フィオリモンド姫の首かざり/ド・モーガン・作 矢川澄子・訳/岩波少年文庫/1996年初版
それはそれは美しいフィオリモンド姫でしたが、魔女から魔術をおそわっていて、美しくなったのも魔女のおかげでした。
王さまはフィオリモンド姫を結婚させようと、近隣のあらゆる国に使いをおくります。
求婚者が次々にやってきますが、求婚者がフィオリモンド姫の首にかけられた鎖に手をふれたとたん、宝石の珠となってなって鎖にあらわれます。
フィオリモンド姫の召使のヨランダは、求婚者の姿がみえなくなると、フィオリモンド姫の鎖の球が一つ一つ増えていくのを目にします。
11番目にやってきたのは、フロレスタンと、その親友のジャーベス。
ヨランダは、フィオリモンド姫の秘密をジャーベスに話します。二人は寝ているフィオリモンドのところに、でかけていきますが、ヨランダもまた、姫の鎖に触ってしまい、12番目の珠になってしまいます。
ジャーベスは求婚者に変装して、フィオリモンド姫のところにのりこみます。
ジャーベスはどんぐりやさんざしの実や野ばらの実をあつめ、紐を通して首飾りみたいなものをもって王宮に入ります。
ジャーベスは姫に向かって、あなたよりきれいな人がいると、フィオリモンド姫の自尊心を傷つけます。
ジャーベスがもっていた粗末な首飾りが、その人を美しく見せる魔力をもっていると勘違いしたフィオリモンド姫が、自分の首飾りと取り替えようとすると、姫は13番目の珠になってしまいます。
求婚者の姿がみえなくなると、黒いマントをまとい、喪に服すと言いながら、一人になると、鏡に向かって涙が出るほど笑うフィオリモンド姫の存在感が抜群です。
男をみじからの美しさを際立たせるために利用したフィオリモンド姫にとっては不幸な?結末ですが、永遠の美しさ、若さはありませんから、もしかしたら珠になることは、フィオリモンド姫が望んだ結果だったのかもしれません。
また、13は不吉な数字と考えられていますから、フィオリモンド姫が13番目の珠になるというのも意味がありそうです。
話すと一時間は超えそうな話ですが、聞く機会がありました。時間は35分ほど。時間の長さは感じさせない語り。あっという間に話の世界に引き込まれました。
あたたかかったり、笑いがあったり、ぞっとしたりといろいろな語りがありますが、凄みを感じさせてくれた時間でした(2017.8)