どこ行くともなく
過去から未来へ連なって行く命。
その今、この瞬間が
あなたであり、私なのだ。
それゆえ
私達の最大の可能性は
100パーセント生きることだ。
それ以上を求めたり
それ以上を得る方法などはありえない。
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うまく伝えられるかどうか分からない。
しかし母は線を引き始めた。
そしてそれは
母にとって新しい世界への入り口に違いない。
たとえからだの自由がきかなくなっても
これから始まる新しい人生があるってことを、
心はいつだって
その瞬間から若返ることが出来るってことを、
体験して理解する
そんな希望の持てる入り口なのだ。
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母の腕はこわばっていて、手首の動きだけで線を引こうとする。
線が画面の一部に偏ってしまうのだ。
もうええわ。
そういってマーカーを置こうとしたので、
私は母の膝の上でスケッチブックを180度回転させた。
今まで山に見えていたものが谷になった。
面白いやろ。
そうやな。
そういって母は再び空白の紙面に線を引き始める。
少しずつ母の意識が
画面全体に向うようになってくる。
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初めて12色の色鉛筆を買ってもらった時のことを覚えている。
もちろん母からだったが、あの時どれだけ心が浮き立ったことだったか。
小学生だった私は、鮮やかな色鉛筆の向こうにある夢の世界を
はっきりと感じていたのだ。
長じて、色数の多い色鉛筆のセットを自分で買うようになってからも
いつまでもそのときめきは私の心の中にある。
60色の色鉛筆を母の前に並べたら
・・・うつくしいの・・・
そうポツリと . . . 本文を読む
病院のカンファレンスがあった
医師や作業療法士さん、ケアマネージャーやヘルパーさん、総勢10名近くの関係者が集まって、母の状況をそれどれの立場から報告してくださった。
これだけのことを保健の中でやってもらえるのはとてもありがたいことだった。
ただ母の状況は、総じて悲観的なもので、
正常な日常生活に戻すリハビリは期待できないという結論になった。
私は母とのお絵かき遊びを報告して、心のリハビリは . . . 本文を読む
ほんの少しだけ線を引くことに興味を持ったのだろうか。
神さんの絵というのに得心したのかどうか、
それは分からないけれど、
線を引く母の手から硬さがなくなったように見えた。
見られたら恥ずかしいというのが、
見て欲しいという気持ちになったら一人前のえかきや。
そうなったら一緒に展覧会しよか。
展覧会てかよ。
母と私は大きな声で笑った。
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何描いたらいいんやら分からん。
そういっては母何度も手を止めた。
何も描かんでいいよ。
線をひくだけや、誰でも出来るやろ。そうそうそれでいいんや。
そいでもこんなもん、恥ずかしいだけや。
これ見てみ、この絵は昨日までどこにもなかったやろ。
おばあちゃんが生きてるから産れた絵や。素晴らしい絵なんやよ。
花でも描こうとしたんやったら恥かしいかも知れんけど。
なんも考えんと線だけ引いたんやから、 . . . 本文を読む
たどたどしかった線が、
少しずつ大胆になってきた。
何の絵やら分からん。
そうやな、分からんな。
でもそれがええのや、ほらもうここに鳥が見えてきた。
そうゆうたら、そんなようにも見ゆるの。
これは山みたいやな。
母の手が少し滑らかになってきた。
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母を車椅子に乗せ、
院内の売店に買い物に行った。
売店お前の廊下に置かれた休息用のテーブルの上に
スケッチブックを広げて、
マーカーを手渡した。
母はしぶしぶ線を引き始めたが、
人が通るたびに、まるで凍りついたように動かなくなる。
どうしたん?
見られたら恥ずかしい。
小さな声で母が言った。
私は思わず笑った。
それは二十歳の頃の心だよ、おばあちゃん。
良かったね、若い心がやってきて。
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絵なんか描けないよ
描く気もない母の無気力な返事に
私は笑いかけた
描くんじゃなくて
線を引くだけだよ
無理やり握らせたマーカーを
スケッチブックの上でいつまでも動かそうとしない母に
私はゴミ箱から紙切れを拾い上げ
スケッチブックの上に広げた
そして母はそこに初めて線を引いたのだった。
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