEKIDAIさん、その娘の美大生瑚々です。

ケンちゃんの息子と孫は後日譚で語られるだけで、中心はケンちゃんと父親の物語です。

ケンちゃんの年齢は?と前回のブログで書いたのですが、別れて30年とのことなので、40歳過ぎでしょうか。父親への想いは自分の年齢とも密接に関わっていると思います。

クラウドファンディングが始まった時のコピーは「これは、父と息子の<再生>の物語。」でした。これがチラシでは「これは、父と息子の<未完>の物語。」に変わっていました。「再生」と「未完」、この二つの言葉にこだわって、感想を書いてみます。

映画のクライマックスは二つ、二つの山場があると思いました。

一つは車椅子のシーン、二つ目はゆでぷりん先生のまんがです。
父を車椅子に乗せて散歩するシーン、印象的なシーンですが、これはケンちゃんの「イメージ」の中に出てくる、実際にはなかった光景です。しかし、このシーンを夢みることによって、ケンちゃんはすでに父を許しているのではないでしょうか。その意味で、これはやはり「父と息子の再生の物語」だと思います。

もう一つのクライマックスはゆでぷりん先生が描く父と子の漫画です。
これは父の側からの物語です。息子を捨てた父は決して息子に寄り添うことはできません。ひとり老いて、朽ちていくだけです。触れ合うことができない父親の立場は終わることはありません。これは「父と息子の未完の物語」になるのでしょう。

最後の銚子電鉄電車でのシーン、これは蛇足ではなかったと考え直しました。

息子の口から語られる父親ケンちゃん。ケンちゃんは死んではいませんでした。結婚して父親となっていました。そして「散歩屋」に誇りを持っており、本編には出てこなかった散歩のシーンが挿入されています。

ゆでぷりん先生のまんがに彩色して「父と子の物語」を完成させているのは、ケンちゃんの孫に当たる美大生瑚々。父親の思いが鮮やかに蘇っていきます。ラストシーンの君ヶ浜を父子二人で酔っ払って歩くシーン、「未完」と記されてはいますが、やはりこれは「父と息子の再生の物語」だと感じました。

ところで、なぜ「再生」を「未完」にしたのでしょうか。私は、サブタイトル「A Lifework Orange」の「オレンジ→みかん→未完」とダジャレ先行の変更では?と少し疑っています。

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