白い街 あったかい雪/文:鎌田 實 絵:小林 豊/ポプラ社/2013年初版
お母さんが息子アンドレイと散歩にいったとき、くろっぽい雨に濡れてしまいます。
この黒い雨はチェルノブイリ原発の事故が原因でした。
10年後、アンドレイはつらい治療をうけていました。何も食べられず、髪の毛は全部ぬけてしまいました。
食欲がなかったアンドレイでしたが、日本からきたヤヨイさんから、「なんだったら たべられるかな?」と聞かれ、「パイナップル」とつぶやきます。
寒いこの国にはパイナップルはありません。
しかし、ヤヨイさんは、マイナス20度の雪の中、病院をでていきます。
何日も何日も「パイナップルありませんか」とないはずの、パイナップルをもとめて、雪の中を歩き続けるヤヨイさん。
やがて町中のうわさになります。
そして病院にパイナップルの缶詰が届けられます。
何も食べられなかったアンドレイでしたが、少しづつご飯も食べられるようになって、びっくりするくらい元気になったアンドレイでしたが・・・・。
14歳の時、白血病が再発して亡くなります。
なぜ、なにも わるいことをしていない わたしたちが・・・。
なぜ、なぜ、なぜ・・・。
あのひ、わたしが さんぽに つれていかなければ・・・。
くろい あめに ぬらさなければ・・・。
そとで あそばせたりしなければ・・・。
お母さんの思いが切ない。
そしてこの地で、医療活動に従事した鎌田 實さんとパイナップルを懸命にさがしもとめた看護師ヤヨイさんに温かいものを感じました。
鎌田さんのあとがきに「あたたかな気持ちは他の人の気持ちをあたたかくし、次々にあたたかな連鎖を起こすことがよくわかりました」とあります。
いったんおきてしまえば、想像を絶する被害をうむ原発。今また原発を再稼働していますが、歴史の教訓はどこにいったのでしょうか。