子供嫌いだった一人暮らしのおばあさんが、その日から人が変わったというのが、近所のうわさになった。
おばあさんの家からは、いつもおいしそうなお菓子の匂いが流れて来て、子供達の鼻をひくひくさせた。
窓は大きく開け放たれ、不気味だった庭の柵も取り払われた。だれでもおばあさんの家の前にくると、おばあさんが元気にケーキを焼いている姿を見ることが出来た。
毎日おばあさんの家には子供達の笑い . . . 本文を読む
おばあさんの家のタンスの上に、もうすっかり古くなってすり切れてしまったクマのぬいぐるみが置いてあった。
「おばあさん、あれは。」ぴょんたが聞いた。
「ああ、あれかね、今までなんとなく捨てられなくてね、子供のころからもっていたものだよ。おかしいかい。」
「マギーちゃん」ぴょんたは小さなぬいぐるみをしみじみと見た。
「そう、マギーちゃんだったわ。どうしたんだろう、不思議な気持ちだわ。 . . . 本文を読む
「ピピちゃん。」ぴょんたがものかげでそっと呼びかけた。
「だれだね、なつかしい名前を呼ぶのは。不思議だね、もうすっかり忘れていたけれど、私にもそう呼ばれていたころがあったわね。だれだか分からないけれど、もう一度私の名を呼んでおくれ。」
「ピピちゃん。」ぴょんたがもう一度呼んで、おばあさんの前に顔を出した。
「あら、あなただったの。なんだかなつかしい気がするわ。昔どこかで会ったかしら。 . . . 本文を読む