
(2022年9月訪問)
静岡県の温泉は多くが伊豆半島に偏在していますが、県央部にも温泉ファンが推す名湯がいくつかあります。その中から今回は静岡市清水区にある「清水西里温泉 やませみの湯」を取り上げます。清水といってもその地名から連想するような海岸部ではなく、次郎長の賭場がありそうな市街地でもなく、興津川をひたすら遡った山奥の里にあり、平屋の建物が周囲の緑に囲われている、自然豊かな環境に抱かれた日帰り温泉入浴施設です。

「やませみの湯」という施設名が表すように、付近を流れる渓流ではヤマセミが棲息しているのかもしれませんね。現地に到着してから軽く周辺を散策してみましたが、そう簡単に飛んでいるヤマセミと出会えるわけもなく、施設の前に設置された石像のヤマセミにご挨拶するのが精いっぱいでした

敷地の外れにあるこの設備は源泉関係の設備でしょうね。

私はちょうど開館時間と同時に訪問し、この日最初の客となりました。一番風呂に入れるのですから嬉しいじゃないですか。

受付で入浴料金を支払い、その先に掛かっている暖簾を潜ります。館内では地場産品などを売っているほか、休憩用のお座敷や食事処などがあり、お風呂上がりもゆっくり過ごせます。休憩はなどは後回しにして、まずは一番風呂に入りましょう。
浴室は「岩風呂」と「檜風呂」の2室に分かれており、男女が週替わりで暖簾を入れ替えているそうです。なお岩と檜は露天風呂の設えの違いによります。訪問日は「檜風呂」に男湯の暖簾が下げられていましたので、今回の記事は「檜風呂」について述べさせていただきます。

(内湯と露天風呂の画像は公式サイトから借用しました)
内湯は広くて開放的な造り。洗い場にはシャワーが6個あり、1ヶ所当たりのスペースが広く確保されている上に、シャワーヘッドが大きいため、使い勝手が良好でした。
内湯の浴槽は10人近く同時に入れそうな大きさがあり、その一部では泡風呂装置が稼働しています。浴槽には適温のお湯が張られていますが、かけ流しではなく加水加温や循環消毒が行われている無色透明無味無臭のお湯です。
なお公式サイトで紹介されてる上画像は、今回は入らなかった「岩風呂」側の内湯かと推測されますが、左右シンメトリになっているだけで、基本的な造りは同じかと思われます。とはいえ、タイルの色遣いが異なる他、浴槽の縁に用いられている材質が異なっています(岩風呂は石材であるのに対し、檜風呂は木材を使用)。

「檜風呂」側の露天には3つの浴槽があり、いずれも浴槽自体はタイル(石板?)張りですが、縁には檜材が用いられています。最も奥の大きな浴槽には屋根が掛けられ、その手前の浴槽は2~3人サイズの正方形に近い形状。いずれの浴槽も内湯と同じ加水加温循環消毒の湯で、訪問時は槽内に竹炭が入れられていました。また正方形に近い浴槽のお湯は40℃という入りやすい湯加減でした。

今回私がこの「やませみの湯」を訪ねた最大の目的がこの小さな浴槽です。露天風呂ゾーンの最も手前にあるこの浴槽は非加温の源泉かけ流しとなっており、内湯や他の露天浴槽とは明らかにお湯の質が異なっているのです。まずお湯の見た目ですが、他の浴槽ではお湯が無色透明無味無臭であるのに対し、かけ流しの浴槽ではお湯が黄色を帯びています。また他の浴槽では無味無臭であるのに対し、この浴槽では薄い塩味が感じられました。各浴槽で同じ源泉を使っているはずなのに、湯遣いによってこんなに異なってしまうのですね。
源泉の持ち味を活かすためか加温も抑えられており、他の浴槽では適温かやや熱めでしたが、かけ流し浴槽は35~36℃という微睡みを誘うようなぬる湯設定になっています。私が訪問した日はまだ残暑が厳しかったために適温の湯加減でも少々熱く、このかけ流し浴槽の湯加減がとても爽快に感じられました。いわゆる不感温度帯の湯加減ですから、湯船に浸かるとどうしても眠くなってしまいます。これは私のみならず多くのお客さんが同様でしょう。でも小さな浴槽で2~3人しか入れないため、ここで寝てしまうと他のお客さんが入れなくなってしまいます。このためかけ流し浴槽では15分以内で出るようローカルルールが定められていました。その時間制限を恨めしく思ってしまうほど、このかけ流し浴槽は気持ち良く湯あみできました。
その一方で気になることもいくつか。湯口からは加温されたお湯がチョロチョロと落とされ、その反対側の縁からお湯が溢れ出ているのですが、投入量とオーバーフロー量が見合っていないような気がするのです。私が見る限りはオーバーフロー量の方が多かったようです。また湯口のお湯からははっきりとしたカルキ臭が感じられる他、分析表によれば溶存物質11040mgという高張性の食塩泉であるにもかかわらず、お湯から得られる塩味は比較的薄く、またデータの上では苦汁のような味があっても不思議ではないのですが、そのような味も全く感じられませんでした。
源泉の湧出量が毎分36リットルしかないのに、これを男女両浴場の内湯や露天風呂で使用し、その上かけ流し浴槽まで用意しているわけですから、どうしても源泉が足らなくなり、かけ流しの浴槽でも相当量の白湯が源泉と同時に投入されているのではないかと推測されます。こればかりは致し方ありません。もし私の邪推が的外れでしたら申し訳ございません。無礼をお許しください。
でも周辺は緑豊かで大変良い環境ですし、広くて明るくて複数の浴槽に入れますので、非日常の空気に満たされながらのんびり湯浴みしたい方には最適の施設ではないかと思います。
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 30.1℃ pH7.2 36L/min(動力揚湯) 溶存物質11040mg/kg 成分総計11200mg/kg
Na+:2331mg(51.80mval%), Ca++:1857mg(47.34mval%),
Cl-:6712mg(99.48mval%), Br-:21.3mg,
H2SiO3:9.9mg, HBO2:21.7mg, CO2:163.6mg,
(平成27年6月25日)
静岡県静岡市清水区西里1449
054-343-1126
ホームページ
平日9:30〜18:00(最終受付17:00)、土日祝9:30〜19:30(最終受付18:30)
毎週月曜及び年末年始定休
700円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★
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