温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

温陽温泉 神井館温泉湯

2020年02月16日 | 韓国

年明けから連続して韓国の温泉を取り上げてまいりましたが、今回でひとまず打ち止め。
最後にご紹介するのは、ソウルから容易に日帰り可能な距離にある忠清南道牙山市の温陽温泉(オニャンオンチョン。온양온천)です。韓国で最も古い温泉らしく、その歴史は百済の時代まで遡れるんだそうですが、長らく王朝の保養や湯治に使われ続け、歓楽や庶民の入浴といった用途へ開放されるようになったのは日本統治時代なんだとか。
ソウルからこの温陽温泉へ向かうには、いくつかの方法がありますが、私はKTXで天安牙山駅まで乗り、その駅構内で接続しているソウルの首都圏電鉄1号線に乗り換えて、温陽温泉駅で下車しました。



電車の運転本数は決して多くないのですが、駅舎はなかなか立派。
駅前広場も広く、そのスペースを活かして、私の訪問日には何やらイベントが開催されていました。


駅の周辺には庶民的な街並みが広がっているのですが、温泉を駅名に冠する場所だけあって、駅の徒歩圏には温泉の公衆浴場が点在しています。たとえば入口にアーチが立っている上画像の施設とか・・・


線路に近い場所に位置するこの施設・・・


商店街の中で存在感を放つこの施設や・・・


路地の奥にポツンと佇むこんな施設まで、とにかく駅前周辺をあてもなくフラっと散歩しただけでも、たくさんの温泉公衆浴場を見つけることができました。絶対数は大分県別府に歯が立ちませんが、一定面積当たりの密度でしたら、意外と良い勝負になるかもしれません。できれば、その全てをハシゴしてみたかったのですが、旅程の都合で1ヶ所に絞らざるを得ませんでした。


関西の商店街を彷彿とさせる庶民的なアーケード商店街をどんどん歩いてゆくと・・・


アーケードを抜けた先の広い通りに面して建っているのが、今回私が目指した温泉公衆浴場「神井館(シンジョングァン 신정관)温泉湯」です。男女別の入り口、庇の温泉マークなど、昭和の日本でよく見られた銭湯と同じような懐かしい佇まいに、思わず心が躍ってしまいました。調べたところによると、この浴場は当地で営業する最古の浴場らしく、70年近く前からお客さんに愛され続けているんだとか。なるほど、施設名の下にハングルで「第1号元湯」と書かれていますね。


男女別の入口を入ってすぐのところにある小さなカウンターは、日本の銭湯と同じ番台です。中にいるおばあちゃんに湯銭を支払うと、「入浴券」と漢字で印刷された赤い小さな券が手渡されますので、それを手にして脱衣室へと向かいます。


番台の裏には衝立に囲まれた古い革張りのソファーが置かれていました。何十年にもわたって湯上がり客がここに座り、汗を拭いながら休憩していたのでしょう。茶色い皮革の放つ鈍い光沢が、浴場の歴史を静かに物語っているようでした。


入室するや否や一気に40~50年前へタイムスリップしたかのような錯覚に陥る脱衣室の雰囲気もたまりません。中には三助のおじいさんがいるので、先程手にした入浴券をその方に手渡しました。なお一般的な韓国のサウナと違い、タオルは有料のようです(おそらく200ウォン)。


浴室も一般的な韓国の銭湯に比べると小さいのですが、天井に湯気抜きを設けたその場内は飾り気がなく実用本位。相当の年季が感じられます。九州あたりの古い温泉銭湯を彷彿とさせるその味わい深い雰囲気に私は心を奪われ、しばしその場で立ち尽くしてしまいました。床は全面タイル張りですが、至る所に補修の跡があり、何度も何度も修繕を繰り返しながら今日まで使われ続けてきたことがわかります。

洗い場には7か所のカランが並び、その反対側には立って使うシャワーが5ヶ所取り付けられています。カランやシャワーから出てくるお湯はおそらく温泉でしょう。古い銭湯ですからカランは混合水栓ではなく、熱いお湯と水が別々ですので、カランを使う際には水栓の下に大きな盥を置き、お湯と水を適温に混ぜてから使います。こんなところも九州の古い温泉銭湯みたいです。


温泉浴槽はひとつだけですが、アメーバのような歪な形状をしており、10人は余裕で入れる大きさです。お湯は浴槽内で投入されており、たしかオーバーフローがあったような気がしますが(記憶が曖昧ですいません)、浴槽内に循環用の吸引口は見当たらず、そもそも料金が安いので循環装置を導入しようにもできないでしょう。お湯は無色透明無味無臭でアッサリしたタイプですが、湯船に浸かるとしっかりツルスベ浴感が得られました。泉質はわかりませんが、おそらく弱アルカリ性の単純泉かそれに近いタイプではないかと思われます。湯加減もちょうど良く、レトロな雰囲気の中で実に心地よい湯浴みを楽しむことができました。

泉質不明


ソウル1号線温陽温泉駅より徒歩10分
忠清南道牙山市温陽1洞

3500ウォン
石鹸あり、ロッカーあり、ドライヤー有料(100ウォン)

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする