(21)
「そっちに行ったぞ!」
「右だ!」
「左だ!」
歓声の中、金色の猫が宮殿から中庭に飛び出してきました。ところが広場は騒ぎを聞きつけた兵士で埋まっていたのです。逃げ場を求めて突進する猫の道が盾でふさがれ、進路を変えると、そこにも盾が現れます。猫はいつの間にか盾の壁に追い込まれていったのです。
兵士たちは楽しむように猫を追い詰めていきました。その輪の中に網を投げ込む者がいました。二 . . . 本文を読む
(20)
フェルミンは元気で朗らかな、優しい子供でした。野原を駆けまわるのが大好きで、王宮にある森に興味を持って、ふと気付いた不思議があると、それを探ろうとどこへでも探検する活発な子だったのです。野外の空気はどこまで行っても広く、清らかに感じられました。不思議なのはいつも、フェルミンが遊んでいると森の動物たちが集まってくることでした。フェルミンが森で迷子になっている時も、必ず動物 . . . 本文を読む
(19)
ストレンジの王宮はまるで廃墟のようなたたずまいになっていました。壁が崩れても、石畳に兵士の屍骸が転がっていても、誰もかまうものはいないのです。機能的に、通行の邪魔になるものだけが取り除かれ、それ以外の場所にはたくさんの戦死者が鎧兜や折れた武器などと共に転がっていました。
悪臭が立ち込め、尋常の者なら一刻も耐えがたいでしょう、空気が腐っているのです。反乱 . . . 本文を読む
(18)
ストレンジ王メイソンは白髪の老人でした。かりそめの王座に座った王は、苦渋に満ちた顔をしていました。憔悴した姿は今にも崩れ落ちそうに見えるのです。
無理にベッドから身を起してきたのでしょう。傍らには心配そうにたたずむ后の姿がありました。
「ストレンジの王、メイソンよ、どうかベッドに身を横たえて、御身を御自愛下され。私がそちらに参りましょうぞ。」
「王様、バリオンの王 . . . 本文を読む
(17)
キイキイ、キャッキャッ、コロコロ、
ジャングルの夜はこんなに賑やかなのかと思うくらい動物たちの鳴き声が聞こえます。
「この星は豊かなのですね。たくさんの動物がいる。」
博士が王様の方を見て言いました。
「ストレンジは水が豊かなのだ。甘い河、苦い河、いろいろあって動物たちは好みの水によって棲み分けが出来ている。確かに動物の種類は多いかも知れぬ。」
. . . 本文を読む
(16)
「ゴロニャーン」
バリオン星の王宮から金色の猫が鳴き声と共に飛び立ちました。前足で空をかき、後ろ足を大きく蹴りだすと猫は軽々と空中を走り続けるのです。
王宮の前庭に集まった民衆が手を振っています。そびえ立つ物見の塔を巻き込むようにスケール号が上昇すると、物見台にはバリオン王国の主なる重臣たちが幾重にも並んでいるのが見えます。スケール号が正面にやってく . . . 本文を読む
(15)
「反乱軍の話しを詳しく聴かせて頂けませんか、王様。」博士は北斗艦長を抱きながら顔を王様の方に向けました。
「なぜそんなことを聴くのだ。そなたたちの目的が今だこちらには分からぬのだぞ。」
「申し訳ありません、王様。」
博士ははやる心を詫びてから話を続けました。
「この子がスケール号の艦長、北斗と申します。まだ小さい故、御無礼はおゆるし下さい。」
「その子がこの猫 . . . 本文を読む
(14)
バリオン星の王宮には大きな物見の塔がありました。最上階に登ると、そこには豪華に設えられた王様の執務室がありました。老練な物見たちが絶えず四方の空を眺めています。彼らは裸眼でも巨大望遠鏡に匹敵する眼力を持っているのです。
皆の心配をよそに、王様に会ったその第一声が何と、スケール号を「太陽族の使い」と称してくれたのです。太陽の紋章を持つ者に解り合うための言葉はいらなかった . . . 本文を読む
(13)
原子の王様に再び近づいたスケール号は黄金色に輝いていました。
宇宙空間に浮かぶ黄金の猫。けれどもここは太陽や地球の浮かんでいる宇宙ではありません。のぞみ赤ちゃんの身体の中に拡がる原子の宇宙空間なのです。
のぞみ赤ちゃんは超低体重のまま生まれました。その後も理由が分からないまま体重が増えません。それなのに考えられる病気や原因は何一つ見つからないのです。ついに何の手立ても講じられない産 . . . 本文を読む