今昔ものがたり/杉浦明平/岩波少年文庫/1995年
何回か聞いたことのある「旅人馬」は、宿に泊まったお金持ちの若者が馬に変えられて、この若者を貧乏な若者が救うというお話ですが、このもとは「今昔物語」にあるというので、岩波文庫の「今昔ものがたり」を読んでみた。
今から900年前に蒐集、編集されたという今昔物語。
「今は昔」ではじまる千を超える短い話のうち、文庫本に収録されているのは40話だけだけなので、なんともいえないが、慣れ親しんだ昔話につながるものは見出すことができませんでした。
今昔物語は当時の社会状況を反映していて、なじみがない衛門府、近衛府といった役所のなまえがでてきたり、武士が力を持ち始めた状況もうかがえます。また泥棒が出てくる話も多く、当時の状況を知ることができます。
当時の役所の給料は米で、このコメが不作で、一向に給料が払われないので、実力行動にでた職員。
しかし、ないものは払えない。
そこで、実力行動を阻止しようと考えたのが、酒をのませて、下痢をするように仕向けるというのが「すわりこみ撃退法」。こんな話は語り継がれてもおかしくなさそう。
「おくびょうものの強がり」では、自分の影におびえる夫婦がでてきて、こんなのも面白そうな話。
強盗が死んだふりをして、寺の釣り鐘を盗む「釣り鐘どろぼう」という話は時代を問わずありそうである。