(17)-1
キイキイ、キャッキャッ、コロコロ、
ジャングルの夜はこんなに賑やかなのかと思うくらい動物たちの鳴き声が聞こえます。
「この星は豊かなのですね。たくさんの動物がいる。」
博士が王様の方を見て言いました。
「ストレンジは水が豊かなのだ。甘い河、苦い河、いろいろあって動物たちは好みの水によって棲み分けが出来ている。確かに動物の種類は多いかも知れぬ。」
ギャーギャ . . . 本文を読む
(16)-2
そのスケール号の中で、ストレンジ星の反乱軍討伐の作戦が話し合われたのでした。
一つ、タウ将軍はバリオン軍を率いてストレンジを目指し、
大気圏外に結集して反乱軍の動きをけん制する事。
しかしそれは簡単に決まったわけではありません。大気圏に突入して一気に反乱軍を壊滅させるという
タウ将軍の強硬策と王様の考えが真っ向から対立したのです。二人は共に譲らず決着がつきま . . . 本文を読む
(16)-1
「ゴロニャーン」
バリオン星の王宮から金色の猫が鳴き声と共に飛び立ちました。
前足で空をかき、後ろ足を大きく蹴りだすと猫は軽々と空中を走り続けるのです。
王宮の前庭に集まった民衆が手を振っています。そびえ立つ物見の塔を巻き込むようにスケール号が
上昇すると、物見台にはバリオン王国の主なる重臣たちが幾重にも並んでいるのが見えます。
スケール号が正面にやってく . . . 本文を読む
15-2
「王様、この子を抱いてやってもらえないでしょうか。」
博士は唐突に話を変えて、北斗艦長を差し出しました。それに釣られたように王様は
北斗艦長の小さな体を抱き取りました。そしてそっと顔を近づけたのです。
「良い香りだ。北斗と申したの。」
「はい、」
「ハヴパブ」
バリオン王の腕の中で北斗艦長は右手をまっすぐ伸ばして自分の握りこぶしを見つめていました。
「まる . . . 本文を読む
(15)-1
「反乱軍の話しを詳しく聴かせて頂けませんか、王様。」
博士は北斗艦長を抱きながら顔を王様の方に向けました。
「なぜそんなことを聴くのだ。そなたたちの目的が今だこちらには分からぬのだぞ。」
「申し訳ありません、王様。」
博士ははやる心を詫びてから話を続けました。
「この子がスケール号の艦長、北斗と申します。まだ小さい故、御無礼はおゆるし下さい。」
「その子 . . . 本文を読む
(14)-2
「太陽族の使いの者達、よくぞこのバリオンに参られた。」
太い声が頭の上から聞こえました。王様の声だとすぐにわかりました。
人々の心が一瞬で変わるのをスケール号の面々でさえ感じることが出来たのですから。
台座から王様が姿を現したのです。
「まずはゆるりと、身を休ませるが良い。国を挙げて歓迎いたす。我ら、太陽族の意にかけて。」
再び大喝采が起こり、 . . . 本文を読む
(14)-1
バリオン星の王宮には大きな物見の塔がありました。最上階に登ると、
そこには豪華に設えられた王様の執務室がありました。老練な物見たちが
絶えず四方の空を眺めています。彼らは裸眼でも巨大望遠鏡に匹敵する
眼力を持っているのです。
皆の心配をよそに、王様に会ったその第一声が何と、スケール号を「太陽族の使い」と称してくれた
のです。太陽の紋章を持つ者に解り合うため . . . 本文を読む
(13)
原子の王様に再び近づいたスケール号は黄金色に輝いていました。
宇宙空間に浮かぶ黄金の猫。けれどもここは太陽や地球の浮かんでいる宇宙ではありません。のぞみ赤ちゃんの身体の中に拡がる原子の宇宙空間なのです。
のぞみ赤ちゃんは超低体重のまま生まれました。その後も理由が分からないまま体重が増えません。それなのに考えられる病気や原因は何一つ見つからないのです。
ついに何の手 . . . 本文を読む
(12)
「こんなところにいたチュウか。」
重苦しい闇の中から、憎悪に満ちた低いうめき声が聞こえてきます。
この世のものとも思えないほどおぞましい声が闇の底を震わせているのです。
それはニュートと呼ばれる遊星が雨のように降り注ぐ暗黒の空間でした。
原子の世界では、太陽族のように王様をいただいていくつもの電子と呼ばれる星が集まる王国があります。けれどもそんな王国を捨て、仲間 . . . 本文を読む
(11)
「王様、信じられないことですが、ストレンジが敵の手に堕ちました。すでに宮殿が占拠されたようです。」
「星の民たちはどうしておる。無事なのか。」
王様はタウ将軍に向き直って言いました。
「何人かは捕えられましたが、ほとんどのものは山中に潜み抵抗を続けております。しかし一緒に捕らえられた姫君が心配です。・・・」
「あの気丈な姫君が捕えられただと? 敵はそんなに強いの . . . 本文を読む