(6)-1
スケール号は額に入り口があります。猫の額が開いて階段が下りてきます。
乗組員たちがスケール号に乗る姿を見ていた院長先生は目を見張りました。
猫が大きくなっているのか、乗組員たちが小さくなっているのか、分からなくなってしまうのです。
混乱しているうちに全員がスケール号の額の中に消えていきました。
銀色の猫が床を蹴って飛び上がったと思うと、その姿がふっと消えてしま . . . 本文を読む
(5)-2
「何か言ってないかな。北斗なら助けてあげられるからね。」
ジイジが博士の口調で言いました。
その時北斗の目が真ん丸に開きました。そしてまっすぐにジイジに目を向けて動きません。
その目はジイジを見るというよりは、ジイジの背後を見ているようでした。
「はぷー」
「博士、艦長はなんて言っているのですか。」
ぴょんたが聞きました。ぴょんたは博士の肩越しに飛び上がっ . . . 本文を読む
(5)-1
元気な赤ちゃん院は街と森の間に建っていました。まるでピンクのお城です。
ここは赤ちゃんの総合施設で、赤ちゃんを宿したお母さんの宿泊施設もあり、
そこでお母さんたちは安心して赤ちゃんを産む準備ができるのです。
産後は赤ちゃんのための保育所から幼稚園まであって、
望めばそこで一貫した子育もできる国内唯一の施設なのです。
「そんなところですから、今まで早産するお母 . . . 本文を読む
(4)-2
「バブバブ」
艦長も元気な声を上げました。
空飛ぶ揺りかごは北斗を元気にするものがそろっているに違いありません。
あまり元気とは言えなかった北斗が一回り大きくなったように思えて、ジイジは嬉しいのです。
「それで博士、困っている赤ちゃんの話をしてください。」
「おお、そうだったね。」
博士は思い出したように、少し改まってみんなの前に立ちました。
「元気な赤 . . . 本文を読む
(4)-1
「博士はどうして艦長と話ができるのですか。」
食事のあと、ぴょんたが言い出しました。
「本当に艦長は話ができるのでヤすか。」
「寝ているか、泣いているかダすからね。でもわたスも艦長と話をしたいダす。」
「私が北斗、いや艦長と話ができるのは宇宙語があるからなのだよ。」
「宇宙語ってなんでヤすか?」
もこりんが真っ先に質問しました。
「むつかしいのはいやダす . . . 本文を読む
(3)-2
スケール号の中は北斗艦長を讃える歌の大合唱が響き渡りました。
「艦長が目を開けたでヤす!」
最初にもこりんが声を上げました。
「艦長が目を覚ましたダすよ!」
ぐうすかも大喜びです。
「艦長、帰りましょう。」
ぴょんたは耳をパタパタさせて北斗の上を飛んで見せました。
「君は艦長なんだよ、北斗。」
北斗はまん丸に見開いた目をジイジに向けています。
「何も . . . 本文を読む
(3)-1
スケール号の操縦室をジイジは懐かしそうに眺めました。
操縦席の前に赤いレバーがありました。操縦かんです。
ジイジはすぐにスケール号を動かしてみたくなりました。
でも操縦席には坐れません。そして気付いたのです。自分が艦長でない理由が分かったように思えました。
いつの間にかジイジになってしまっていたということなのです。
でも北斗だって、この席に坐れないし、操縦か . . . 本文を読む
(2)-2
「艦長はそこに寝ている北斗です。」
「北斗が艦長?まだ生まれたばかりの子だよ。
スケール号、お前も私のことを覚えていないのか。」
「覚えていますよ、ケンタ。あなたはとってもいい艦長でした。
おかげで私達はとってもいいパートナーでしたね。」
「スケール号、覚えていてくれてありがとう。」
「でもあなたはもう艦長ではありません。」 . . . 本文を読む
(2)-1
ある日、珍しく温かい陽射しがカーテンを通して部屋に差し込んできました。
ジイジは意味なく心がうきうきしてカーテンを開けたのです。
ピンク色の花びらが一枚とんでいました。
近所の梅の花が満開なのかもしれません。
その時、北斗のかわいい力み声が聞えてきました。
そして泣き出したのです。
窓際に置かれた小さなベッドに寝かされた北斗の顔が輝いていました。
「おう . . . 本文を読む