(12)
「こんなところにいたチュウか。」
重苦しい闇の中から、憎悪に満ちた低いうめき声が聞こえてきます。この世のものとも思えないほどおぞましい声が闇の底を震わせているのです。それはニュートと呼ばれる遊星が雨のように降り注ぐ暗黒の空間でした。
原子の世界では、太陽族のように王様をいただいていくつもの電子と呼ばれる星が集まる王国があります。けれどもそんな王国を捨て、仲間を持たないで放浪する星も . . . 本文を読む
(11)
「王様、信じられないことですが、ストレンジが敵の手に堕ちました。すでに宮殿が占拠されたようです。」
「星の民たちはどうしておる。無事なのか。」王様はタウ将軍に向き直って言いました。
「何人かは捕えられましたが、ほとんどのものは山中に潜み抵抗を続けております。しかし一緒に捕らえられた姫君が心配です。・・・」
「あの気丈な姫君が捕えられただと? 敵はそんなに強いのか。 . . . 本文を読む
(10)
結局振り出しに戻ったスケール号です。乗組員たちはテーブルを囲んで会議中です。
{どうして原子の王様はスケール号を攻撃してきたのかーーその原因と対策}
議題を白いボードに書いてぴょんたが司会もやっています。博士がみんなの考えをききたいと言い出して始まった会議でした。
「まず、あの金の槍は間違いなく王様が投げてきた、それは間違いないですか?」
「確か . . . 本文を読む
(9)
「フンギャー、フンギャー、フンギャーーー」
北斗艦長が激しく泣き始めました。
「ゴンゴロにゃごーー」
「フンギャー、フンギャー、フンギャーーー、ふんぎゃーーー」
スケール号と艦長の泣き声大合唱です。
「はかせぇ、どうしたんでヤすか。」もこりんがオロオロしています。
「落ち着け、みんな。各自持ち場で状況を確認するんだ。」
博士はみなに指示を出して、揺りかごで泣いている北斗艦長 . . . 本文を読む
(8)
ここにありて、 しかもはるか彼方にあるもの。
我ら、 太陽族の生まれた理由がそこにある。
宇宙に伝わる太陽族の伝説を知ったのは、博士がスケール号の艦長だった時でした。
今はジイジになってしまいましたが、その時はまだ博士も子供でしたので、その伝説がどんな意味なのかよく分かりませんでした。
特に「ここにありて、しかもはる . . . 本文を読む
(7)
「博士、ここが本当にのぞみ赤ちゃんの体の中なのでヤすか・・・」もこりんがスケール号の窓から外を見ています。
「美しいダすなあ、あれが銀河ダすかね。色鉛筆の中にいるみたいダすなぁ。」もこりんも枕を抱えたまま、眠るのも忘れています。
「ここがのぞみ赤ちゃんの中だなんて信じられませんね。」ぴょんたもうっとりしています。
「あの銀河は間違いなくのぞみ赤ちゃんの中にある宇宙の姿なのだよ。光っ . . . 本文を読む
(6)
スケール号は額に入り口があります。猫の額が開いて階段が下りてきます。乗組員たちがスケール号に乗る姿を見ていた院長先生は目を見張りました。猫が大きくなっているのか、乗組員たちが小さくなっているのか、分からなくなってしまうのです。混乱しているうちに全員がスケール号の額の中に消えていきました。銀色の猫が床を蹴って飛び上がったと思うと、その姿がふっと消えてしまいました。
ハエが一匹、院長先生の . . . 本文を読む
(5)
元気な赤ちゃん院は街と森の間に建っていました。まるでピンクのお城です。ここは赤ちゃんの総合施設で、赤ちゃんを宿したお母さんの宿泊施設もあり、そこでお母さんたちは安心して赤ちゃんを産む準備ができるのです。産後は赤ちゃんのための保育所から幼稚園まであって、望めばそこで一貫した子育てもできる国内唯一の施設なのです。
「そんなところですから、今まで早産するお母さんはほとんどいませんでした。私達 . . . 本文を読む