Mars&Jupiter

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ブライト・シェンの「中国の夢」を聴きながら、横浜から和田町まで歩く

2007-10-22 09:39:50 | 古典~現代音楽その他の地域編
昨日は、横浜駅から和田町駅まで歩きました。
途中聴いたのは、1955年生まれのブライト・シェン(盛宗亮)の曲。
12月6日中国の上海に生まれた彼は、母からピアノを習い、
文化大革命の時期に高校を卒業し、上海音楽学院に入学し、
作曲科を卒業し、1982年にはニューヨークへ渡り、
コロンビア大学などで学び、レナード・バーンスタインや
周文中(チュー・ウェン=チュン)などに学んだようだ。

「中国の夢」は1992年から1995年までの間に作曲された。
作曲者自身が書いたCDの英文の解説によると、
第1楽章は、クリストフ・エッシェンバッハと
ヒューストン交響楽団に献呈され、
第2楽章は、クルト・マズアと
ニューヨーク・フィルハーモニックに献呈され、
第3楽章と終楽章は、ジェラード・シュウォーツと、
シアトル交響楽団に献呈されている。
全曲の初演は1995年にジェラード・シュウォーツが指揮する
シアトル交響楽団によって行われたようだ。
1982年以降中国を離れた作曲者が、ホームシックにかかり、
夢の中で現われた音楽をもとに作曲したようである。

第1楽章の「前奏曲」は木管楽器が叙情的な旋律を奏でる。
バルトークの管弦楽のための協奏曲の第1楽章を想起させる。
この旋律は中国西北部の民謡を用いているみたいだ。
第2楽章「ファンファーレ」は打楽器の活躍が目立ち、
荒々しく強烈なリズムを刻み、金管楽器が鳴り響く。
弦楽器を中心とした静かな中間部を経て、
冒頭の部分が再現され、終わる。
第3楽章「川は流れる」は川のゆったりとした流れや、
激しい部分の流れなどを、中国南西部の雲南省の
よく知られた民謡を用いながら、
弦楽器のみでソロを交えながら演奏している。
第4楽章「長江の3つの峡谷」は、
それまでの楽章の主題などを用いながら、
長江の風景を描写し、最後は華々しく終わる。


「南京!南京!」は、2000年に作曲を終えた作品。
1937年の日本軍による南京の虐殺をテーマにした曲で、
最初重々しく始まる曲は、途中激しさを増し、
その歴史的事件を描写するが、途中で登場する中国琵琶は、
その事件の犠牲者ではないが、1人の中国人を描写している。
その彼はその事件の目撃者であり、生存者の一人である。
日本軍が起こした虐殺を目の当たりに見た彼は、
徐々にその事態の大きさとその行為への憤りを感じていく。
そんな一人の人物の感情の変化を描写しているような感じだ。
歴史はその事実を正確に伝えていくことは難しいかもしれない。
しかし、その事件から受けた人間の感情は消すことはできない。
それは子孫にまで受け継がれ、長く続いていくものである。
2000年は南京における虐殺の教科書の記述をめぐり、
論争が行われた時期にあたるが、
その歴史の記述を自虐史観ととらえ、
それがなかったかのようにする日本の一部の動きに対して
憤りを感じてこの音楽の記念碑として
この作品を未来の中国の人々に向けて作曲したのかもしれない。
歴史を史実の追求だけに求めていくと、
その犠牲となった人々の精神的な心の痛みが
見えなくなってしまうところがある。
だから大切なのは歴史を見るとき必要なのは、
真摯に過去と向き合う姿勢なのかもしれない。
コメント
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