兵士のハーモニカ/ロダーリ童話集/関口英子・訳/岩波少年文庫/2012年
何年も家から遠く離れ、千の危険をくぐりぬけ、百の死を目のあたりにした兵士が、ポケットに穴が開いていることにきずかず、せっかくの給料までなくして、がっかりして戦場から帰る途中にであったのは、一人の老人。
お金を恵んでくれといわれ、お互いにポケットをひっくり返して、ポケットからでてきたものを半分ずつ分けることになります。
老人のポケットからはハーモニカ、兵士のポケットからは銀貨が一枚転げ落ちます。わけがわからない兵士は、そのお金で居酒屋にいき、飲んで食べることに。食事の残りの金を老人にやることにすると老人はハーモニカをくれます。
兵士が途中でであったのは山賊。山賊は兵士が金をもっていないのをみてとって、やってきた乗合馬車にねらいをつけます。山賊が馬車に武器をつきつけ、わめいているときに兵士がハーモニカを吹くと、急に山賊の態度がかわり、馬車の乗客にやさしくなります。
兵士が生まれ故郷の村に着くと、こんどは二人の男がナイフをふりまわし大喧嘩。あっしにはかかわりないと木枯らし紋次郎ばり(古いなあ~)に兵士がハーモニカを吹くと二人の男は急にだきあって永遠の友情を誓い合います。
そう、このハーモニカは魔法のハーモニカで、たとえその一瞬まえまで兄弟を殺してやりたいほど、いかりくるっている人でも、音色を聞けば、たちまち友好的になれるハーモニカだったのです。
このハーモニカは<平和つむぎ機>だと発見した兵士は心の底から嬉しくなります。
兵士は、ほかの村の人たちも、ハーモニカでやさしい気持ちにしてあげるんだと旅にでます。
やがて都会についた兵士はテレビ局の番組に出演することになります。テレビでハーモニカの音色を奏でれば、対立や、暴力を町中いや世界中から消すことができそうだと兵士はいさんでテレビ局にのりこみますが・・・・。
どんな結末を予想するでしょうか。
人が死に、争いが絶えない今ですから・・・・。
兵士はハーモニカを排水溝に落とてしまい、吹くことができなかったのです。
しかしそれから長い年月、兵士はハーモニカを探し続けます。
自分の力でこの世の中をよりよくできると知っている者は、つかれたなどという権利はないのです。あきらめることもできません。そうあなたもわたしも・・・。
きな臭い世の中で、作者の強烈なメッセージが新鮮です。
by 穏やかな元日の朝に・・・。