冬の浜が明け始めるのは6時を越えてからだ。そして気温が底まで下がる。
草引きをする指先がそれを感じ取る。泣きたくなるような凍てつく痛みで、茎をつかむ指先が麻痺する。それが家に帰る合図だ。
引いた草は右手に握って束ね、一杯になるとその場に置いて進んでいく。明るくなってくると引き抜いた草の束が白い浜の上に点在しているのが見える。しかしそれを拾い集める元気がなくなっている。疼く手を握り締めそのまま家路につく。
今朝のことだ。
闇の中で白く浮き上がっている浜がきれいに見えた。小さな灯りを照らして見ると、置きっぱなしにしていた草が消えていた。こんなことが何度もあった。誰かが見かねて回収してくれたのだろう。思わず手を合わせる。これを神の仕業と思うのは間違いだろうか。
草引きをしながら、野生について考えた。
それはまた明日にでも。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます